今日も入試問題文を聴いて覚える化学 鉄編です。
録音した音声はyoutubeにアップしています。
□テキストは下記参照ください。
入試問題文を聴いて覚える化学 鉄編
■ 2011年度 大阪大学
鉄は,遷移金属の中では最も豊富に存在する元素であり,粒状の単体は銀白色である。湿度の高い空気中に放置すると酸化されて赤色の錆びを与える。
使い捨てカイロが温かくなるのも,保水剤に含まれる水と酸素が鉄の粉末と反応して生じる熱を利用している。用途に応じては,腐食されないように多様な工夫がなされている。例えば,鉄の鋼板(こうばん)に鉄よりもイオン化傾向の小さい金属をめっきすると,鉄の腐食を防ぐことができる。
しかし,めっき表面に傷が生じた際には,露出した鉄が先に腐食されてしまう。一方,鉄よりもイオン化傾向の大きい金属をめっきした鋼板では表面に傷が生じた際に,露出した鉄が腐食されるよりも先にめっきした金属が腐食されることで鉄の腐食を防ぐ。これは,イオン化傾向のより大きい金属から小さい金属へと電子が移動してイオンが生じる原理を利用している。
アルミニウムは,鉄よりもイオン化傾向の大きい金属であり,鉄よりも腐食されやすいと考えられるが,実際には窓枠などに利用されている。これは,電解酸化によりアルミニウムの表面に腐食に強い薄い酸化膜を生じてアルミニウム内部の腐食が防がれるためである。また,ステンレス鋼(こう)は鉄とクロムを主成分とする合金であり非常に腐食に強いため,日常生活において高い安全性が求められる製品に使用される。
■ 2011年度 長崎大学
金属の酸化物や硫化物が含まれる鉱石から金属の単体を取り出すことを製錬という。たとえば,鉄は,鉄鉱石を溶鉱炉の中でコークスと石灰石を加えて還元することで得られる。金属は,展性や延性を示すことから,箔や板,建築材料に利用される。
また,金属には電気伝導性や熱伝導性があり,これらの伝導性が最も大きい金属は銀である。金属の中には,ある温度以下になると電気抵抗がゼロになるものがある。この現象を超伝導 (または超電導)とよび,医療診断機器やリニアモーターカーに利用されている。
金属は,使用しているうちに化学反応を起こして,表面から酸化物や水酸化物,炭酸塩など,単体ではない状態に変わっていくことがある。これを腐食という。腐食の代表例はさびであり,鉄は酸素や水などと反応してさびを生じる。
金属の腐食を防ぐために,金属製品の表面を他の金属などでおおう方法がある。これをめっきという。鉄のめっき製品としてはブリキやトタンが代表例である。
■ 2011年度 首都大学東京
約10億年前に形成された地層の中には,縞状鉄鉱層(しまじょうてっこうそう)と呼ばれる地層がある。この地層は,鉄鉱石が縞模様状に堆積しており,主に赤鉄鉱と磁鉄鉱(じてっこう)が含まれている。赤鉄鉱は赤さびの主成分であり,一方,磁鉄鉱は黒さびの主成分である。
この地層は,以下に記した〔メカニズム〕に従って形成されたと考えられている
〔メカニズム〕
地球には,誕生以来,酸素は極めてわずかしか存在していなかった。約40億年前,酸性の海が形成され,地殻の鉄が海に溶け出した。約27億年前に光合成生物が誕生すると,これらの生物は光のエネルギーを利用して,二酸化炭素と水から有機化合物,主としてグルコースを合成するとともに,酸素を発生させはじめた。このことによって,海水中に溶けていた鉄イオンは酸素と反応し,これらが大量に海底に堆積して,縞状鉄鉱層が形成された。
われわれが日常的に使用する鉄のほとんどは,縞状鉄鉱層から採掘した鉄鉱石を原料として製造されている。鉄鉱石から鋼(こう)を製造する方法は,鉄鉱石にコークスと石灰石を加え,これらを高炉に入れ,下から熱風を送り込むと銑鉄(せんてつ)が得られる。この銑鉄を転炉に移し,高圧の酸素を吹き込むことで鋼(こう)を製造できる。
HP「恋する化学」にpdfファイルをアップしています。
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