今日は,タンパク質・アミノ酸の検出反応についてです。
タンパク質・アミノ酸の検出には主に次の4つがあります。
■ニンヒドリン反応
アミノ酸またはタンパク質にニンヒドリン水溶液を加えて温めると,青紫~赤紫色に呈色します。
この反応をニンヒドリン反応といいます。
★理由……残存アミノ基とニンヒドリンとの反応による。
※ニンヒドリンについては覚える必要はありません。
■キサントプロテイン反応
タンパク質水溶液に濃硝酸を加えて熱すると黄色になり,さらにアンモニア水を加えて塩基性にすると橙黄色に呈色します。
この反応をキサントプロテイン反応といいます。
一般に,タンパク質の検出に用いられます。
★理由……タンパク質を構成するアミノ酸中のベンゼン環がニトロ化されるため。
ベンゼン環をもつアミノ酸も陽性を示すことに注意しましょう!
■ビウレット反応
タンパク質水溶液にNaOH水溶液を加えたあとに,硫酸銅(Ⅱ)CuSO4水溶液を加えると赤紫色に呈色します。
この反応をビウレット反応といいます。
一般に,タンパク質の検出に用いられます。
★理由……2つのペプチド結合が銅(Ⅱ)イオンに配位して錯イオンを形成するため。
2個以上のペプチド結合をもたないアミノ酸は陽性を示さないことに注意しましょう!
■硫黄の検出
S原子を含むタンパク質水溶液にNaOH水溶液を加えて加熱し,酸で中和した後,酢酸鉛(Ⅱ)Pb(CH3COO)2の水溶液を加えると,酢酸鉛PbSが黒色沈殿します。
この反応は,タンパク質中の硫黄の検出に用いられます。
次の過去問を見れば明らかですが,キサントプロテイン反応とビウレット反応の2つに関する問題が圧倒的に多く出題されています。
それでは過去問をみていきましょう!
■実験1 ペプチドP1,ペプチドP2,ペプチドP3,ペプチドP4それぞれの水溶液に水酸化ナトリウムの固体を加えて加熱した。酢酸で中和した後に酢酸鉛(Ⅱ)水溶液を加えたところ,ペプチドP1およびペプチドP4では ア 沈殿を生じたが,ペプチドP2およびペプチドP3では生じなかった。
実験1で行ったアミノ酸の検出法の名前と ア に入る語句の組み合わせとして最も適切なものはどれか。
検出法の名前 ア
① ビウレット反応 赤紫色
② ビウレット反応 橙黄色
③ ビウレット反応 黒色
④ 硫黄の検出 赤紫色
⑤ 硫黄の検出 橙黄色
⑥ 硫黄の検出 黒色
⑦ キサントプロテイン反応 赤紫色
⑧ キサントプロテイン反応 橙黄色
⑨ キサントプロテイン反応 黒色
(2013 北里大学 薬)
□解答
⑥
■タンパク質はさまざまな試薬によって呈色反応を示すが,その呈色反応としては,(a)キサントプロテイン反応やビウレット反応がある。また,ある元素を含むタンパク質を検出する反応として,タンパク質の水溶液に水酸化ナトリウムを加えて加熱し,酸を加えて中和後,酢酸鉛(Ⅱ)水溶液を加えることで黒色の硫化鉛(Ⅱ)を沈殿させる方法がある。
問 下線部(a)について,キサントプロテイン反応ではチロシンやトリプトファン中のベンゼン環に置換反応がおこって呈色する。その置換反応名を記せ。
(2009 京都薬科大学 薬 )
□解答
ニトロ化
■次のタンパク質に関する記述のうち,正しいもののみをすべて含む組み合わせはどれか。
(a) 加熱や酸などによりタンパク質のアミノ酸配列が変化して,その結果タンパク質の性質が変わることを変性という。
(b) タンパク質中のα-ヘリックスなどの二次構造は,タンパク質分子内の異なるペプチド結合間の水素結合により安定に保たれている。
(c) グリシン,グルタミン酸,メチオニン,リシンの4種類のアミノ酸から構成されるタンパク質は,キサントプロテイン反応が陽性である。
(d) ビウレット反応は,ペプチド結合を2つ以上もつポリペプチドで見られる。
(1) [(a),(b)] (2) [(a),(c)] (3) [(a),(d)] (4) [(b),(c)] (5) [(b),(d)] (6) [(c),(d)]
(2013 神戸薬科大学 薬)
□解答
(5) [(b),(d)]
※(c) グリシン,グルタミン酸,メチオニン,リシンはベンゼン環をもたないので,キサントプロテイン反応では陽性を示さない。
■1~4から適する数字を選びなさい。
システイン,チロシン,フェニルアラニンおよびリシンのなかで,キサントプロテイン反応に陽性を示すアミノ酸は{1 1つ 2 2つ 3 3つ 4 4つ}ある。
(2010 東京理科大学 理工)
□解答
2つ
※チロシンとフェニルアラニンはいずれもベンゼン環をもちます。
■
実験1 ペプチドYの水溶液とペプチドZの水溶液に(a)水酸化ナトリウム水溶液を加えた後,硫酸銅(Ⅱ)水溶液を滴下して観察したところ,ペプチドZの水溶液のみが紫色を呈した。
実験2 ペプチドYの水溶液とペプチドZの水溶液に(b)水酸化ナトリウム水溶液を加えて加熱した後,酢酸鉛水溶液を滴下して観察したところ,ペプチドYの水溶液のみに黒色沈殿が生じた。
実験3 ペプチドYの水溶液とペプチドZの水溶液に(c)濃硝酸を滴下して加熱し,さらにアンモニア水を加えて塩基性にして起こる変化を観察したところ,ペプチドYとペプチドZの両方の水溶液がともに黄色になってから橙黄色になる呈色反応を示した。
(1) 下線部(a)~(c)の反応名の組み合わせとして最も適切なものを,次の①~⑧のうちから一つ選びなさい。
(a) (b) (c)
① キサントプロテイン反応 ニンヒドリン反応 ビウレット反応
② ニンヒドリン反応 硫黄の検出反応 ビウレット反応
③ 硫黄の検出反応 キサントプロテイン反応 ニンヒドリン反応
④ ビウレット反応 硫黄の検出反応 キサントプロテイン反応
⑤ ニンヒドリン反応 ビウレット反応 硫黄の検出反応
⑥ 硫黄の検出反応 ニンヒドリン反応 キサントプロテイン反応
⑦ ビウレット反応 キサントプロテイン反応 硫黄の検出反応
⑧ キサントプロテイン反応 ビウレット反応 ニンヒドリン反応
(2013 獨協医科大学 医)
□解答
④
■タンパク質とアミノ酸に関する次の記述のうち,正しいものを選べ。
① タンパク質の水溶液はすべて,水酸化ナトリウム水溶液を加えて塩基性にし,硫酸銅(Ⅱ)水溶液を加えると,赤紫~青紫色を呈する。
② すべてのタンパク質は酵素である。
③ すべてのタンパク質は,加水分解するとα-アミノ酸だけを生じる。
④ α-アミノ酸は水には溶けにくいが,有機溶媒には易溶である。
⑤ アラニン,グリシン,グルタミン酸からなるトリペプチドは,キサントプロテイン反応で黄色を呈する。
(2010 獨協医科大学 医)
□解答
①
※①はビウレット反応
■タンパク質の性質に関する次の記述①~⑤のうち,誤っているものはどれか。
① タンパク質の変性とは,熱,アルコールなどによりタンパク質の高次構造が変化することである。
② ビウレット反応は,タンパク質のペプチド結合とCu2+が錯イオンを形成するために起こる。
③ キサントプロテイン反応は,タンパク質中の芳香環がニトロ化されるために起こる。
④ ニンヒドリン反応は,タンパク質中に遊離のカルボキシル基が存在するために起こる。
⑤ タンパク質がシステインを含むとき,そのタンパク質に水酸化ナトリウム水溶液と酢酸鉛(Ⅱ)水溶液を加えて煮沸すると,黒色沈殿を生じる。
(2010 日本大学 薬)
□解答
④
※カルボキシル基ではなくてアミノ基
■化合物Aに濃硝酸を加えて加熱すると黄色になり,さらに,アンモニア水を加えアルカリ性にすると橙色に変化した。
問 下線部に相当する反応名は 1 である。
1 の解答群
A フェーリング反応 B 銀鏡反応 C キサントプロテイン反応 D 硫黄反応 E ビウレット反応 F ニンヒドリン反応
(2010 明治大学 国際日本 情報コミュニケーション 農 文 法 理工)
□解答
C キサントプロテイン反応
■ア Aに水酸化ナトリウム水溶液を加えて塩基性にした後に硫酸銅(Ⅱ)水溶液を加えたところ,赤紫色を呈した。
問 アの反応名を下記の①~⑤より選べ。
① ヨードホルム反応 ② フェーリング反応 ③ ニンヒドリン反応 ④ キサントプロテイン反応 ⑤ ビウレット反応
(2012 明治薬科大学 薬)
□解答
⑤ ビウレット反応
■タンパク質の反応について,次の文のうち正しいものを1つ選べ。
a.タンパク質水溶液に水酸化ナトリウム水溶液と硫酸銅(Ⅱ)水溶液を加えるとCu2+の錯イオンを生じて赤紫色を示す。
b.ニンヒドリン反応は,アミノ酸の検出には用いられるが,タンパク質の検出には用いることができない。
c.キサントプロテイン反応は,芳香族アミノ酸をもつタンパク質がアルキル化される反応である。
(2010 名城大学 薬 改)
□解答
a
※b.タンパク質の検出にも用いることができる。
c.アルキル化ではなくニトロ化。
■次の文のうち最も不適切なものを一つ選び,番号で答えなさい。
① アミノ酸分子がペプチド結合で結びついた構造の物質をペプチドといい,多数のアミノ酸分子が結合したものをポリペプチドという。
② タンパク質のポリペプチド鎖は,らせん構造をとることが多い。この構造をα-ヘリックスという。この構造は分子内の水素結合によって安定に保たれている。
③ 加水分解でアミノ酸だけを生じるタンパク質を単純タンパク質といい,アミノ酸以外に糖類・色素・核酸・脂質・リン酸なども生じるタンパク質を複合タンパク質という。
④ タンパク質水溶液に,硫酸ナトリウムなどの塩を加えると,タンパク質が沈殿してくる。これは親水コロイドであるタンパク質が塩析されたものである。
⑤ アミノ酸溶液やタンパク質溶液にうすい水酸化ナトリウム水溶液を加えて塩基性にした後,硫酸銅(Ⅱ)水溶液を少量加えると,黄色になる。この反応をキサントプロテイン反応という。
⑥ ベンゼン環を分子内にもつタンパク質やアミノ酸に濃硝酸を加えて熱すると黄色になる。
⑦ 酵素はタンパク質を主体とした物質で,多くの種類がある。一種類の酵素は,特定の物質の特定の反応にしか関与しないことが多い。これを,酵素の基質特異性という。
(2012 九州大学 理 医 歯 薬 工 芸術工 農)
□解答
⑤
※キサントプロテイン反応ではなくてビウレット反応。
■下記の(1)~(4)のトリペプチドに関して以下の問いに答えよ。
(1) グリシン-セリン-リシン
(2) バリン-システイン-グルタミン酸
(3) アラニン-イソロイシン-チロシン
(4) メチオニン-プロリン-ロイシン
(1)~(4)のトリペプチド溶液のうち,キサントプロテイン反応(黄色の呈色反応)を示す溶液の番号を答えよ。また,そのトリペプチドを構成するアミノ酸のなかで,キサントプロテイン反応に関与しているのはどれか,アミノ酸の名称を答えよ。
(2012 九州大学 理 医 歯 薬 工 芸術工 農)
□解答
(3),チロシン
■次の記述は正しいか?
キサントプロテイン反応は,硫黄を含むタンパク質の検出に用いられる。
(2012 群馬大学 工-昼 工-夜主 改)
□解答
誤り。
※硫黄ではなくベンゼン環
■タンパク質を検出する方法には幾つか知られているが, (ア) 反応は,タンパク質の水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を加えた後で,硫酸銅(Ⅱ)水溶液を少量加えると (イ) 色になる反応をいう。キサントプロテイン反応は,ベンゼン環などを持つタンパク質の水溶液に (ウ) を加えて加熱すると黄色に,更にアンモニア水などを加えて塩基性にすると橙黄色になる反応をいう。
問1 問題文の (ア) ~ (ウ) に適切な語句を書け。
(2010 高知大学 教育 理 改)
□解答
(ア) ビウレット (イ) 赤紫 (ウ) 濃硝酸
■タンパク質の定性分析法であるキサントプロテイン反応では,タンパク質に存在するベンゼン環が ア 化され,呈色する。
(a) 上の文中の空欄 ア に相当する適切な化学用語を書け。
(2009 埼玉大学 工 理 )
□解答
ニトロ化
■
実験①
溶液(a)を新しい試験管に2mL取り,6mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を3mL加えて振った。その後,0.1mol/Lの硫酸銅(Ⅱ)水溶液を2滴加えて振ると,赤紫色になった。
実験②
溶液(a)を新しい試験管に2mL取り,濃硝酸を1mL加えて加熱し,室温まで冷却した。その後,塩基性になるまでアンモニア水を加えると,橙(とう)黄(おう)色になった。
問 実験①と②の呈色反応に関して,次の(1)~(6)のなかからもっとも適切な記述を一つずつ選び,記号(1)~(6)で答えよ。
(1) キサントプロテイン反応とよばれ,2つ以上のペプチド結合をもつペプチドで見られる。
(2) ニンヒドリン反応とよばれ,2つ以上のペプチド結合をもつペプチドで見られる。
(3) ビウレット反応とよばれ,2つ以上のペプチド結合をもつペプチドで見られる。
(4) キサントプロテイン反応とよばれ,ベンゼン環がニトロ化されるために起こる。
(5) ニンヒドリン反応とよばれ,ベンゼン環がニトロ化されるために起こる。
(6) ビウレット反応とよばれ,ベンゼン環がニトロ化されるために起こる。
(2009 鳥取大学 農 )
□解答
①…(6)
②…(1)
■あるポリペプチドに対してキサントプロテイン反応を行ったところ,呈色しなかった。このポリペプチドの構造上の特徴を記しなさい。
( 2012 山形大学 理 )
□解答
ベンゼン環をもつα-アミノ酸がない。
■タンパク質は( ア )が重合した高分子化合物であり,主要な成分元素はC,H,O,N,Sの5つである。タンパク質の呈色反応としては,(a)ビウレット反応や(b)キサントプロテイン反応がある。
問1 ( ア )に入る最も適当な語句を記せ。
問2 下線部(a)について,ビウレット反応を示すには何個以上のペプチド結合が必要か。また,下線部(b)について,キサントプロテイン反応ではチロシンやトリプトファン中のベンゼン環に置換反応がおこって呈色する。その置換反応名を記せ。
(2009 京都薬科大学 薬 )
□解答
問1 ア…アミノ酸
問2 2個以上
ニトロ化
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タンパク質・アミノ酸の検出反応
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