化学の2次試験では、理由を記述させる問題が出題されますが、特にアルミニウムに関する問題は突出しています。
その中でも特に頻出の問題をまとめてみました。
□問題1
アルミニウムはイオン化傾向が大きいのにもかかわらず,さびが進行しない理由は?
□解答例
アルミニウムは,空気中に放置すると表面に緻密な酸化被膜が形成され,それ以上は酸化されない状態(不動態)になるため。
※補足解説
この性質を利用して,アルミニウムの表面に人工的に緻密な酸化被膜をつけた製品をアルマイトといい,アルミ缶など様々な製品にアルマイト処理がされています。
実際に出題された問題は下記になります。
■イオン化傾向の大きな金属ほどさびやすいが,アルミニウムはイオン化傾向が大きいにもかかわらず,さびが進行しにくいのはなぜか説明せよ。
(2011 信州大学 工)
■アルミニウム製品がさびにくい性質を持つのはなぜか。最も適当な理由を下の選択肢の中から1つ選び,その番号を解答用紙にマークせよ。
① アルミニウムの表面は,トタンのように亜鉛でめっきされているから。
② アルミニウムの表面は,ブリキのようにスズでめっきされているから。
③ アルミニウムの表面は,空気中の窒素分子でおおわれ,酸素が結合できないから。
④ アルミニウムの表面は,ち密な酸化皮膜でおおわれ,不動態になっているから。
⑤ アルミニウムの表面には,常に正の電圧がかけられているから。
(2010 立命館大学 情報理工 生命科 薬 理工 スポーツ健康科 )
■金属は展性・延性を示し,光をよく反射し,電気や熱をよく伝導する。中でもアルミニウムは,展性に富むためアルミホイルとして用いられたり,電気伝導性が単体では銀,銅,金に次いで高いため電気配線に用いられたり,熱伝導性が高いため,やかん等の調理器具に用いられたりしている。また,アルミニウムが地殻中で最も多く存在する金属元素であること,密度が小さいこと,b空気中や水中でも内部までさびにくいことなどもアルミニウムが様々な用途に利用される重要な理由である。
問 アルミホイルやアルミニウム製のやかんなどは下線部bの性質を持つ。その理由を40字以内で記せ。
(2012 群馬大学 工)
□問題2
アルミニウムの合金であるジュラルミンが航空機材料などに用いられる理由は?
□解答例
軽くて強度が強く比較的加工しやすいため。
実際に出題された問題は下記になります。
■単体のアルミニウムは,鉱石のボーキサイトから純粋な酸化アルミニウムをつくり,これを氷晶石と混ぜて融解塩電解して製造される。単体は,銀白色で金属にしては密度が低く,軟らかく,熱や電気をよく伝える。
一方,③アルミニウムの合金は,航空機材料などに用いられる。また,アルミニウムの粉末と鉄の酸化物を混ぜて着火すると,激しく反応して単体の鉄が得られる。この反応をテルミット応といい,溶接などに利用される。
問.下線③について,アルミニウムに銅,マグネシウム,マンガンなどを溶かし込んだ合金の名称を答えよ。また,この合金が航空機材料などに用いられる理由を答えよ。
(2011 岩手大学 工 農)
■航空機用の材料として用いられるアルミニウムの合金の名称を示せ。また,この合金が航空機用の材料として用いられる理由を述べよ。
(2011 信州大学 工)
次は,アルミニウムの単体の製造に関する問題です。
□問題3
アルミニウムイオンを含む水溶液の電気分解では,アルミニウムの単体を得ることができない理由は?
□解答例
アルミニウイオンよりも水分子の方が還元されやすく,電気分解により水素が発生するから。
※補足解説
融解塩電解とは,融解塩の電気分解のことで,イオン結合性の化合物を加熱し,融解液(液体)の状態にして電気分解することです。
イオン化傾向がアルミニウム以上の金属塩の水溶液を電気分解すると,
陰極には,必ず水素が発生してしまい,金属の単体は析出しません。
そこで,融解液を電気分解すれば,水や水素イオンや水酸化物イオンが存在しないため,金属イオンが電子を受け取り,イオン化傾向が大きい金属でも陰極において単体を得ることができます。
また,イオン化傾向が亜鉛以下の金属はコークスCによって還元できますが,アルミニウム以上の金属は還元できません。
実際に出題された問題は下記になります。
■イ)アルミニウムは塩酸に溶解し,3価の陽イオンを生じる。また,水酸化ナトリウムの水溶液とも,(1)式のように反応し,溶解する。
問 下線部イ)で得られる水溶液を電解することでは,金属アルミニウムを得ることはできない。その理由を40字程度で説明せよ。
(2011 甲南大学 知能情報 理工 )
■単体のアルミニウムは,ボーキサイトから得られる(a)酸化アルミニウムを融解塩電解して製造する。アルミニウムは,酸素中で高温に熱すると激しく燃焼し,酸化アルミニウムになるが,空気中,常温では,表面のみが酸化され,内部は酸化されない。
問 下線部(a)のように,単体のアルミニウムは,酸化アルミニウムを約1000℃で融解した氷晶石に溶かし,陽極および陰極に炭素を用いて電気分解することにより得られる。
アルミニウムイオンを含む水溶液の電気分解では,アルミニウムの単体を得ることができない。その理由を説明せよ。
(2011 島根大学 総合理工 )
□問題4
融解塩(溶解塩)電解する際に氷晶石を加える理由は?
□解答例1
酸化アルミニウムをより低い温度で融解させるため。
□解答例2
酸化アルミニウムの融点を下げて電気分解するため。
□解答例3
酸化アルミニウムの融点は約2000℃と極めて融点が高いので,融点を下げて電気分解するため。
実際に出題された問題は下記になります。
■ケイ素化合物などのボーキサイト鉱石に含まれる不純物を取り除くため。単体のAlは,ボーキサイト鉱石(主成分の組成Al2O3・nH2O)から以下の4つの操作を経て得られる。
操作① 細かく粉砕したボーキサイト鉱石を,濃い水酸化ナトリウム水溶液とともに熱し,ろ過する。
操作② ろ液に水を加え,沈殿を生じさせる。
操作③ 沈殿を高温で熱する。
操作④ 氷晶石とともに1000℃程度に加熱して融解塩電解する。
問 操作④で氷晶石とともに融解塩電解する理由を簡潔に説明せよ。
(2013 高知大学 教育 理 医 一部改)
■地球の地表付近に存在する元素の存在量を質量で比較すると,アルミニウムは酸素,ケイ素に次いで3番目に多い。しかし,その豊富な存在量にもかかわらず,現在のようなアルミニウムの単体の製法が開発されたのはわずか120年ほど前である。この製法では,原料鉱石であるボーキサイトから精製された酸化アルミニウムに(a)氷晶石を加えて約1000℃に加熱し,炭素を両極に用いて融解塩電解を行うことによって単体に還元している。
問 下線部(a)の氷晶石を加える理由は以下のどれか。1つ選び,記号を解答欄に記入しなさい。
(ア) 炭素電極をより高温にするため
(イ) 酸化アルミニウムをより低い温度で融解させるため
(ウ) 酸化アルミニウム中のアルミニウムと酸素間の結合を強くするため
(2010 中央大学 理工 一部改)
■アルミニウムは工業的に次の手順で精製される。まず,原料であるボーキサイト(Al2O3・nH2O)を焼いて水分を蒸発させ粉砕したのち,濃い水酸化ナトリウム水溶液を加えて不純物を除去する。不純物を除去したものに大量の水を加え,沈殿を回収する。この沈殿物を強熱すると純粋な物質Cが得られるので,これにD氷晶石(Na3AlF6)を加えて1000℃に加熱し,炭素電極を用いた融解塩電解を行うことで高純度のアルミニウムが得られる。
問 下線部Dで氷晶石を加える理由は何か。最も適切なものを1つ選べ。
1.加熱する際に突沸が起こるのを防ぐ。
2.物質Cの融点を下げる。
3.融解塩電解における電気の伝導率を上げる。
4.電解炉に使われる耐火煉瓦を保護する。
5.フッ素によりアルミニウムの析出の効率を上げる。
6.物質Cの還元反応の触媒となる。
(2013 星薬科大学 薬 )
■アルミニウムは,ボーキサイトを原料にして得られる。ボーキサイトを濃い水酸化ナトリウム水溶液で処理して得られる酸化アルミニウム(アルミナ)に氷晶石を加えて,約1000℃で融解し,両極に炭素を用いて融解塩電解することにより,( イ )極にアルミニウムが得られる。
問 融解塩電解する際に氷晶石を加えるのはなぜか。その理由を20字以内でしるせ。
(2011 立教大学 2/9,個別学部日程 理 )
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アルミニウムに関する理由を記述する問題
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