今日も理由を記述する問題についてです。
■問題
銅の電解製錬において,粗銅中に含まれている鉄,亜鉛,ニッケル,銀,金の不純物はどうなるか?理由とともに答えよ。
□解答例
低電圧で電気分解を行うと,鉄,亜鉛,ニッケルは,銅よりもイオン化傾向の大きいため,溶液中に溶け出し,イオンの状態で存在する。
銀と金は,銅よりもイオン化傾向の小さいため,陽極泥として単体のまま陽極の下に沈殿する。
※補足解説
銅は単体として産出することもありますが,多くは黄銅鉱(主成分CuFeS2)として存在します。
製法は,黄銅鉱を溶鉱炉でコークスC,石灰石(主成分:CaCO3),ケイ砂(主成分:SiO2)とともに強熱すると,銅は硫化物の硫化銅(Ⅰ)Cu2Sになります。
次に,Cu2Sを転炉に移し,酸素を吹き込むと銅は還元されて粗銅が得られます。
この粗銅は純度が99%程度で,まだ不純物を含む為,電解精錬を用いてさらに精製されます。
□電解精錬
厚い粗銅(板)を陽極,薄い純銅(板)を陰極として,硫酸銅(Ⅱ)および硫酸の混合水溶液中で低電圧(0.2~0.5V)で電気分解します。
この低電圧というのがポイントです!
すると,陽極では,極板である銅自身が銅イオン(Ⅱ)Cu2+になって溶け出します。
一方,陰極では,粗銅から溶け出したCu2+や,もともと硫酸銅水溶液に含まれていたCu2+が銅として析出し,陰極の純銅板に付着します。
また,陽極の粗銅板中に含まれる銅よりもイオン化傾向が小さい金Auや銀Agなどはイオン化せずに陽極の下に落ちて沈殿します。
これを陽極泥といい金や銀などの貴金属はここから回収されます。
銅よりもイオン化傾向が大きい鉄Fe,ニッケルNi,亜鉛Zn,鉛Pbなどはイオンとなって溶け出しますが,陰極には析出しません。
しかし,鉛(Ⅱ)イオンPb2+だけは,溶液中の硫酸イオンSO42-と結合し,硫酸鉛PbSO4として陽極泥と一緒に沈殿します。
これらの操作によって,陰極には,99.99%以上の純銅が得られます。
■実際に出題された問題は下記になります。
……(略)……同時に副産物として銀や金も得られる。
問 下線部では,銀や金は電解精錬したときに電解槽のどこに得られるのかを理由とともに述べよ。
(2009 横浜市立大学 医)
■銅の電解精錬では,純銅の薄板を陰極に,不純物を含む粗銅板を陽極に用いて,硫酸酸性の硫酸銅(Ⅱ)水溶液中で電気分解を行う。以下の問いに答えよ。
(ア) 電気分解を行うと,陽極付近に沈殿物(陽極泥という)が生成する。粗銅板に不純物として以下の元素が含まれていた。生成した陽極泥に含まれる元素の元素記号をすべて記せ。
〔Ag, Au, Fe, Ni, Zn〕
(イ) 陽極泥が生成する理由について,45字以内で述べよ。
(2013 京都産業大学 理 コンピュータ理工 総合生命科)
(ア)の解答
Ag,Au
■純度の向上には電解精錬も用いられる。ここでは銅の電解精錬を考える。純度が低い粗銅で構成される陽極(アルミニウム,銀,鉄を含む)と,純銅で構成される陰極とを体積●●Lの硫酸銅(Ⅱ)水溶液に入れて,0.30Vで電気分解を行う。
その結果,陽極の質量は●●g減少して,陰極の質量は●●g増加した。また,水溶液中の硫酸銅(Ⅱ)の濃度は●●減少した。このとき,陽極の下に陽極泥と呼ばれる沈殿が生じた。
問 下線部に関して,陽極泥を構成する金属元素を沈殿した理由とともに記せ。
(2013 東京大学 2/26,前期日程 教養 一部●●等 改訂)
■問1 粗銅に不純物として次の金属が含まれるとき,電解精錬の過程で電極として用いた粗銅の下に沈殿するものをすべて記せ。
白金, 銀, 鉄, 金, ニッケル
問2
問1で沈殿しない不純物の金属は,どのような状態で存在するか。理由とともに60字以内で述べよ。
( 2012 静岡大学 理 工 農 )
問1の解答 白金,銀,金
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銅の電解製錬に関する理由を記述する問題
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