今日も理由を記述する問題についてです。
□問題1
濃硝酸は褐色ビンにいれて冷暗所で保存する。その理由は?
□解答例
濃硝酸は,光や熱によって二酸化窒素と酸素に分解するため。
※補足解説
硝酸は,工業的にはアンモニアと空気の混合気体を,高温で白金触媒に通して 一酸化窒素とし,これを冷却後,空気中で酸化して温水に通すと得られます。
この方法をオストワルト法(アンモニア酸化法)といいます。
硝酸は,この方法によって大規模に製造され,肥料,染料,医薬品,火薬などの重要な原料となります。
硝酸の重要な性質は,次のようになります。
① 無色・揮発性の液体。
② 1価の強酸。
③ 酸化力が強い。
④ Al,Fe,Niは濃硝酸によって不動態となる。
⑤ 濃硝酸は,光や熱によって分解しやすいので,褐色瓶に入れて冷暗所で保存する。
■実際に出題された問題は下記になります。
■硝酸は透明なビンに入れ保管したとき,溶液が徐々に無色から黄褐色に変化するので,褐色ビンに入れて冷暗所に保管する必要がある。
問 下線の理由を述べなさい。
(2010 宮城大学 食産業 一部改)
■……(略)……… 濃硝酸は褐色びんに保存する。
問 下線部の理由を簡潔に説明しなさい。
(2013 福島大学 理工 )
■濃硝酸は褐色ビンにいれて冷暗所で保存する。その理由を20字以内で答えなさい。
(2012 日本大学 文理 )
□問題2
濃硫酸は酸としての性質はきわめて弱く,希硫酸が強酸性を示す理由は?
□解答例
希硫酸は,水を多く含むので電離し,水素イオンを放出するので,強酸性を示す。
一方,濃硫酸は水をほとんど含まないため,電離しにくく酸性は極めて弱くなる。
Point!
希硫酸 → 水を多く含む → 電離して,水素イオを放出 → 強酸性
濃硫酸 → 水をほとんど含まない → 電離しにくい。→ 酸性は極めて弱い。
□問題3
希硫酸を調製する場合,必ず,水をかき混ぜながら,濃硫酸を少しずつ加えなければいけない。その理由は?
□解答例
濃硫酸は溶解熱が非常に大きいため,濃硫酸に少量の水を加えると,溶解熱によって水が突沸し,濃硫酸とともに飛び散り危険なため。
※補足解説
硫酸の工業的製法は,二酸化硫黄を空気と混ぜ,酸化バナジウム(Ⅴ)V2O5の存在下で反応させて得られる三酸化硫黄を濃硫酸に吸収させた後,希硫酸を加えます。
この硫酸の工業的製法を接触法といいます。
濃硫酸とは約90%以上の硫酸水溶液で,水をほとんどない含まない濃硫酸と多量の水に硫酸を溶かした希硫酸とは,性質がかなり異なります。
希硫酸と濃硫酸の性質は,次のようになる。相違点に注意して覚えよう。
■希硫酸の性質
① 強酸性を示す。(水素よりもイオン化傾向の大きい金属(Pbは除く)を溶かす。)
② Ba2+,Ca2+,Pb2+と難溶性の塩を形成する。
BaSO4(白色),CaSO4(白色),PbSO4(白色)
■濃硫酸の性質
① 粘度が大きく不揮発性の酸。(分子間で水素結合により強く結合しているため)
② 吸湿性。(酸性の乾燥剤として利用)
③ 脱水作用。(水分子がなくても化合物からHとOHをH2Oの形で奪う)
④ 溶解熱が大きい。(薄めるときは,多量の水に少しずつ濃硫酸を加える)
⑤ 熱濃硫酸は,酸化力が強い。
■実際に出題された問題は下記になります。
■硫酸から希硫酸をつくるには,必ず水に濃硫酸を少しずつかき混ぜながら加えなければならない。
問 下線部ついて,そのようにしなければならない理由を説明せよ。
(2012 島根大学 総合理工 一部改)
■濃硫酸を水で希釈して調製する。そのとき,はかりとった濃硫酸に水を加えてはならない。なぜか説明せよ。
(2013 茨城大学 理 工 農 )
■希硫酸を調製する場合,必ず,水をかき混ぜながら,濃硫酸を少しずつ加える。この操作を逆に行うと危険である。この理由を35字以内で述べなさい。
(2013 金沢大学 理工 )
■濃硫酸は不揮発性で,(d)揮発性の酸の塩とともに過熱すると,揮発性の酸が生成する。(e)濃硫酸は酸としての性質はきわめて弱く,希硫酸は強い酸性を示す。(f)希硫酸をつくるときは,水に濃硫酸を少しずつ加える。
問 下線部(e)の理由を述べよ。
(2012 九州歯科大学 歯 一部改)
↧
硝酸・硫酸に関する理由を記述する問題
↧