私立大学の“難化”についての興味深い記事を見つけたので、一部ご紹介します。
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下記、AERA 2018年4月23日号より一部抜粋
2018年度は以前にも増して私立大学の入試が厳しいものとなった。志願者数は増えているのに、合格者数は絞られるというダブルパンチ。受験生には厳しい環境となっている。
今春、同志社大学文学部に合格したAくんは、今年の入試をこう振り返る。
「過去問を解いて、合格最低点をクリアできた大学でも通らない。明治大のある学科では『8割は取っただろう』という感触があったけど、落ちました。全体的に合格最低ラインが1割くらい上がった印象です。
併願が増えて倍率も高くなっているので、小さなミスをすると滑り止めでも落ちる危機感があった」
大学関係者の間で「2018年問題」と呼ばれ、18歳人口が減少期に入る初めての受験シーズンが終わった。17年には約120万人だった18歳人口は、18年から約118万人と減りはじめ、31年には100万人を割り込むとみられている。だが、少子化にもかかわらず、18年度入試は以前にも増して厳しいものとなった。
特に顕著だったのは、私立大学の「難化」だ。「大学通信」によると、17年度の私大の一般入試の志願者数は前年度比で約8%増だったが、18年度はさらに7%増となった。
志願者数トップは5年連続で近畿大で、今年は15万人を超えた。関東では、中央大が約1万4千人増で、前年比119%。総合政策学部では、募集人数に対する志願倍率が27倍にもなった。立教大は前年比14.6%増で、異文化コミュニケーション学部の志願倍率は28.7倍。法政大は志願者数が約12万2千人と過去最高を記録した。
大学通信常務取締役の安田賢治さんは、18年度入試の傾向をこう話す。
「私大のセンター試験利用入試が人気で、志願者は10%ほど増えています。志願者数が増加した私大は多様な入試制度を用意していて、学内併願をしやすい環境を整えている学校が多い。受験生の併願数は年々増えていて、私大だけで15くらいの学科を受験する子も珍しくない。
必然的に倍率も高くなるので、本来は滑り止めだった大学でもあっさりと落ちてしまうケースが多々あったようです」
こうした状況のなか、これまでは現役志向が強かった受験生にも、「浪人」という選択肢が復活してきた。今年の大学入試センター試験では、志願者58万2671人のうち、浪人生を含む既卒者は4.9%増の10万3948人。4年ぶりに10万人を超えた。1年浪人して、今春、都内の理系
大学の工学部に入学したBくんはこう話す。
「予備校には3年以上の多浪生も結構いました。最近は理系でもセンター試験対応のために国語の勉強は必須。英語も思考力が試される問題が多くなり、理系科目以外の勉強に時間を割く必要があった。『理系だけ得意』な人はきついと思う。親の世代は、いまだに日東駒専を“滑り止め”の大学だと思っているけど、そんな時代じゃない」
駿台教育研究所進学情報事業部長の石原賢一さんは言う。
「三大都市圏を中心に浪人生の数は回復基調にあり、来年はさらに増えることが予想されます。受験生は国公立も含めた地方の大学に行くメリットをほとんど感じられておらず、しばらく都市圏の私大の志願者数が減る理由がない。大学入試改革が一段落する20年代半ばまでは、私大の難化は続くと思われます」
私大が「難化」した要因は、志願者数の増加だけではない。16年度から始まった私大の「定員厳格化」も、大きく作用している。
教育の質の向上などを理由に、文部科学省は私大の入学定員超過に対して、私学助成金(私立大学等経常費補助金)の交付基準を年々厳しくしている。15年度までは収容定員8千人以上の大規模大学は入学定員充足率(入学定員に対する入学者数の割合)を1.2倍までに抑えれば私学助成金が交付されていた。この基準が16年度は1.17倍、17年度は1.14倍、今年度は1.1倍と年々厳しくなっており、基準を超えると助成金は全額カットされる。さらに来年度は1.0倍を超えた人数分が減額される(0.95~1.0倍の場合は、一定の増額措置がある)。
私学助成金は、私大の収入の約1割を占めるとされ、全額カットとなれば学校経営に大きな影響を与える。大学側は、これまでのように多めに合格を出して入学者を「確保」しておくことはできない。基準値を0.1でも超えないように合格者数を絞らざるを得ない状況が続いている。志願者数は増えているのに、合格者数は絞られる──受験生にとっては「ダブルパンチ」となっているのだ。
『引用終わり』
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私大が「難化」した要因は、志願者数の増加と16年度から始まった私大の「定員厳格化」も、大きく作用しているのですね。
この現象は、大学入試改革が一段落する20年代半ばまで続くとのこと。