今日は、身の回りの化学(用途・材料) 2族元素編についてです。
センター試験は特に時間が勝負なので、あるキーワードに対して
いくつかの関連用語が条件反射的にイメージできるようになることが重要です。
そこで、用途や材料に関するテーマで
入試問題をデータベースソフトで徹底的に調べ上げ、「用途・材料のキーワード」に対する条件反射的に思い浮かべてほしい「物質」をまとめました。
2族に属する元素には、ベリリウムBe、マグネシウムMg、カルシウムCa、ストロンチウムSr、バリウムBa、ラジウムRaがあります。
2族元素のうち,Be、MgとCa、Sr、Ba、Raは,多くの点で性質が異なるため、Ca、Sr、Ba、Raをアルカリ土類金属元素とよびBe、Mgと区別しています。
航空機、自動車、スポーツ用具、ノートパソコンなどの軽量な合金の材料……マグネシウムMg
にがりの主成分……塩化マグネシウムMgCl2
※にがりとは、海水からとれる塩化マグネシウムを主成分とする食品添加物。豆乳を豆腐に変える凝固剤として使用されます。
紅色の花火……ストロンチウムSr
凍結防止剤・融雪剤、乾燥剤……塩化カルシウムCaCl2
※凍結防止剤は路面の凍結を防止するために散布する剤のことで、他に塩化マグネシウム、塩化ナトリウムなどがあります。
凍結を防止する主な理由は、塩化カルシウムが水に溶けることで凝固点効果が起こり、融点が低下するためです。
セッコウ、建築材、医療用ギプス……硫酸カルシウムニ水和物CaSO4・2H2O、カルシウムの硫酸塩
白色顔料、X線の造影剤……硫酸バリウムBaSO4
※硫酸バリウムがX線撮影の造影剤に使われるのは、安定で胃液によっても溶解せず、X線をよく遮蔽することから。
「バリウムを飲む」と言われますが、バリウムBaは冷水と反応して、水素を発生するので飲むと危険です。実際に、病院で飲むのはバリウムではなくて硫酸バリウムです!
殺菌剤、漂白剤……さらし粉CaCl(ClO)・H2O
※水酸化カルシウムが塩素を吸収するとさらし粉が生成します。
石灰石・大理石・卵の殻・貝殻・真珠・珊瑚の主成分、チョーク・セメント・ガラスの原料、、グランド用ラインパウダー……炭酸カルシウムCaCO3
※昔はグランド用ラインパウダーには、水酸化カルシウム(消石灰)が使われていましたが、水に溶けると強い塩基性を示し、目に入ると危険だったり触れると手がかぶれるなどの可能性があるため、現在ではあまり使われなくなりました。
酒や駅弁を温めるための発熱剤、乾燥剤……酸化カルシウムCaO
※発熱剤となるのは、水と反応して水酸化カルシウムとなる際に多量の熱を発するため。
漆喰などの建築材料、酸性土壌の改良剤……水酸化カルシウムCa(OH)2
※水酸化カルシウムは消石灰ともよばれ、飽和水溶液は石灰水とよばれます。
漆喰とは、水酸化カルシウムを主成分とする建材。漆喰は水酸化カルシウムが空気中の二酸化炭素を吸収して炭酸カルシウムとなって固まる性質を利用しています。
以下は、用途・材料に関して出題された問題です。
■2009 同志社大学 生命医科 理工 スポーツ健康科 心理 文化情報
2族元素は最外殻に2個の価電子をもつ典型元素である。ベリリウム以外の元素の単体は、水と反応して水酸化物を生じる。
カルシウムの水酸化物は消石灰と呼ばれ、水に少し溶解し、水溶液は強い塩基性を示す。この水酸化カルシウムは土壌中和剤や、さらし粉の製造、建築材料(しっくい)の原料など幅広い用途がある。水酸化カルシウムの飽和水溶液は石灰水と呼ばれ、希硫酸と反応させると、化合物Aが生じる。また、石灰水に二酸化炭素を吹き込むと、化合物Bの白色沈殿が生じる。
さらに二酸化炭素を吹き込むと、化合物Cとなる。この化合物Cは水に溶解する。石灰岩の分布する地帯では、石灰岩の主成分である化合物Bが二酸化炭素を含む雨水と反応し、化合物Cとなって地中に浸透し、さらに地中で二酸化炭素を放出して再び化合物Bとなる。これらの反応が長年にわたって繰り返され、鍾乳洞などの特有の地形が形成される。
バリウムの水酸化物は、水に少し溶解して強い塩基性を示す。この水溶液を希硫酸と反応させると、化合物Dが生じる。また水酸化バリウムを強熱すると酸化バリウムになる。酸化バリウムは塩化ナトリウムと同じ結晶構造をもち、陽イオンと陰イオン間の距離も塩化ナトリウムのそれとほぼ同一である。
問題
下の(a)~(f)の文は、化合物AおよびDについて述べたものである。AとD両方に当てはまる場合は○を、片方に当てはまる場合は該当する記号(AまたはD)を、両方とも当てはまらない場合は×を、それぞれの解答欄に記せ。
(a) 水への溶解度は、硫酸マグネシウムに比べて小さい。
(b) 白色の化合物である。
(c) 医療用に調製されたものは、X線診断の造影剤として用いられる。
(d) にがりの主成分として、とうふの製造に用いられる。
(e) 水和物はセッコウと呼ばれ、医療用ギプスなどに使われる。
(f) 吸湿剤や融雪剤として用いられる。
答え…
(a) ○ (b) ○ (c) D (d) × (e) A (f) ×
■ 2012 熊本大学 理 医 薬 工
周期表の1族に属するリチウム、ナトリウム、カリウムなどの元素を ア 、2族に属するカルシウム、ストロンチウム、バリウムなどの元素を イ という。 ア のイオン半径の大きさは、同じ周期の イ よりも ウ 。また、 ア と イ は天然には単体として存在しないため、 エ によってつくられる。 ア は空気中の酸素や水と反応しやすいため、その保存は オ の中で行われる。
イ であるカルシウムの確認には、炎色反応が用いられ、 カ 色を示す。カルシウムの単体は常温で水と反応し、b)得られた水溶液は二酸化炭素と反応して白い沈殿物 キ を生じる。 キ は石灰石や大理石の主成分であり、c)二酸化炭素を含む水に溶ける。
d) キ を900℃以上に加熱することによって生じる酸化カルシウムは、乾燥剤などに用いられている。天然に存在するセッコウは硫酸カルシウム二水和物が主成分であり、e)140℃に加熱すると焼きセッコウになる。
(問1) 文中の ア ~ カ に適切な語句を、 キ に適切な化学式をそれぞれ記せ。
答え……
(問1)
ア アルカリ金属
イ アルカリ土類金属
ウ 大きい
エ 融解塩電解
オ 石油
カ 橙
キ CaCO3
■ 2013 金沢大学 人間社会 理工 医薬保健
元素Cの水酸化物は水によく溶け、その水溶液に希硫酸を加えると白色の化合物Eが沈殿する。化合物Eは水や酸に不溶で、毒性が低く、 ア の吸収能が高いため、消化管の ア 撮影の造影剤に用いられる。
元素Dは原子番号38の元素である。元素Dは生体内に吸収されると骨に高く集積し、長時間滞留する。元素Dには質量数90の放射性同位体が存在し、原子力事故の際には、放出・拡散が問題となる。一方、元素Dは イ 色の炎色反応を示すが、この炎色反応は花火などに利用されている。
問1 ア ~ エ に入る適切な語句を記入しなさい。
問2 元素C、D、Eの名称を記入しなさい。
答え……
問1
ア X線
イ 紅
問2
C バリウム
D ストロンチウム
E BaSO4
■2012 静岡大学 理 工 農
2族元素はBe、MgとCa、Sr、Ba、Raの二つのグループに分類され、後者は (ア) 金属とよばれる。
2族元素のうち、 (イ) は冷水とは反応しないが(a)熱水と反応する。また、二酸化炭素中でも燃え、二酸化炭素を還元する。 (イ) は軽い金属なので、軽量な合金の材料として利用される。
カルシウムは (イ) よりもイオン化傾向が大きく、常温でも水と反応し化合物Aを生成する。この化合物Aの水溶液に(c)二酸化炭素を吹き込むと、化合物Bの (ウ) 色沈殿を生ずる。さらに、(d)過剰の二酸化炭素を吹き込むと化合物Bの沈殿は溶解する。ストロンチウムは白銀色の金属であり、炎色反応では (オ) 色を発するため、花火などに利用される。
バリウムは空気中では酸化しやすく、水やアルコールとも反応する。水酸化物は、酸化バリウムを水に溶解させることによって生成する。(f)この水酸化バリウム水溶液に希硫酸を加えると、白い沈殿物が生成する。
問1 (ア) ~ (オ) に入る適切な語句を記せ。
問2 下線部(f)の反応により生成した沈殿物が、X線撮影の造影剤に使われるのはなぜか。その理由を35字以内で記せ。
答え……
問1
(ア) アルカリ土類
(イ) マグネシウム [Mg]
(ウ) 白
(エ) 黄リン
(オ) 紅
問2 硫酸バリウムは水や酸に溶けないとともにX線をよく遮蔽するため。
■2010 和歌山大学 教育
石灰石を焼くと (a) が得られる。 (a) は脱水剤や乾燥剤などに用いられる。 (a) にコークスを混ぜて強熱すると、 (b) が得られる。
問 空欄(a)~(b)の化合物名、化学式を書きなさい。
答え……
(a) 酸化カルシウム、CaO
(b) 炭化カルシウム、CaC2
■ 2012 日本大学 生産工
次の 1 、 2 にあてはまる最も適当な答をそれぞれの解答群から一つずつ選びしなさい。
1 は潮解性があるので乾燥剤に利用される。また、 2 の水和物は建築材や医療用ギプスなどに使用されている。
1 と 2 の解答群
① 炭酸水素カルシウム
② 水酸化カルシウム
③ 塩化カルシウム
④ 炭酸カルシウム
⑤ 炭化カルシウム
⑥ 硫酸カルシウム
答え……
1…③ 塩化カルシウム
2…⑥ 硫酸カルシウム
■ 2012 新潟大学 教育 理 医 歯 工 農
カルシウムは2族元素に属している。2族元素にはカルシウムのほかに5種類の元素があるが、 [1] と [2] を除く元素を特に [3] と呼んでいる。(a)2族元素はいずれも2価の陽イオンになりやすい。しかし、(b) [1] と [2] の2つの元素は、単体の反応性において [3] とかなり異なっている。カルシウム金属は1族の金属元素の単体と同様な銀白の光沢を示し、電気や熱をよく通す。
カルシウムの化合物には、炭酸塩、硫酸塩など、水に溶けにくいものが多い。この性質を利用して、カルシウムの硫酸塩はセッコウとして建築材料や医療用ギプスなど広く利用されている。これに対して、塩化物は潮解性を示すなど水によく溶ける。この性質を利用して、塩化カルシウムは乾燥剤などに用いられる。
酸化カルシウムは、天然に大量に存在する炭酸カルシウムを空気中で強熱すると容易に生成する。酸化カルシウムが工業的に利用されている例として、鉄の製錬がある。溶鉱炉では、原料の鉄鉱石中にある不純物の二酸化ケイ素は、炭酸カルシウムの熱分解で生じる酸化カルシウムと反応して、スラグとして銑(せん)鉄から除去されている。また、我々のごく身近なところでは、酸化カルシウムは缶入の酒や弁当を温めるためにも用いられている。
問1 空欄 [1] ~ [3] にあてはまる適切な語あるいは元素記号を書け。
問2 下線部(a)の理由を説明せよ。
答え……
問1
[1]、[2] Be、Mg (順不同)
[3] アルカリ土類金属元素
問2 1原子あたり2つの価電子を持ち、それを取り去ることで安定な電子配置をとるから。
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結晶格子に関する問題のチャート⑤(11枚の中の1枚)
溶液の濃度に関する問題のチャート①(4枚の中の1枚)
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