今日は、身の回りの化学(用途・材料) 15族元素編についてです。
センター試験は特に時間が勝負なので、あるキーワードに対して
いくつかの関連用語が条件反射的にイメージできるようになることが重要です。
そこで、用途や材料に関するテーマで
入試問題をデータベースソフトで徹底的に調べ上げ、「用途・材料のキーワード」に対する条件反射的に思い浮かべてほしい「物質」をまとめました。
15族に属する元素には、窒素N、リンP、ヒ素As、アンチモンSb、ビスマスBiがあり、いずれも5個の最外殻電子をもちます。
これらすべては典型元素ですが、N、P、Asは非金属元素、Sb、Biは金属元素に分類されます。
15族ではNとPに関する物質についておさえておけばいいでしょう。
冷却剤……液体窒素
空気や生物などを構成する元素……窒素N2
※窒素の単体は、標準状態で二原子分子N2からなる気体で、空気中に体積比で約78%存在しています。
☆空気中の体積比
窒素N2:78%,酸素O2:20%,アルゴンAr:0.9%,二酸化炭素:CO2 0.04%
笑気ガス(麻酔作用)……一酸化二窒素N2O
肥料の三要素の1つ……リンP
※窒素、リン、カリウムは植物の生育に欠かせなく、肥料の三要素とよばれます。
植物は、リンを単体のままでは吸収できず,水に溶けたH2PO4-などのイオンの形で根から吸収します。
殺鼠剤や薬品の原料……黄リン
マッチの側薬や薬品の原料……赤リン
乾燥剤・脱水剤……十酸化四リンP4O10
リン鉱石・動物の歯や骨の主成分……リン酸カルシウムCa3(PO4)2
肥料、染料、医薬品、火薬などの重要な原料……硝酸HNO3
※硝酸は工業的にはオストワルト法(アンモニア酸化法)によって製造されます。この方法によって大規模に製造されるようになりました。
肥料……尿素(NH2)2CO
※尿素は、アンモニアを二酸化炭素と高温、高圧で反応させると尿素が生成します。
尿素は、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウムなどとともに窒素肥料として用いられます。
以下は、用途・材料に関して出題された問題です。
■ 2012 宮崎大学 教育文化 工 農
窒素Nは,空気や生物などを構成する元素として,自然界に広く存在している。単体は標準状態で二原子分子N2)からなる無色無臭の気体で,空気中に体積比で78%存在している。工業的には主に液体空気の分留で得られる。液体窒素は冷却剤として使われている。窒素の単体N2は化学的に不活性で,室温では安定だが,空気中で火花放電を行うと,酸素と化合して一酸化窒素になる。一酸化窒素は水に溶けにくい無色の気体で,空気中の酸素と反応して二酸化窒素になる。二酸化窒素は イ 色のきわめて有毒な気体で,室温では一部が無色の四酸化二窒素に変化している。
リンPは,リン酸塩として動物の骨や歯に多く含まれ,生体の物質代謝にも重要な働きをもつ元素である。黄リンと赤リンはリンの ウ で,空気中で燃やすと,いずれも吸湿性の強い白色粉末状の十酸化四リンを生じる。十酸化四リンに水を加えて煮沸するとリン酸になる。
問 文章中の空欄 イ、 ~ ウ の中に入る最も適当な語句あるいは数値を書け。
答え…
イ 赤褐
ウ 同素体
■ 2012 奈良女子大学 理 生活環境
周期表の15族に属する非金属元素には,窒素,リン,( a )があり,窒素はL殻,リンはM殻,( a )はN殻にいずれも( ア )個の最外殻電子をもっている。窒素とリンはカリウムと合わせて植物の生育に必要な肥料の三要素として知られ,水素,酸素,ハロゲンと様々な化合物を形成する。
窒素の水素化物であるアンモニアは,工業的には( イ )法によって窒素と水素から直接合成される。実験室では塩化アンモニウムと水酸化カルシウムの混合物を加熱して発生させ,( ウ )置換によって捕集する。アンモニアを二酸化炭素と高温,高圧で反応させると尿素が生成するが,尿素は塩化アンモニウム,硝酸アンモニウム,硫酸アンモニウムなどとともに窒素肥料として用いられる。窒素の酸化物としては一酸化窒素や二酸化窒素などがあり,これらはいずれも常温で気体である。一酸化窒素は実験室では希硝酸を( b )に加えて発生させ,( エ )置換で捕集する。二酸化窒素は濃硝酸を( b )に加えることで得られるが,水に溶けやすく空気より( オ )いので( カ )置換によって捕集する。二酸化窒素は常温以上では二量化しやすく,一部は無色の( c )に変化する。また,硝酸は肥料,染料,医薬品,火薬などの製造に使われており,工業的にはオストワルト法によってアンモニアを酸化して製造され,実験室では硝酸カリウムに( d )を加えて得ることができる。硝酸は( キ )や熱によってその一部が分解するので,褐色びんに入れて冷暗所で保存する。
リンの単体には黄リンや赤リンがある。黄リンは( ク )個のリン原子からなる無極性分子で,一つのリン原子は( ケ )個の( コ )結合を形成し,正四面体の立体構造をとる。黄リンはきわめて毒性が強く,空気中で自然発火するので( サ )中に保存する。一方,赤リンは多数のリン原子が( コ )結合で結ばれた網目状構造をもつ。黄リンと赤リンは互いに( シ )の関係にあり,黄リンを空気を断って250℃に熱すると赤リンが生じる。黄リンや赤リンを空気中で燃焼させると( ス )色の十酸化四リンの粉末が得られる。これは吸湿性が高いため,乾燥剤や脱水剤として用いられる。(3)十酸化四リンと水との反応で生じるリン酸は( セ )価の酸で,水溶液中では硝酸よりも( ソ )い酸性を示す。
問1 ( ア )~( タ )にあてはまる語句または数値を書け。
問2 ( a )~( d )にあてはまる元素名または化合物名を書け。
答え…
問1
ア 5
イ ハーバ・ボッシュ
ウ 上方
エ 水上
オ 重
カ 下方
キ 光
ク 4
ケ 4
コ 共有
サ 水中
シ 同素体
ス 白
セ 3
ソ 弱い
問2
a ヒ素
b 銅
c 四酸化二窒素
d 濃硫酸
■ 2009 長崎大学 医 教育 工 歯 水産 薬 環境科
Ⅰ
植物が正常に成長するためには,少なくとも16種類の元素が必要といわれている。これらの元素は,必須元素とよばれる。必須元素16種類のうち9種類は,比較的高い含有量で植物体を構成しており,これらは多量元素とよばれる。多量元素を原子番号の小さいものから順に並べると, ア , イ ,窒素, ウ ,マグネシウム, エ , オ , カ ,カルシウムとなる。残りの7種類の元素(B,Cl,Mn,Fe,Cu,Zn,Mo)は,植物体にごく少量含まれており,微量元素とよばれる。植物の生育において,特に不足しやすい必須元素は,窒素, エ , カ であり,これらは肥料の三要素とよばれる。一般に植物は,大気中の窒素を利用することができず,窒素原子を含むイオンを土壌から吸収することにより,元素としての窒素を取り込んでいる。大気中の窒素を工業的に固定して得られるアンモニアを原料として大量生産される主な窒素肥料として,硫酸アンモニウム(硫安)や キ がある。無機化合物である硫安は,安価で即効性の高い窒素肥料であるが,土壌を酸性化する欠点がある。一方,有機化合物である キ は,土壌を酸性にしない点で優れた窒素肥料で,土壌中の微生物の作用によって分解され,窒素原子を含むイオンを植物に供給する。
問1 文章Ⅰの ア ~ カ に入る適切な元素を元素記号で記せ。また, キ に入る適切な物質名およびその化学式を記せ。
答え…
問1
ア H
イ C
ウ O
エ P
オ S
カ K
キ 尿素,(NH2)2CO
■ 2012 群馬大学 工-昼 工-夜主
窒素とリンはともに周期表 ア 族の元素で,これらの原子はいずれも価電子を イ 個持つ。室温において,窒素の単体は気体であるのに対し,リンの単体は固体である。リンの単体には,有毒で自然発火性のある あ や,毒性が低くマッチの摩擦面などに用いられる い などの同素体が存在する。
問 文章Ⅰの ア ~ イ に入る適切な数字を,あ、いに入る適切な物質名を記せ。
答え…
ア 15
イ 5
あ 黄リン
い 赤リン
■ 2013 明治大学一般 農
動物の歯や骨の主成分はリン酸カルシウム(Ca3)(PO4)2)であるので,リンは古くは骨や歯から製造されたが,現在ではリン鉱石に含まれるリン酸カルシウムをケイ砂とコークスと混ぜて電気炉で加熱し,発生するリン蒸気を水中で凝縮させて製造している。このようにして得られる単体は白リンであり,空気のない条件で300℃に加熱すると赤リンに変わる。白リンは四原子からなる正四面体の分子が集合したもので,透明なロウ状固体であり,表面に赤リンの被膜が形成して淡黄色に見えるので黄リンと呼ばれる。黄リンという純物質はない。
リンを空気中で燃焼させると十酸化四リンになる。この化合物は吸湿性が強く乾燥剤に用いられる。また,水を加えて加熱すると,徐々に反応してリン酸(H3)PO4))になる。
地球上で採掘されるリン鉱石の量は年間約1億5千万トンで,世界の食塩生産量よりも多い。既に品質のよいものは世界中で掘り尽くされ,リン資源の枯渇が懸念されている。リン鉱石のリンの約80%は化学肥料に使われているため,リン鉱石の枯渇は地球規模での農業生産に深刻な打撃を与え,人類の生存そのものにも重大な危機が迫っている。
(1) 以下の物質の中で,乾燥剤として使われないものは 20 である。
20
A NaHCO3
B CaO
C シリカゲル
D CaCl2
E H2SO4
(2) リン酸は無色の結晶で,潮解性がある。以下の化合物の中で,潮解性を示さないものは 21 である。
21
A NaOH
B KOH
C MgCl2
D FeCl3
E CaCl2
F Na2CO3・10H2O
答え…
(1) A
(2) F
■ 2010 東北薬科大学 薬
問 リンPについての記述のうち,誤っているものはどれか。
① 周期表で15族に属し,窒素Nの下に位置する。
② M殻に5個の価電子をもつ。
③ 自然界には単体として存在しない。
④ 赤リンは空気中で安定であり,マッチや火薬の材料に使われる。
⑤ 黄リンは正四面体状の分子P4が集まってできた共有結合の結晶で,非常に硬い。
答え…
⑤
■ 2010 慶應義塾大学 医
リンは人尿から抽出されて発見された元素であり,生物にとって不可欠な元素である。例えば,DNAなどの遺伝物質を作るためにも欠かせないし,リン酸カルシウムは骨や歯の主成分である。また,生体内のエネルギー源として働くATPもリン酸の化合物である。その他,マッチの発火剤としても使用されているし,農作物の肥料としても利用されている。
リンの単体は天然には存在しないが,人工的に得られる単体にはいくつかの同素体が存在する。このうち,よく知られている同素体は( A )と( B )の2種類である。( A )は毒性のある固体で反応性に富み,空気中では自然発火するので,水中に保存する。( B )は( A )に比べて反応性に乏しく,毒性が弱くて取り扱いやすい。( B )はガラス粉やニカワと混ぜてマッチの摩擦面に使われる。
2.( A ),( B )に入る適切な名称を記せ。
A 黄リン
B 赤リン
■2012 京都府立大学 2/25,前期日程 生命環境
窒素は空気の体積の約78%を占める主要成分であり,希ガスに次いで安定な気体である。多くの植物は,空気中の窒素をそのままの形では利用できないため,水に溶けたアンモニウムイオンや硝酸イオンとして根から吸収し,タンパク質や核酸などを合成するための窒素源として利用している。自然界では根粒菌が,大気中の窒素を窒素化合物へ変換(窒素固定)している。
一方,工業的に窒素を固定する方法として,窒素と水素からアンモニアの合成を行う( ア )法が,またアンモニアを酸化することで硝酸を得る( イ )法がそれぞれ開発された。これらの方法の開発により,それまで農作物の肥料はチリ硝石に依存していたが,安価に人工的に生産された窒素肥料が利用されるようになり,食料の安定供給につながった。
問 本文中の( ア ),( イ )に入る適切な方法名を答えよ。
答え…
ア ハーバー・ボッシュ法
イ オストワルト法
■2013 慶應義塾大学 薬
窒素単体は二原子分子であり,沸点が-196℃である。このことを利用して液体窒素が冷却剤として汎用される。
「電離平衡に関する問題 完全攻略チャート&過去問解説集」の販売を開始しました。
完全攻略チャートのサンプルを公開しました。
結晶格子に関する問題のチャート⑤(11枚の中の1枚)
溶液の濃度に関する問題のチャート①(4枚の中の1枚)
気体の製法と性質に関する問題チャート①(5枚の中の1枚)
アセタール化の計算問題のチャート③(7枚の中の1枚)
こちら(HP 恋する化学)よりご購入いただけます。
↓ランキングが見れます。↓
にほんブログ村
にほんブログ村
↧
身の回りの化学(用途・材料) 15族元素編
↧