今日は,フェノール類についてです。
ベンゼン環の炭素原子に直接ヒドロキシ基-OHが結合した化合物を総称してフェノール類と呼びます。
アルコールのOH基をアルコール性ヒドロキシ基,フェノール類のOH基をフェノール性ヒドロキシ基といい,性質は異なります。
ベンゼンからのフェノールの製法,フェノールからの誘導体に関する問題は,超頻出となっているので,しっかり整理しておさえましょう。
★次の正誤を判定せよ。
■問題① フェノール類は,水には溶けにくく,有機溶媒には溶けやすい。
■問題② フェノール類は,分子量が同程度の芳香族炭化水素と比べると融点・ 沸点は低い。
■問題③ フェノールは,常温・常圧で液体である。
■問題④ フェノールは,水酸化ナトリウム水溶液と反応して,塩となって溶ける。
■問題⑤ フェノールに,炭酸水素ナトリウム水溶液を加えても反応しない。
■問題⑥ フェノールにNaを加えると,ナトリウムフェノキシドが生成し,水素が 発生する。
■問題⑦ メンを空気酸化してクメンヒドロペルオキシドとし,希硫酸で分解するとフェノールとアセトンが生成する。
■問題⑧ クロロベンゼンを高温・高圧下で,水酸化ナトリウム水溶液と反応させてナトリウムフェノキシドとし,水溶液を塩基性にするとフェノールが得られる。
■問題⑨ ベンゼンスルホン酸ナトリウムの結晶を,水酸化ナトリウムの固体とともにアルカリ融解させると,ナトリウムフェノキシドが生成する。
■問題⑩ フェノールを無水酢酸と反応させると,アセチルサリチル酸が生成する。
■問題⑪ フェノールの水溶液に臭素水を加えると,ブロモベンゼンが生成する。
■問題⑫ フェノールに濃硝酸と濃硫酸の混合物を加えて加熱すると,ニトロ化され,ニトロベンゼンが生成する。
■問題⑬ フェノール,サリチル酸,アセチルサリチル酸,クレゾール,1-ナフトール
に塩化鉄(Ⅲ)水溶液を加えると,それぞれ呈色する。
★解答
□問題①
□解答 …… 正しい。
フェノール類は,ベンゼン環部分が疎水性なので水には溶けにくく,エーテルなどの有機溶媒には溶けます。
しかし,フェノールは,フェノール類の中で,分子全体に対する親水基(-OH)の割合が最も大きいので,水に少し溶けます。
Point! 芳香族化合物の水への溶解性
・一般に,芳香族化合物は,水に溶けにくく,有機溶媒に溶けやすい。
・フェノールは,水に少し溶ける。
・安息香酸は,冷水には溶けないが,熱水には溶ける。
□問題②
□解答 …… 誤り。
フェノール類は,分子量が同程度の芳香族炭化水素と比べると融点・沸点は,かなり高くなります。理由は,-OH部分が分子間で水素結合をするためです。
□問題③
□解答 …… 誤り。
フェノール(融点は41℃)は,常温・常圧で,無色の結晶(固体)です。
フェノール類は,分子量が同程度の芳香族炭化水素と比べると融点・沸点は,かなり高いので,ほとんどが常温で結晶です。
フェノールは,特有の刺激臭をもち,皮膚をおかすので,手などにつかないように取り扱いには十分注意が必要です。
□問題④
□解答 …… 誤り。
フェノールは水にわずかに溶け,一部が電離して水素イオンH+を放出するため,弱酸となります。よって,塩基である水酸化ナトリウム水溶液とは中和反応して,ナトリウムフェノキシドとなって溶けます。
□問題⑤
□解答 …… 正しい。
酸の強さは,炭酸>フェノール のため,弱酸であるフェノールに,強酸の塩である炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)水溶液を加えても反応しません。
□問題⑥
□解答 …… 正しい。
フェノールもアルコールと同様に,ヒドロキシ基-OHをもつため金属ナトリウムと反応して,水素を発生します。
この反応は,有機化合物中の-OH基の検出に用いられます。
□問題⑦
□解答 …… 正しい。
この方法をクメン法といいましたね。クメン法はアセトンの工業的製法の一つでもあることもおさえてください。
Point! アセトンの製法
① 2-プロパノールの酸化
② プロペンの空気酸化
③ アルケン(メチルプロペンなど)のオゾン酸化
④ プロピンへの水の付加
⑤ 酢酸カルシウムの乾留
⑥ クメン法の副産物
□問題⑧
□解答 …… 誤り。
水溶液を塩基性ではなく酸性にすると,ナトリウムフェノキシド(弱酸の塩)から弱酸であるフェノールが遊離し,得られます。
フェノールの製法の1つです。
□問題⑨
□解答 …… 正しい。
水酸化ナトリウムの固体とともに加熱し,融解状態で反応させることをアルカリ融解といい,生成したナトリウムフェノキシドに酸を加えるとフェノールが遊離します。
フェノールは,ベンゼンから直接合成することが困難なため,ベンゼンの一置換体から作られます。
□問題⑩
□解答 …… 誤り。
アセチルサリチル酸ではなく,酢酸フェニルが生成します。
フェノール性ヒドロキシ基のHとアセチル基CH3CO-が置換する反応でアセチル化といいましたね。
アセチルサリチル酸は,サリチル酸と無水酢酸を反応させると生成しますね。
□問題⑪
□解答 …… 誤り。
ブロモベンゼンではなく,2,4,6-トリブロモフェノールが白色沈殿します。
ベンゼンに臭素水を加えても触媒がなければ反応しませんが,フェノールはベンゼンより反応性が大きいので,置換反応を受けやすく,臭素水を加えるとすぐに,2,4,6-トリブロモフェノールが白色沈殿します。この反応はフェノールの検出にも用いられます。
Point!
ベンゼン……反応しない。(鉄粉などの触媒下ではブロモベンゼンが生成)
フェノール……2,4,6-トリブロモフェノールが白色沈殿
□問題⑫
□解答 …… 誤り。
ニトロベンゼンではなく,ピクリン酸(2,4,6-トリニトロフェノール)が黄色沈殿します。
ニトロベンゼンは,ベンゼンに濃硝酸と濃硫酸の混合物を加えて加熱すると,生成しますね。
似たような反応をまとめたので,つなげて覚えてください。
□問題⑬
□解答 …… 誤り。
フェノール,サリチル酸,クレゾール,1-ナフトールは,すべてフェノール性ヒドロキシ基-OHを持つフェノール類で,塩化鉄(Ⅲ)FeCl3水溶液を加えると,紫色(青紫~赤紫)に呈色します。しかし,アセチルサリチル酸は,フェノール性ヒドロキシ基を持たないので呈色はしません。
この反応は,フェノール類の検出に用いられます。
※上記,アルコールは中性,フェノール類は弱酸性の誤りです。
フェノール類に関する正誤問題
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糖に関する正誤問題
今日は糖類についてです。
糖類は炭水化物ともよばれ,分子式は一般にCn(H2O)mで表されます。
糖類は,大きく多糖類(C6H10O5)n,ニ糖類(C12H22O11),単糖類(C6H12O6)の3つに分類され,多糖類は,酵素や酸よって,ニ糖類や単糖類に加水分解され,さらに,ニ糖類は酵素や酸よって単糖類に加水分解されます。
糖類の加水分解後の生成物と還元性の有無についておさえることがポイントです。
★次の正誤を判定せよ。
■問題① グルコース(ブドウ糖),スクロース(ショ糖),セルロースいずれも水によく溶ける。
■問題② デンプンは直鎖状の構造をしたアミロースと枝分かれの多い構造をしたアミロペクチンからなる。
■問題③ グルコースは,結晶中で五員環構造をとっている。
■問題④ ニ糖類であるスクロース(ショ糖),マルトース(麦芽糖),ラクトース(乳糖),セロビオースはすべて還元性を示す。
■問題⑤ セルロースを希硫酸で加水分解すると,マルトースを経て,グルコースを生じる。
■問題⑥ スクロースは,酵素または希酸によって,グルコースとガラクトースに加水分解する。
■問題⑦ メタノールは,グルコースを発酵させることによって得られる。
■問題⑧ ショ糖(スクロース)に濃塩酸を加えると,脱水作用により黒く炭化する。
■問題⑨ デンプンの水溶液にヨウ素ヨウ化カリウム水溶液(ヨウ素溶液)を加えると,青紫色に呈色する。
★解答
□問題①
□解答 …… 誤り。
グルコースは単糖類,スクロースは二糖類で,親水基であるヒドロキシ-OH基を多くもつため,水によく溶けます。
しかし,多糖類であるセルロースやデンプンは冷水には溶けません。
ただし,デンプンは,温水には一部が溶けます。
□問題②
□解答 …… 正しい。
デンプンは,α-グルコースを単位とし,直鎖状構造をもつアミロースと枝分かれ構造をもつアミロペクチンとから構成されています。
一方,セルロースは,β-グルコースを単位とした直鎖状の構造からなります。
□問題③
□解答 …… 誤り。
単糖類であるグルコースは,結晶中で六員環構造をとっています。
その六員環構造には,下記のようにα-グルコースとβ-グルコースとの2種類があります。
また,水溶液中では,六員環構造のα-グルコース,β-グルコースと五員環構造のアルデヒド型グルコースの3種類が平衡状態となっています。
□問題④
□解答 …… 誤り。
スクロースは,グルコースとフルクトースの還元性を示す部分が脱水縮合した構造なので,スクロース(ショ糖)だけ還元性を示さなくなります。
単糖類であるフルクトース(果糖),グルコース(ブドウ糖),ガラクトースはいずれも還元性を示し,多糖類であるセルロースやデンプンは,両方とも還元性を示しません。
□問題⑤
□解答 …… 誤り。
セルロースを希硫酸で加水分解すると,ニ糖類であるセロビオースを経て,単糖類であるグルコース(ブドウ糖)を生じます。デンプンは加水分解によって,グルコース(ブドウ糖)を生じます。
また,セルロースは酵素(セルラーゼ)によってセロビオースに加水分解され,デンプンは酵素(アミラーゼ)によってデキストリンを経て,マルトースに加水分解されます。
□問題⑥
□解答 …… 誤り。
ニ糖類であるスクロースは,酵素または希酸によって,単糖類であるグルコース
とフルクトースに加水分解されます。
C12H22O11 + H2O → C6H12O6 + C6H12O6
また,マルトースとセロビオースは酵素または希酸によってグルコースに,ラクトースは酵素または希酸によってグルコースとガラクトースに加水分解されます。
□問題⑦
□解答 …… 誤り。
メタノールではなく,エタノールが得られます。この反応をアルコール発酵といいます。
C6H12O6 → 2C2H5OH + 2CO2
□問題⑧
□解答 …… 誤り。
濃塩酸には脱水作用はなく,濃硫酸には脱水作用があります。
反応は次のようになり,ショ糖(スクロース)は炭素になります。
C12H22O11 → 12C + 11H2O
□問題⑨
□解答 …… 正しい。
この反応をヨウ素デンプン反応といい,ヨウ素やデンプンの検出に用いられます。
セルロースは反応しないので,デンプンとセルロースとを判別できます。
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アミンに関する正誤問題
今日は,アミンについてです。
アンモニアNH3の水素原子を炭化水素基で置換した構造をもつ化合物を一般にアミンといいます。
この炭化水素基がベンゼン環を含むものを芳香族アミン,それ以外を脂肪族アミンといいます。
アミンは,芳香族アミンの代表であるアニリンについての出題がほとんどなので,アニリンの性質・反応についておさえましょう。
★次の正誤を判定せよ。
■問題① アニリンは,水によく溶ける。
■問題② アミンの沸点は,同程度の分子量をもつアルカンと比べるとはるかに低い。
■問題③ アニリンの水溶液は,中性である。
■問題④ アニリンは酸化されにくく安定である。
■問題⑤ アニリンはスズ(または鉄)と濃塩酸を用いて,ニトロベンゼンを還元し,強塩基を加えることで得られる。
■問題⑥ アニリンに無水酢酸を作用させてアセチル化すると,アセトアニリドが生成する。
■問題⑦ アニリンの塩酸溶液に低温で亜硝酸ナトリウム水溶液を加えると,ニトロベンゼンが生成する。
■問題⑧ 冷却した塩化ベンゼンジアゾニウムの水溶液に,ナトリウムフェノキシドの水溶液を加えるとp-フェニルアゾフェノール(p-ヒドロキシアゾベンゼン)が生成する。
■問題⑨ アニリンに,さらし粉CaCl(ClO)・H2O水溶液を加えると,黄色に呈色する。
★解答
□問題①
□解答 …… 誤り。
低級の脂肪族アミンは,水によく溶けますが,芳香族アミンは水にはほとんど溶けなくなります。
理由は,アミノ基(-NH2)は親水基で,低級の脂肪族アミンは,分子全体に対する親水基の影響が大きいため溶けますが,芳香族アミンは,疎水基であるベンゼン環の影響が大きくなり溶けにくくなります。
□問題②
□解答 …… 誤り。
アミンの沸点は,同程度の分子量をもつアルカンと比べるとはるかに高くなり,アルコールよりは低くなります。
理由は,アミン分子間で,NとHとで水素結合が形成されるため,アルカンよりは高くなり,この水素結合は,アルコールの分子間で形成される水素結合よりは弱いためアルコールより低くなります。
ちなみに,アニリンの沸点は185℃です。
Point! 一般的な沸点の高さ(同程度の分子量)
アルコール>アミン>アルカン
□問題③
□解答 …… 誤り。
アニリンは,アンモニアと同様に,N原子の非共有電子対がH+を引きつけるため水溶液は弱塩基を示します。
アニリンは,特有のにおいをもつ油状の液体です。
また,アミノ基(-NH2)は,アンモニアNH3と同様に,酸と中和反応をして塩となります。
R-NH2 + HCl → R-NH3Cl
□問題④
□解答 …… 誤り。
アニリンは,酸化されやすく空気中に放置しただけで酸化され,徐々に赤くなります。
そのため,褐色の瓶に入れて保存します。
□問題⑤
□解答 …… 正しい。
アニリンはフェノール同様,ベンゼンから直接合成することが困難なため,ニトロベンゼンを還元して合成されます。
まず,ニトロベンゼンを還元すると,アニリン塩酸塩となります。
これに強塩基である水酸化ナトリウム水溶液を加えると,弱塩基であるアニリンが遊離します。
Point! 弱塩基の遊離反応
「弱塩基の塩」+「強塩基」→「強塩基の塩」+「弱塩基」
「強塩基の塩」+「弱塩基」→ 反応しない
□問題⑥
□解答 …… 正しい。
アニリンに無水酢酸を作用させてアセチル化すると,白色のアセトアニリドが生成します。アセトアニリドは,以前は,解熱剤として用いられていましたが,現在は,副作用が強いために使われていません。
また,アセトアニリドは,アミド結合-CONH-をもち,アミド結合をもつ物質をアミドといいます。
□問題⑦
□解答 …… 誤り。
アニリンを希塩酸に溶かし,冷却しながら亜硝酸ナトリウムNaNO2を加えると,ジアゾ化が起こり,ニトロベンゼンではなくて塩化ベンゼンジアゾニウムが生成します。
この反応のように,芳香族第一級アミンに亜硝酸を作用させ,ジアゾニウム塩をつくることをジアゾ化といいます。
ジアゾニウム塩は不安定で,容易に加水分解してしまうので,ジアゾ化は冷却下で行うこともおさえておいてください。
□問題⑧
□解答 …… 誤り。
この反応のように,ジアゾニウム塩にフェノール類や芳香族アミンを作用させてアゾ化合物をつくる反応をカップリングといます。
橙赤色のp-フェニルアゾフェノールは,アゾ基-N=N-を持ち,アゾ基を持つ物質をアゾ化合物といいます。アゾ化合物は,染料として用いられます。
□問題⑨
□解答 …… 誤り。
アニリンに,さらし粉水溶液CaCI(CIO)H2Oを加えると,次亜塩素酸イオンCIO-によって酸化され,紫色に呈色します。
この反応は,アニリンの検出に用いられます。
アニリンの酸化については,下記のように3つがありますので,まとめて覚えてください。
Point! アニリンの3つの酸化反応
① 空気中の酸素によって酸化され,褐色~赤褐色になる。
② さらし粉を加えると,紫色になる。
③ ニクロム酸カリウムを加えると,アニリンブラックになる。
タンパク質・アミノ酸に関する正誤問題
今日は,タンパク質・アミノ酸についてです。
アミノ酸は,一般式RCH(NH2)COOHで表され,アミノ基(-NH2)とカルボキシ基(-COOH)の両方をもつ化合物で,この2つの基が同じ炭素原子に結合したものをα-アミノ酸といいます。
また,タンパク質は,生命にとって重要なはたらきをしている物質で,タンパク質を希酸により加水分解すると,種々のα-アミノ酸を生じます。
アミノ酸,タンパク質の検出反応がよく出題されるので,きちんと整理して覚えましょう!
★次の正誤を判定せよ。
■問題① アミノ酸は,水と有機溶媒に溶けにくい。
■問題② アミノ酸は,他の有機化合物に比べて,融点は高い。
■問題③ アミノ酸は,酸と塩基と中和反応をする。
■問題④ アミノ酸の水溶液中では,陽イオン,双性イオン,陰イオンが常に一定の割合で平衡状態にある。
■問題⑤ すべてのα-アミノ酸は,光学異性体をもつ。
■問題⑥ アミノ酸2分子が脱水縮合して結合すると,ジペプチドが生成する。
■問題⑦ 加水分解すると,α-アミノ酸だけを生じるタンパク質を複合タンパク質という。
■問題⑧ タンパク質を加熱すると凝固する現象を変性という。
■問題⑨ ニンヒドリン反応は,すべてのタンパク質,アミノ酸で反応する。
■問題⑩ ビウレット反応は,すべてのタンパク質,アミノ酸で反応する。
■問題⑪ キサントプロテイン反応は,すべてのタンパク質,アミノ酸で反応する。
■問題⑫ システインに,NaOH水溶液を加えて加熱し,酢酸鉛(Ⅱ)の水溶液を加えると黄色の沈殿が生じる。
★解答
□問題①
□解答 …… 誤り。
アミノ酸は,結晶や水溶液中では,分子中で-COOHが放出したH+を-NH2が受け取り,双性イオンの形をとっているため,極性溶媒である水にはよく溶け,無極性溶媒である有機溶媒には溶けにくくなります。
□問題②
□解答 …… 正しい。
アミノ酸の双性イオンが互いにクーロン力で強く結合して,イオン結合を形成しているので,他の有機化合物に比べて,融点は高くなります。
□問題③
□解答 …… 正しい。
アミノ酸は,酸性を示すカルボキシ基(-COOH)と塩基性を示すアミノ基(-NH2)の両方をもった両性の化合物なので,酸と塩基の両方と反応して塩を生成します。
また,アミノ酸は,カルボキシ基を持つので,アルコールと反応してエステル結合を
アミノ基を持つので,カルボン酸や酸無水物と反応してアミド結合をつくります。
□問題④
□解答 …… 誤り。
アミノ酸の水溶液中では,陽イオン,双性イオン,陰イオンが平衡状態にあり,水溶液のpHによって,それらの割合は変化します。
□問題⑤
□解答 …… 誤り。
グリシン以外のすべてのα-アミノ酸は,分子内に不斉炭素原子が存在し,光学異性体をもちます。グリシンは,最も簡単な構造をもつα-アミノ酸です。
光学異性体をもつ最も簡単な構造をもつのは,アラニンです。
□問題⑥
□解答 …… 正しい。
2個のアミノ酸のうち,一方のアミノ酸のカルボキシ基と他方のアミノ酸のアミノ基から水分子がとれて縮合してできたアミド結合-CONH-を特にペプチド結合といいます。
ペプチド結合によって,多数のアミノ酸が縮合重合したものをポリペプチドといい,タンパク質の基本構造は,多種のアミノ酸がペプチド結合により結合したポリペプチドをもちます。
□問題⑦
□解答 …… 誤り。
加水分解すると,α-アミノ酸だけを生じるタンパク質を単純タンパク質,アミノ酸以外に色素やリン酸,核酸,糖などを生じるタンパク質を複合タンパク質といいます。
□問題⑧
□解答 …… 正しい。
熱,強酸,強塩基,重金属イオンなどにより凝固する現象を変性といいます。
タンパク質分子の立体的な構造が変化するために起こります。
□問題⑨
□解答 …… 正しい。
アミノ酸にニンヒドリン水溶液を加えて温めると,青紫~赤紫色に呈色します。
この反応は,ニンヒドリン反応とよばれ,アミノ酸の検出に利用されます。
タンパク質は,アミノ酸からなるため,ニンヒドリン反応は,すべてのタンパク質,アミノ酸で反応します。
□問題⑩
□解答 …… 誤り。
タンパク質水溶液にNaOH水溶液を加えたあとに,硫酸銅(Ⅱ)CuSO4水溶液を加えると赤紫色になります。この反応をビウレット反応といい,タンパク質の検出に用いられます。ペプチド結合が銅(Ⅱ)イオンに配位して錯イオンを形成するためで,ペプチドをもたないアミノ酸は反応しないことに注意してください。
□問題⑪
□解答 …… 誤り。
タンパク質水溶液に濃硝酸を加えて熱すると黄色になり,さらにアンモニア水を加えて塩基性にすると橙黄色になります。この反応をキサントプロテイン反応といいます。
この反応は,タンパク質を構成するアミノ酸中のベンゼン環がニトロ化されるために起こり,ベンゼン環をもたないアミノ酸は反応を示しません。
□問題⑫
□解答 …… 誤り。
Sを含むタンパク質水溶液にNaOH水溶液を加えて加熱し,酸で中和した後,酢酸鉛(Ⅱ)Pb(CH3COO)2の水溶液を加えると,酢酸鉛PbSが黒色沈殿します。
この反応は,タンパク質中の硫黄の検出に用いられます。システインは,Sを含むので反応します。
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合成樹脂に関する正誤問題
今日は合成樹脂に関する正誤問題です。
高分子化合物は,一般に分子量が1万以上の物質であり,天然に存在する天然高分子化合物と人工的に合成された合成高分子化合物に大別されます。
合成高分子は,その形態の違いから合成繊維,合成樹脂(プラスチック),合成ゴムに分類されています。
合成樹脂は,合成高分子を樹脂状にしたもので,単量体と重合体の名称と構造,反応の仕組みをおさえることがポイントです!
★次の正誤を判定せよ。
■問題① 高分子化合物を構成する低分子量の化合物をポリマーといい,生成した高分子化合物をモノマーという。
■問題② 加熱すると軟らかくなり,冷却すると硬くなる樹脂を熱硬化性樹脂という。
■問題③ プラスチックは,一般的に酸化されにくいが,酸や塩基に侵されやすいという特徴がある。
■問題④ ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリ酢酸ビニルは,すべて付加重合によって合成される。
■問題⑤ ポリスチレンを発泡させたものは,梱包材料や断熱材料として,ポリ塩化ビニルは耐水性,耐薬性に優れているため,雨どいや水道管として広く利用されている。
■問題⑥ ポリエチレンには,反応の条件により,低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンがある。
■問題⑦ フェノール樹脂は,触媒を用いてフェノールとホルムアルデヒドを加熱することで得られる。
■問題⑧ メラミン樹脂は,尿素とホルムアルデヒドの縮合重合によって得られる。
★解答
□問題①
□解答 …… 誤り。
高分子化合物を構成する低分子量の化合物を単量体(モノマー)といい,生成した高分子化合物を重合体(ポリマー)といいます。
ポリマーを構成するモノマーの数は重合度と呼ばれ,一般的な高分子化合物は,重合度が異なる様々な分子量の分子の集合体のため,高分子化合物の分子量は,平均の値(平均分子量)で表されます。
□問題②
□解答 …… 誤り。
熱硬化性樹脂ではなく,熱可塑性樹脂です。
プラスチックを,熱に対する性質により分類すると,熱を加えると軟らかくなり,冷やすと硬くなる性質の熱可塑性樹脂と,熱を加えることにより硬くなる性質の熱硬化性樹脂に分類されます。
一般に,熱可塑性樹脂は線状構造をもつ高分子化合物からなり,耐熱性に劣りますが,成形加工しやすいという特徴があります。
一方,熱硬化性樹脂は,加熱によって重合が進み,高分子鎖が網目状構造を形成するため,成形加工がしにくくなります。
□問題③
□解答 …… 誤り。
プラスチック(合成樹脂)は,酸化されにくく,酸や塩基にも侵されにくいです。
プラスチックの一般的な特徴として,
① 密度が小さいため,金属や陶磁器などに比べて軽い。
② 成形加工がしやすい。
③ 電気を通しにくい。
④ 酸や塩基にも比較的侵されにくい。
⑤ 化学的に安定で酸化されにくい。
などの特徴があります。
□問題④
□解答 …… 正しい。
付加重合とは,C=C結合をもつ化合物が付加反応によって次々に結びつく反応で,付加重合によって合成される合成樹脂は,すべてビニル基-CH2=CH-をもつ単量体からなります。
また,得られた合成樹脂は鎖状構造のため,すべて熱可塑性樹脂となります。
□問題⑤
□解答 …… 正しい。
ポリスチレンに発泡剤を加え,発泡させたものを,発泡スチロールといいます。
他の合成樹脂(熱可塑性樹脂)では,ポリエチレンは,成形加工しやすく,耐薬性を持つため,ポリ袋,ポリバケツ,飲料用ボトルなどに,
ポリプロピレンもポリエチレンと似たような性質を持ちますが,ポリエチレンより耐薬品性や機械的強度が優れているため,食品用容器,包装材料に,ポリ酢酸ビニルは,側鎖が大きくポリマーの内部にすき間が生じるため,分子鎖が動きやすく,軟化点(軟らかくなる温度)が低いことから,成形品ではなく接着剤やガムなどに利用されています。
□問題⑥
□解答 …… 正しい。
エチレンを高圧・約200℃で付加重合させると,枝分かれの多い低密度ポリエチレンが生成し,エチレンを触媒のもと常圧・約60℃で付加重合させると,枝分かれの少ない高密度ポリエチレンが生成します。
低密度ポリエチレンは,枝分かれが多いことから,透明でやわらかいため,ポリ袋に,高密度ポリエチレンは,枝分かれが少なく,不透明で硬いため,ポリバケツなどのポリ容器に用いられます。
□問題⑦
□解答 …… 正しい。
フェノール樹脂の合成方法には,フェノールにホルムアルデヒドを酸を触媒として加え,中間生成物としてノボラックを生成させた後,硬化剤を加え,加熱することにより合成する方法と,塩基を触媒として加え,中間生成物としてレゾールを生成させた後,加熱して合成する方法があります。
フェノール樹脂は,1907年にベークランド博士により,世界で初めて開発された合成樹脂です。
□問題⑧
□解答 …… 誤り。
メラミン樹脂は,メラミンとホルムアルデヒドの縮合重合によって得られます。尿素とホルムアルデヒドの縮合重合によって得られるのはユリア樹脂(尿素樹脂)です。
フェノール樹脂,メラミン樹脂,ユリア樹脂ともに立体網目構造を持つので,熱硬化性樹脂となります。また,いずれもホルムアルデヒドが単量体の1つとなっています。
繊維に関する正誤問題
今日は繊維に関する正誤問題です。
繊維には,天然繊維と化学繊維があり,
化学繊維は,再生繊維,半合成繊維,合成繊維に分けられます。
合成繊維のうち,ナイロン,ポリエステル,アクリル繊維は,他に比べて格段に
生産量が多いため,三大合成繊維と呼ばれています。
ナイロンの代表である6,6-ナイロン,6-ナイロン,
ポリエステルの代表であるポリエチレンテレフタラート,
アクリル繊維の代表であるポリアクリロニトリル
の反応の仕組み,単量体・重合体の名称と構造についておさえることが
ポイントです!
★次の正誤を判定せよ。
■問題① 植物繊維の主成分はタンパク質で,動物繊維の主成分はセルロースである。
■問題② 綿や麻は,吸湿性に優れている。
■問題③ 綿や麻は,酸には強く,絹や羊毛は塩基に強い。
■問題④ 天然繊維を溶媒に溶かしたのち,繊維状にしたものを半合成繊維という。
■問題⑤ 酢酸ビニルをけん化して得られたポリビニルアルコールに,アセトアルデヒドを作用させると,ビニロンが得られる。
■問題⑥ テレフタル酸とグリセリンが縮合重合すると,ポリエチレンテレフタラートが得られる。
■問題⑦ 6,6-ナイロンは,ε-カプロラクタムから開環重合によって得られます。
■問題⑧ アジピン酸とヘキサメチレンジアミンの混合物を加熱すると,脱水縮合が起こり6,6-ナイロンが生成する。
■問題⑨ ポリアクリロニトリルは,アクリロニトリルを縮合重合して得られる。
★解答
□問題①
□解答 …… 誤り。
植物繊維の主成分は,セルロースで,
動物繊維の主成分は,タンパク質です。
植物繊維には綿や麻,動物繊維には絹や羊毛などがあります。
Point!
植物繊維の主成分は,セルロース
動物繊維の主成分は,タンパク質
□問題②
□解答 …… 正しい。
綿や麻の主成分のセルロースは,非常に多くのヒドロキシ基-OHをもつので,
水と結びつきやすく,吸湿性に優れています。
□問題③
□解答 …… 誤り。
逆で,綿や麻は,塩基には比較的強く,酸には弱いです。
Point!
綿,麻(主成分はセルロース)……塩基には比較的強く,酸には弱い。
絹,羊毛(主成分はタンパク質)……酸には比較的強く,塩基には弱い。
□問題④
□解答 …… 誤り。
天然繊維を溶媒に溶かしたのち繊維状にしたものを,再生繊維といいます。
再生繊維には,ビスコースレーヨン,銅アンモニアレーヨンなどがあります。
半合成繊維は,セルロースやタンパク質のような天然繊維の一部を化学変化させて作った繊維で,アセテート繊維などがあります。
Point! 化学繊維の種類
合成繊維……ナイロン(6,6-ナイロン,6-ナイロン)
ポリエステル(ポリエチレンテレフタラート)
アクリル繊維(ポリアクリロニトリル)
半合成繊維……アセテート繊維
再生繊維……レーヨン(ビスコースレーヨン,銅アンモニアレーヨン)
ポリビニルアルコールを合成する場合は,ビニルアルコールを付加重合しようとても,ビニルアルコールは不安定ですぐにアセトアルデヒドに変わってしまうために合成することはできません。
そこで,ポリビニルアルコールを合成する場合は,ポリ酢酸ビニルを経由して合成します。
□問題⑤
□解答 …… 誤り。
ポリ酢酸ビニルをけん化して得られたポリビニルアルコールにホルムアルデヒドを作用させると,ビニロンが得られます。
ビニロンは日本で開発された最初の合成繊維で綿を目標に合成されたため,綿と性質が類似しています。
適度な吸湿性をもち,強度が強く,耐薬品性,耐摩擦性に優れているという特徴があります。
□問題⑥
□解答 …… 誤り。
テレフタル酸とエチレングリコールが縮合重合するとポリエチレンテレフタラートが得られます。
ポリエチレンテレフタラートは,綿を目標に合成されたので,綿と性質が類似しています。
熱に強く,水を吸収せず,洗ってもすぐに乾くという特徴をもっています。
ペットボトルのペットは,ポリエチレンテレフタラート(Polyethylene terephthalate)の略称です。
□問題⑦
□解答 …… 誤り。
6,6-ナイロンではなく,6-ナイロンです。
環状のモノマーが開環して鎖状のポリマーが生成する重合を開環重合といいます。
6-ナイロンの「6」とは原料のε-カプロラクタムの炭素数を表しています。
□問題⑧
□解答 …… 正しい。
6,6-ナイロンは,絹を目標に合成されたので,絹と性質が類似しています。
弾力性があり,摩擦に強く,丈夫で軽いという特徴があります。
6,6-とは原料の炭素数を表していて,ヘキサメチレンジアミンもアジピン酸も炭素原子数が6個ずつ含まれています。
■問題⑨
□解答 …… 誤り。
ポリアクリロニトリルは,アクリロニトリルを付加重合して得られます。
ポリアクリロニトリルは,羊毛を目標に合成されたので,羊毛と性質が類似しています。
保温性に優れ,肌触りがよいという特徴があります。
合成ゴムに関する正誤問題
合成ゴムは,石油などの原料から化学的に合成されますが,天然のゴムの構造と非常によく似ています。
合成ゴムも,合成繊維,合成樹脂と同様に単量体と重合体の名称と構造,反応の仕組みと加硫についておさえましょう!
★次の正誤を判定せよ。
■問題① 天然ゴムに酸を加えて加水分解すると,イソプレンが得られる。
■問題② 生ゴムに5~8%の窒素を加えて,加熱すると弾性が増す。
■問題③ エチレンを触媒を用いて付加重合させると,ブタジエンゴムが生成する。
■問題④ スチレンと1,3-ブタジエンを付加重合させると,スチレンブタジエンゴムが生成する。
★解答
□問題①
□解答 …… 誤り。
天然ゴムは,ポリイソプレンからできていて,酸ではなく,乾留(空気を絶って加熱分解すること)するとイソプレンC5H8が得られます。
Point! 覚えておきたい乾留による反応
天然ゴムを乾留 → イソプレン
酢酸カルシウムを乾留 → アセトン
ゴムの木の幹を傷つけると白い樹液がでてきます。この樹液をラテックスといい,これに酸と加えると凝固します。これを天然ゴム(生ゴム)といいます。
この天然ゴムを乾留するとイソプレンという無色の液体が得られ,これを放置すると再びゴム状の物質となります。
つまり,天然ゴムはイソプレンが付加重合した構造をもちます。
イソプレンやイソプレンに似た構造をもつ化合物を付加重合や共重合させると
天然ゴムに似た性質をもつ合成ゴムが得られます。
□問題②
□解答 …… 誤り。
窒素ではなく5~8%の硫黄を加えて加熱することで,弾性を増します。
この操作を加硫といい,主にポリイソプレン中の二重結合の部分で,-S-S-または-S-の架橋構造が形成されます。
□問題③
□解答 …… 誤り。
エチレンではなく,1.3-ブタジエンを触媒を用いて付加重合させると,ブタジエンゴムが生成します。
類似した反応で,クロロプレンを付加重合させるとクロロプレンゴム(CR)が生成します。
CRは,耐候性,耐摩擦性に優れますが,軟らかいので,他のゴムと混合してタイヤやチューブ,ホースなどに使われます。
□問題④
□解答 …… 誤り。
付加重合ではなく,共重合させるとスチレンブタジエンゴム(SBR)が生成します。
2種類以上の単量体を付加重合させることを共重合といいます。
SBRは,ベンゼン環を持つため強度が強く,耐老化性,耐熱性,耐摩耗性に優れ,タイヤなどに使われています。
類似した反応で,アクリロニトリルとブタジエンを共重合させるとアクリロニトリル
ブタジエンゴム(NBR)が生成します。
NBRは,耐油性、耐寒性に優れ,石油ホースなどに使われています。
入試で出題される合成ゴムは,1分子内に2つの二重結合をもつ化合物(ジエンといいます。)から付加重合して得られるブタジエンゴムとクロロプレンゴム,ジエンとビニル化合物(ビニル基をもつ化合物)が共重合して得られるスチレンブタジエンゴムとアクリロニトリルブタジエンゴムの2通りに分けられます。
次の表にまとめたので,整理してしっかり頭に入れてください。
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溶解性に関する正誤問題
今日は溶解性に関する正誤問題です。
有機化学では,水(極性溶媒)と有機溶媒(≒無極性溶媒)に対する溶解性について出題されます。
一般に,極性分子は極性溶媒である水に溶け,無極性分子は無極性溶媒であるジエチルエーテルやベンゼンなどの有機溶媒に溶けます。
似たものどうしは,よく溶けると覚えるといいでしょう!
★次の正誤を判定せよ。
■問題① アルカン,アルケン,アルキン,いずれも水,ジエチルエーテルによく溶ける。
■問題② エタノール,1-ヘキサノールは,ともに水によく溶ける。
■問題③ エチレングリコール,グリセリンは,ともに水に不溶である。
■問題④ エタノール,アセトン,アセトアルデヒド,酢酸は,水にも有機溶媒にも溶ける。
■問題⑤ エーテル,エステル,いずれも水によく溶ける。
■問題⑥ フェノールは,水にも有機溶媒にも溶けにくい。
■問題⑦ 安息香酸は,冷水には溶けないが,熱水には溶ける。
■問題⑧ 油脂とセッケンは,ともに水によく溶ける。
■問題⑨ 多糖類であるセルロースやデンプンは,水によく溶け,二糖類であるスクロースや単糖類であるグルコールは,水に溶けにくい。
■問題⑩ アミノ酸は,水にも有機溶媒にもよく溶ける。
★解答
□問題①
□解答 …… 誤り。
アルカン,アルケン,アルキンいずれも極性が極めて小さい分子のため,極性溶媒である水にはほとんど溶けず,無極性溶媒であるジエチルエーテルなどの有機溶媒にはよく溶けます。
電気陰性度とは,異なる原子が共有結合したときに,その原子が共有電子対を引きつける強さを数値化ししたもので,
大きさの順位は,F(4.0)>O(3.5)>N,Cl(3.0)>C(2.5)>H(2.1)となります。
電気陰性度に差がある原子が共有結合すると,電気陰性度の大きい方の原子が共有電子対を引きつけ,やや負の電荷を帯び,小さい方の原子がやや正の電荷を帯びます。
このようにして生じた電荷の偏りを極性といいます。
そして,極性をもつ分子を極性分子,極性をもたない分子を無極性分子といいます。
Point !
極性とは,電荷の偏りで,電気陰性度の差により生じる。
水に溶けるとは,溶質が水素結合や水和(溶質の粒子が水分子によって取り囲まれる現象)によって水分子と均一に混じり合うことです。
水分子は,折れ線構造で,水素原子が正の電荷,酸素原子が負の電荷を帯びた極性分子のため,極性分子とはお互いが電気的に引き合って水和します。
しかし,無極性分子は電荷を帯びていないため,水分子とは電気的に引き合わず水和しません。
つまり,極性分子は極性溶媒である水によく溶け,無極性分子は無極性溶媒であるジエチルエーテルやベンゼンなどによく溶けるのです。
似たものどうしは,よく溶けると覚えるといいでしょう!
Point !
極性分子 → 極性溶媒である水に溶けやすい。
無極性分子 → 無極性溶媒であるジエチルエーテルなどに溶けやすい。
□問題②
□解答 …… 誤り。
エタノールは水によく溶けますが,1-ヘキサノールは,水にあまり溶けません。
ヒドロキシ基-OHのように極性をもち,水和されやすい基を親水基,
一方,炭化水素基-CmHnのように極性をもたず,水和されにくい基を疎水基といいます。
極性分子の水に対する溶解性は,分子内の極性部分と無極性部分とのバランスによります。
アルコールは,ヒドロキシ基-OHが、水と水素結合をするため,炭素数が3個までは水によく溶けますが,炭素数が多くなるにつれて疎水基の割合が多くなり水に溶けにくくなります。
1-ヘキサノールは,炭素数が6個で水にあまり溶けません。
□問題③
□解答 …… 誤り。
エチレングリコールはヒドロキシ基(-OH)を2つもつ2価アルコール,グリセリンは,ヒドロキシ基を3つもつ3価アルコールで,分子全体に対する親水基の割合が大きいので,両方とも水によく溶けます。
□問題④
□解答 …… 正しい。
アルコール,アルデヒド,ケトン,カルボン酸は,炭素数が3~4までは水によく溶けます。
一般に,極性分子は水に溶けやすく,無極性溶媒の有機溶媒には溶けにくいのですが,エタノール,アセトン,アセトアルデヒド,酢酸は,疎水性のメチル基-CH3ももつため,有機溶媒にも溶けます。
□問題⑤
□解答 …… 誤り。
一般に,エーテル,エステルは,分子全体の極性が小さく水にはあまり溶けません。
エステル結合には極性がありますが,両端を疎水基ではさまれると水和しにくくなり水に溶けにくくなります。
ただし,エーテル,エステルでも炭素数が最小のジメチルエーテル,ギ酸メチルのみ水に溶けます。
□問題⑥
□解答 …… 誤り。
フェノール類は,ベンゼン環部分が疎水性で水には溶けにくく,エーテルなどの有機溶媒には溶けます。しかし,フェノールは,フェノール類の中で,分子全体に対する親水基(-OH)の割合が最も大きいので,水に少し溶けます。
芳香族化合物は,ベンゼン環が疎水性のため,一般に水には溶けにくくなります。
□問題⑦
□解答 …… 正しい。
安息香酸は,芳香族カルボン酸で,冷水にわずかしか溶けませんが,熱水にはかなり溶けます。
芳香族化合物の水への溶解性をまとめると次のようになります。
Point ! 芳香族化合物の水への溶解性
・一般に,芳香族化合物は,水に溶けにくく,有機溶媒に溶けやすい。
・フェノールは,水に少し溶ける。
・安息香酸は,冷水には溶けないが,熱水には溶ける。
□問題⑧
□解答 …… 誤り。
油脂は,高級脂肪酸とグリセリンとのエステルで,分子全体に対する疎水性の部分が多く占めるので,極性溶媒には溶けず,無極性溶媒である有機溶媒には溶けやすくなります。
セッケンは,高級脂肪酸のアルカリ金属塩で,塩はイオン性物質なので電荷をもつため水によく溶けます。
□問題⑨
□解答 …… 誤り。
単糖類,二糖類は親水基であるヒドロキシ基-OHを多くもつため,水によく溶けます。
多糖類であるセルロースやデンプンは,冷水には溶けません。
しかし,デンプンは,熱水につけておくと,アミロース部分が溶け出します。
ただし,アミロペクチン部分は溶けません。
デンプン分子は,α-グルコースが脱水縮合した構造からなり,らせん状(直鎖)に結合した比較的分子量の小さいアミロースと枝分かれ状の比較的分子量の大きいアミロペクチンからなります。
アミロースは,熱水には溶け出し,のり状のコロイド溶液となりますが,アミロペクチンは,枝分かれ状で分子量が大きいため,水分子が内部まで入り込めず熱水にも溶けません。
一方,セルロース分子は,β-グルコースが脱水縮合した直鎖状構造からなります。
そのため,分子同士が平行に並んで接触しやすくなり,ヒドロキシ基によって水素結合で分子同士が強く結びついているので,水には溶けにくくなります。
□問題⑩
□解答 …… 誤り。
アミノ酸は,結晶や水溶液中では,分子中で-COOHが放出したH+を-NH2が受け取り,双性イオンの形をとっているため,極性溶媒である水にはよく溶け,無極性溶媒である有機溶媒には溶けにくくなります。
沸点・融点に関する正誤問題(有機化合物)
今日は沸点・融点に関する正誤問題です。
無機化合物の多くは,イオン結晶のため一般に,沸点・融点は高くなりますが,有機化合物は,ほとんどが分子結晶で,分子間を弱い結合である分子間力が結びつけているので,無機化合物に比べて低くなります。
沸点・融点の大きさは,主に,分子同士の結合の強さによって決まり,結合が強いということは,その結合を切るために多くのエネルギー(熱)を必要とすることから,沸点・融点は高くなる)物質の構造や含まれる官能基を特定する手がかりとなることから,ある程度把握している必要があります。
★次の正誤を判定せよ。
■問題① エタンは,プロパンより沸点が低い。
■問題② 一般に.炭素数が同じ場合のアルコールの沸点の大きさは,第一級アルコール<第二級アルコール<第三級アルコール の順となる。
■問題③ 1-プロパノールは,同分子量のエチルメチルエーテルより沸点が高い。
■問題④ アルデヒドの沸点は,同程度の分子量のカルボン酸と比べると低く,アルカンと比べると高い。
■問題⑤ エステルの沸点は,同程度の分子量のアルコールと比べると高く,アルカンと比べると低い。
■問題⑥ アミンの沸点は,同程度の分子量をもつアルカンと比べるとはるかに高い。
■問題⑦ マレイン酸は,フマル酸より融点が低い。
■問題⑧ アミノ酸は,他の有機化合物に比べて,融点は低い。
■問題⑨ リノレン酸とステアリン酸の融点は,リノレン酸の方がかなり高い。
■問題⑩ 高分子化合物の融点は,低分子化合物同様に一定の融点を示す。
★解答
□問題①
□解答 …… 正しい。
一般に分子の構造が似ている分子では,分子量が大きくなるほど,分子どうしの結合に働く分子間力が大きくなるので,沸点・融点は高くなります。
エタンC2H6とプロパンC3H8は,同じ直鎖状でプロパンの方が分子量が大きいのでプロパンの方が沸点が高くなります。
例えば,メタン(分子量16)の沸点は-161.5℃.エタン(分子量30)の沸点は-89℃.プロパン(分子量44)の沸点は-42℃になります。
ここで,3つの結合について説明します。
分子間に働く力にはいくつかあり,極性分子の間では,極性による電気的な引力がはたらき,この力をクーロン力(極性引力)といいます。
また,分子中に電気陰性度の大きいF,O,N原子と電気陰性度(異なる原子が共有結合したときに,その原子が共有電子対を引きつける強さを数値化したもの)の最も小さいH原子が結合すると非常に強い極性を生じます。そして,負に帯電しているF,O,Nと,他の分子の正に帯電したHとの間とでクーロン力で強く引きつけあいます。
この結合を特に水素結合とよんでいます。
しかし,極性をもたない無極性分子でも,瞬間的な電子の偏りにより,弱い力が働きます。
この極性,無極性に関係なくすべての分子間に働く弱い結合をファンデルワールス力といいます。
このように分子間に働くクーロン力(極性引力),水素結合,ファンデルワールス力を合わせて分子間力とよんでいます。
そして,これらの結合の強さは次のようになります。
Point ! 分子間力の強さ
水素結合>クーロン力(極性引力)>ファンデルワールス力
□問題②
□解答 …… 誤り。
逆で,第一級アルコール>第二級アルコール>第三級アルコールの順となる。
理由は,第一級アルコールの-OH基は,分子の末端にあるので,分子どうしで水素結合を形成しやすいのですが,第二級アルコール,第三級アルコールは,-OH基のまわりを炭化水素基が取り囲み,水素結合を形成しずらくするためと考えられます。
一般に,分子の形が枝分かれ状より,直鎖状の方が分子間力が強く,沸点が高くなる傾向があります。
これらより,沸点・融点の大きさを判断するときのポイントは,次のようになります。
Point !
① 分子の大きさ
一般に,分子量が大きいほど沸点・融点は高くなる。
② 分子の形
一般に,枝分かれ状より直鎖状の方が沸点・融点は高くなる。
③ 極性分子か無極性分子か
無極性分子より極性分子の方がクーロン力が働き,沸点・融点は高くなる。
④ 水素結合の有無
極性分子の中でも水素結合があれば,沸点・融点は高くなる。
⑤ 常温での状態
例えば.常温で液体のAと気体のBの物質があれば,当然Aの方が沸点は高いといえる。
□問題③
□解答 …… 正しい。
アルコールである1-プロパノール(分子量60)の沸点は97℃で,エーテルであるエチルメチルエーテル(分子量60)の沸点は7℃で,1-プロパノールの方が圧倒的に高くなります。これは,1-プロパノールはヒドロキシ基-OHをもち,分子間で水素結合を形成するため,沸点が高くなります。
□問題④
□解答 …… 正しい。
例えば,アルデヒドであるプロピオンアルデヒド(分子量58)の沸点は48℃,カルボン酸である酢酸(分子量60)の沸点は118℃,アルカンであるブタン(分子量58)の沸点は-0.5℃で,アルデヒドの沸点は,カルボン酸と比べると低く,アルカンと比べると高くなります。
これは,アルデヒドはカルボン酸のようにカルボキシ基-COOHを持たないので,同分子間で水素結合が形成されないため,カルボン酸より沸点は低くなります。
しかし,カルボニル基(-CO-)には,極性があるため,無極性分子であるアルカンより沸点は高くなります。
□問題⑤
□解答 …… 誤り。
例えば,エステルであるギ酸メチル(分子量60)の沸点は32℃,アルコールである1-プロパノール(分子量60)の沸点は97℃,アルカンであるブタン(分子量58)の沸点は-0.5℃で,エステルの沸点は,アルコールと比べると低く,アルカンと比べると高くなります。
これは,エステルは,アルコールのようにヒドロキシ基-OHを持たないので,水素結合は形成されないためで,
しかし,カルボニル基(-CO-)には,極性があるため,無極性分子であるアルカンより沸点は高くなります。
□問題⑥
□解答 …… 正しい。
例えば,アミンであるプロピルアミン(分子量59)の沸点は47℃,アルカンであるブタン(分子量58)の沸点は-0.5℃で,
アミンの沸点は,同程度の分子量をもつアルカンと比べるとはるかに高くなります。
理由は,アミン分子間で,NとHとで水素結合が形成されるため,アルカンよりは高くなります。
以上,分子量が同程度の化合物の種類による沸点の高さは,次のようになります。
Point ! 一般的な沸点の高さ(同程度の分子量)
カルボン酸>アルコール>アルデヒド,ケトン,エステル,アミン>エーテル>アルカン
きっちり正確な順番を覚える必要はなく,1番がカルボン酸で,2番がアルコール,3番目が同程度で,アルデヒド,ケトン,アミン。エステル,エーテル,アルカンの順に低くなる。と覚えるくらいで十分です。
□問題⑦
□解答 …… 正しい。
マレイン酸とフマル酸(分子式C4H4O4)は,不飽和の2価のカルボン酸でシス形のマレイン酸とトランス形のフマル酸は,幾何異性体の関係にあります。
融点は,フマル酸のほうがはるかに高くなります。
理由は,マレイン酸は分子間だけで水素結合をするのに対し,マレイン酸は,分子内でも水素結合もするので,その分,分子間の水素結合の数が減少するためです。
□問題⑧
□解答 …… 誤り。
アミノ酸の双性イオンが互いにクーロン力で強く結合して,イオン結合を形成しているので,他の有機化合物に比べて,融点は高くなります。(約220℃~340℃)イオン結合は,水素結合やクーロン力よりもはるかに強い結合です。
□問題⑨
□解答 …… 誤り。
飽和脂肪酸であるステアリン酸の融点は71℃,不飽和脂肪酸であるリノレン酸の融点は-11℃で,ステアリン酸の方がかなり高くなります。分子量がほぼ変わらなく,ステアリン酸の方が高いのは,ステアリン酸は,飽和脂肪酸で,直鎖状の形をしているので,分子同士が接近しやすく,分子間力が強く働きます。
一方,不飽和脂肪酸は二重結合をもち,すべてシス形をとり,二重結合を多く持つ分子ほど折れ曲がった形となっているため,分子同士の接近が妨げられ,分子間力が弱くなり,融点は低くなります。
□問題⑩
□解答 …… 誤り。
低分子化合物は,一定の融点を示しますが,高分子化合物は規則的な配列をとらないため,一定の融点は示しません。
加熱すると軟らかくなり,変形し始める温度を軟化点といいます。
有機化合物の様々な性質に関する正誤問題
今日は有機化合物の様々な性質に関する正誤問題です。
揮発性,密度,状態,有機溶媒,匂い,色,毒性,用途などについてまとめたので,つなげてまとめて覚えてください。
★次の正誤を判定せよ。
■問題① アセトン,ジエチルエーテル,アセトアルデヒド,ベンゼン,いずれも不揮発性の液体であり,引火しやすい。
■問題② ジエチルエーテル,アセトン,ヘキサン,ベンゼン,いずれも常温・常圧で水よりも軽い液体である。
■問題③ アニリン,ニトロベンゼン,サリチル酸,いずれも油状の液体である。
■問題④ エタノール,エチレングリコール,グリセリン,いずれも粘性の高い液体である。
■問題⑤ ヘキサン,アセトン,ジエチルエーテル,いずれも有機溶媒として用いられる。
■問題⑥ アセトン,ベンゼン,アニリン,フェノール,いずれも無臭である。
■問題⑦ ニトロベンゼン,ピクリン酸,2,4,6-トリニトロトルエン,2,4,6-トリブロモフェノール,いずれも黄色の化合物である。
■問題⑧ フェノールには毒性があり,皮膚や粘膜をおかすので危険である。
■問題⑨ アセチルサリチル酸は,消炎・鎮痛剤,サリチル酸メチルは,解熱・鎮痛剤として用いられる。
★解答
□問題①
□解答 …… 正しい。
揮発とは,液体が気体となって蒸発することで,アセトン,ジエチルエーテル,アセトアルデヒド,ベンゼンは,いずれも揮発性の液体で引火しやすいため,火気を避けて取り扱う必要があります。
他に,メタノール,エタノール,分子量の小さいエステルも揮発性の液体です。
Point! 主な揮発性の液体
メタノール,エタノール,アセトアルデヒド,アセトン,
分子量の小さいエーテル・エステル,ベンゼン
□問題②
□解答 …… 正しい。
気体ではないので,水の分子量(18)と比較して考えることはできません。
液体の場合は,密度が水の密度1.0 g/cm3より小さければ,水より軽く,大きければ重くなります。
一般に,常温・常圧で液体である有機化合物の大部分は水よりも軽くなります。
水より重い有機化合物は,ニトロベンゼン,アニリン,サリチル酸メチルの3つをおさえておきましょう。
Point!
液体で水よりも密度の大きい主な有機化合物
ニトロベンゼン,アニリン,サリチル酸メチル
□問題③
□解答 …… 誤り。
アニリン,ニトロベンゼンは油状の液体ですが,サリチル酸は無色(白色)の結晶です。
油状の液体は,他にサリチル酸メチルなどがあり,上記の水よりも密度の大きい有機化合物と3つとも同じになります!ニトロベンゼン,アニリン,サリチル酸メチルは油状の液体で水よりも密度が大きいと覚えましょう!
Point! 主な油状の液体
ニトロベンゼン,アニリン,サリチル酸メチル
□問題④
□解答 …… 誤り。
エチレングリコール,グリセリンともに粘性が高いですが,エタノールは粘性が高くありません。お酒を考えてみればわかりますね。
エチレングリコールは,ポリエチレンテレフタラートの原料に,グリセリンは,油脂の構成成分で,ニトログリセリンの製造や化粧品や医薬品にも用いられます。一般に,高分子化合物の溶液や融解液も粘性を持ちます。
無機化合物では,硫酸が粘性を持つことをおさえておきましょう。
□問題⑤
□解答 …… 正しい。
有機溶媒とは水に溶けない物質を溶かす液体の有機化合物で,主に,ヘキサン,アセトン,ジエチルエーテル,酢酸エチル,四塩化炭素などがあります。
Point! 主な有機溶媒
ヘキサン,アセトン,ジエチルエーテル,酢酸エチル,四塩化炭素
□問題⑥
□解答 …… 誤り。
アセトン,ベンゼン,アニリン,フェノール,いずれも特有の匂いをもちます。
アセトンは,シンナーのような匂いと表現されることもあります。
覚えておきたい匂いのある有機化合物についてまとめたので,整理して覚えてください。
□問題⑦
□解答 …… 誤り。
ニトロベンゼンは淡黄色の液体,ピクリン酸(2,4,6-トリニトロフェノール),2,4,6-トリニトロトルエン(TNT)は,黄色の結晶ですが,2,4,6-トリブロモフェノールは,白色の結晶です。一般に,ニトロ基-NO2をもつものは黄色のものが多いです。
有機化合物で登場する他の黄色の化合物は,ヨードホルムCHI3がありましたね。
白色の化合物は,銀アセチリドAgC≡CAg,アセトアニリドをおさえておきましょう。
□問題⑧
□解答 …… 正しい。
フェノールが皮膚につくと,火傷のようにただれるので即座に洗い流さないと危険です。ギ酸も酸性が強く,皮膚につくと,水泡などができてしまうので注意が必要です。他に毒性のある主な有機化合物についてまとめたので,整理して覚えてください。
Point! 主な毒性のある有機化合物
メタノール,ホルムアルデヒド,アセトアルデヒド,
ギ酸,ベンゼン,フェノール
□問題⑨
□解答 …… 誤り。
逆で,アセチルサリチル酸が解熱・鎮痛剤,サリチル酸メチルは,消炎・鎮痛剤として用いられます。アセトアニリドにも解熱・鎮痛作用があり,かつては医薬品として使用されていましたが,現在では副作用のため使われていません。他に入試で登場する主な医薬品についてまとめたので,つなげて覚えてください。
異性体に関する正誤問題
今日は,異性体に関する正誤問題です。
異性体問題は最も出題されるThemeの1つとなっています。
物質や構造を特定するために,官能基の検出がポイントとなり,官能基の検出反応
とからめて出題されることが多いので,検出反応とつなげてまとめて覚えてください。
★次の正誤を判定せよ。
■問題① 同じ炭素数のシクロアルカンとアルキンは,互いに構造異性体である。
■問題② 分子式がC5H12であるアルカンには,4種類の構造異性体が存在する。
■問題③ 分子式がC3H8Oの化合物には,3種類の構造異性体が存在する。
■問題④ 分子式がC4H10Oの化合物には,アルコール,エーテルともに3種類ずつの構造異性体が存在する。
■問題⑤ 分子式がC4H4O4の不飽和二価カルボン酸には,1組の光学異性体が存在する。
■問題⑥ o-キシレン,m -キシレン,p-キシレンのベンゼン環についている水素原子1個を臭素原子1個で置き換えたとき,最も多くの構造異性体が生じるのは,o-キシレンである。
■問題⑦ トルエンのベンゼン環に直接結合している水素原子1個をメチル基(-CH3)に置き換えると,2つの構造異性体が存在する。
■問題⑧ エタノールとジメチルエーテル,プロピオンアルデヒドとアセトン,プロピオン酸と酢酸メチルは,それぞれ構造異性体の関係にある。
■問題⑨ 乳酸とグリシンは,ともに光学異性体がある。
■問題⑩ 炭素数が6以下のアルカンには,不斉炭素原子は存在しない。
■問題⑪ プロピレン(プロペン)に塩素1分子が付加した化合物には,光学異性体が存在しない。
★解答
□問題①
□解答 …… 誤り。
シクロアルカンとアルケンの一般式は,ともにCnH2nで構造異性体の関係にあります。
アルキンの一般式は,CnH2n-2です。
分子式は同じであるが,性質が異なる化合物を異性体といいます。
異性体には,構造式が異なる構造異性体,立体的な配置が異なる立体異性体があり,さらに,立体異性体には,炭素間の二重結合に基づく幾何異性体,不斉炭素原子の存在に基づく光学異性体などがあります。
□問題②
□解答 …… 誤り。
次のように,3種類の構造異性体が存在します。
□問題③
□解答 …… 正しい。
次のように,アルコール2種類,エーテル1種類の構造異性体が存在します。
□問題④
□解答 …… 誤り。
次のように,アルコールは4種類,エーテルは3種類の構造異性体が存在します。
□問題⑤
□解答 …… 誤り。
光学異性体ではなく,次のように1組の幾何異性体が存在します。
C=C二重結合に結合した置換基の配置が異なる異性体を幾何異性体といい,置換基が二重結合をはさんで同じ側にあるものをシス形,反対側にあるものをトランス形といいます。
つまり,マレイン酸はシス形,フマル酸はトランス形になります。
幾何異性体はC=C二重結合が回転できないためにでき,下図の原子団①~④が①≠②かつ③≠④の場合に存在します。
入試に登場する代表的な幾何異性体は,2-ブテン(シス-2-ブテン,トランス-2-ブテン)などがあります。
□問題⑥
□解答 …… 誤り。
最も多くの構造異性体が生じるのは,m-キシレンです。
置き換えたときの構造異性体の数は,下記のようにm-キシレンが3個,o-キシレンは2個,p-キシレンは1個存在します。
□問題⑦
□解答 …… 誤り。
次にように,o-キシレン,m-キシレン,p-キシレンの3つの構造異性体が存在します。
□問題⑧
□解答 …… 正しい。
次のように,それぞれ互いに構造異性体の関係にあります。
脂肪族化合物(炭化水素基はアルキル基とする)の一般式は
アルコールとエーテル → CnH2n+2O
アルデヒドとケトン → CnH2nO
カルボン酸とエステル → CnH2nO2
となり,アルコールとエーテル,アルデヒドとケトン,カルボン酸とエステルは,互いに構造異性体の関係にあります。
□問題⑨
□解答 …… 誤り。
乳酸には光学異性体が存在しますが,グリシンには存在しません。
光学異性体とは,分子内に不斉炭素原子をもつ鏡像の関係にある立体異性体をいいます。
不斉炭素原子とは,4種が異なる原子または原子団と結合している炭素原子のことをいい,不斉炭素原子をもてば,必ず光学異性体をもちます。
乳酸は,次のような構造をし光学異性体が存在します。
α-アミノ酸であるグリシンは,中心の炭素原子に2つの水素原子が結合しているため光学異性体をもちません。
グリシン以外のすべてのα-アミノ酸は,光学異性体をもち,光学異性体をもつ最も簡単な構造をもつのは,アラニンでしたね。
□問題⑩
□解答 …… 正しい。
炭素数が7以上のアルカンから,次のように不斉炭素原子Cが存在するものがあります。
□問題⑪
□解答 …… 誤り。
プロピレンに塩素1分子が付加した化合物は,次のようになり不斉炭素原子をもつため,光学異性体が存在します。
半金属と両性元素
今日は,半金属と両性元素の違いや意味をよくわかっていない人がいるので解説します。
両性元素には,アルミニウムAl,亜鉛Zn,スズSn,鉛Pbなどがあり,
酸とも塩基とも反応するので,酸・塩基的な性質が中間にあるという意味で両性元素といいます。
半金属には,ケイ素Si,ホウ素B,ゲルマニウムGeなどがあり,単体の導電性が金属と非金属の中間にある意味で半金属といいます。
両者は,似ているようで違うのでくらべて覚えてください。
また,両性元素の酸・塩基との反応を問う問題は超頻出ですので,しっかりおさえてくださいね!
毒に関する迷信
「蜂に刺されたら、おしっこをかけるといい」
というような話を聞いたことがある人は多いと思いますが、
これって本当でしょうか?
これは実は大間違い!
これは蜂の毒が酸性で、この酸性の成分を尿に含まれているアルカリ性のアンモニアで中和することによって解毒されるというのが、もっともらしい説明なのですが、
この説明には2つの誤りがあります。
1つ目の誤りは、蜂の毒は酸性ではなく、ほぼ中性に近いということ。
2つ目の誤りは、驚くかもしれませんが、なんと人間の尿にはアンモニアは含まれていないということ!
アンモニアは非常に毒性が強いので、尿にアンモニアが含まれていたら大変です!
尿を飲むなんていう、まことしやかな健康法もありますし
でも、尿ってアンモニア臭がするよね?
って思われた方!
そうです!!
あのくっさ~い臭いは、確かにアンモニアの臭いです!
しかし、そのアンモニアは一旦、排出された尿が細菌によって時間をかけて分解されて作られているのです。
実験してみたい方は、排出したばかりの尿と暫くおいておいた尿の臭いを嗅いでみてください。
明らかに違うはずです。
くれぐれも、暫く置いておいた尿を間違えて飲まないようにしてくださいね。
新商品の紹介「溶液の濃度に関する問題 完全攻略チャート&過去問解説集」
新商品「溶液の濃度に関する問題 完全攻略チャート&過去問解説集」の紹介です。
溶液中に含まれる溶質の割合を濃度といい,その表し方には,質量パーセント濃度,モル濃度,質量モル濃度などがあります。
質量モル濃度は,沸点上昇・凝固点降下など,
モル濃度は,浸透圧をはじめ,溶液どうしの反応(酸・塩基,酸化還元反応)で頻繁に使われます。
定義はちゃんと頭に入っていますか?
■質量パーセント濃度
・溶液中に溶けている溶質の質量を百分率で表した濃度。溶液100gあたりの溶質の質量[g]。
■モル濃度
・溶液1L中に溶けている溶質の物質量[mol]を表した濃度。
また,溶質の物質量[mol]を溶液の体積[L]で割ったもの。
浸透圧をはじめ,化学で最も頻繁に使われます!
例えば,水1Lに塩化ナトリウムNaCl (式量=58.5)58.5gを溶かしても1[mol/L]とはならない。全体積が1Lになるとは限らないので。
■質量モル濃度
・溶媒1kg中に溶けている溶質の物質量[mol]を表した濃度。また溶質の物質量[mol]を溶媒の質量[kg]で割ったもの。
沸点上昇・凝固点降下などで使われます!溶液ではなく溶媒の質量となることに注意!
ですね。
濃度の変換には
モル濃度(mol/L) → 質量モル濃度(mol/kg)の変換
質量パーセント濃度(%) → 質量モル濃度(mol/kg)の変換
モル濃度(mol/L) → 質量パーセント濃度(%)の変換
質量パーセント濃度(%) → モル濃度(mol/L)の変換
の4つがよく出題され,どの場合にどう解くかを
整理しておさえることがポイントです!
チャートは出題タイプを
Ⅰ.質量パーセント濃度に関する問題タイプ
Ⅱ.モル濃度に関する問題タイプ
Ⅲ.質量モル濃度に関する問題タイプ
Ⅳ.濃度の変換タイプ
Ⅴ.水和物の濃度タイプ
Ⅵ.希釈したときの濃度タイプ
Ⅶ.混合溶液の濃度タイプ
の7つに分類し、詳しくわかりやすくまとめています!
化学基礎でも出題範囲となっているので,チャートと過去問解説集で確実にマスターしてほしいと思います。
□収録出題校
学習院大学(2011年)、熊本大学(2011年)、関西大学(2012年)、和歌山大学(2011年)、福島大学(2011年)、東京理科大学(2011年)、岐阜大学(2011年)、日本女子大学(2011年)
センター試験 本試験:2009本、2007本 追試験: 2009追、2005追、2003追
(A4高級厚紙 全4枚+A4普通紙 全14枚)
★サンプルです。
商品は下記よりお買い求めいただけます。
「恋する化学」
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木の下のハゲおやじ
「速さ=距離÷時間」の公式を
ドラえもんの鈴のような図を使って
覚える方法を教わった人も多いと思います。
しかし,この図の「き」「は」「じ」
の正しい位置を覚えないと宝の持ち腐れとなって
しまいます。
いろいろな覚え方はありますが、これまで
これだ!というような覚え方とは出合っていませんでした。
そんなある日、教え子の小学生が
「木の下のハゲおやじ」
と言ってこの図を書いていました。
「何?『木の下のハゲおやじ』って?」
と聞くと
「知らないの?」
と得意満面の顔でその意味を教えてくれました。
「木『き』の下の『は』ゲおや『じ』」
「なるほど!!」
なんというインパクトのある面白い覚え方なのだと
思わず大笑いしていました。
その日以来、木を見ると地面で昼寝しているハゲ
おやじが浮かんできてしまいます。
恐るべし!
「木の下のハゲおやじ」
近況報告
ご無沙汰しています。
現在、化学の参考書の執筆をしています。
有機化学編はすでに書き終え、無機化学編を執筆中です。
これまで作ってきた化学教材の集大成です。
自分が受験生だったら、どんな参考書がほしいだろうか
を常に頭におき、妥協せず格闘しております。
どこが出題されるのか、最新の受験問題を徹底的に分析し、
これまでになかったまとめかたで、わかりやすい参考書になっていると思います。
今しばらくお待ちください。