今日は,ベンゼンについてです。
ベンゼンの分子式はC6H6で,ベンゼン環をもつ物質を芳香族化合物といいます。
ベンゼンの二重結合は芳香族性により安定なので,アルケンやアルキンとは異なり,付加反応よりも置換反応を起こしやすくなります。
ベンゼンは反応だけでなく,性質や構造もよく問われるのでしっかりおさえましょう。
★次の正誤を判定せよ。
■問題① ベンゼンは,無極性分子のため水に溶けない。
■問題② ベンゼンは,無揮発性で無毒である。
■問題③ ベンゼンを構成するすべての原子は,同一平面上にある。
■問題④ ベンゼン環とメチル基の炭素-炭素間の結合距離はベンゼン環部分の炭素-炭素間の結合距離よりも短い。
■問題⑤ ベンゼンの水素原子2個をメチル基で置換した化合物には,2種類の異性体が存在する。
■問題⑥ ベンゼンは,空気中で燃やすと多量のすすを出す。
■問題⑦ エチレンに触媒を用いて3分子を重合させると,ベンゼンになる。
■問題⑧ ベンゼンに濃塩酸を加えて加熱すると,置換反応が起こり, ベンゼンスルホン酸が生成する。
■問題⑨ ベンゼンに濃硝酸と濃硫酸の混合物を加えて温めると,ニトロベンゼンが生成する。
■問題⑩ ベンゼンに硫酸と塩化アルミニウムAlCl3の触媒下で,プロピンを付加させると,クメンが生成する。
■問題⑪ ベンゼンに鉄粉の存在下で,塩素を作用させると,ヘキサクロロシクロヘキサンが生成する。
■問題⑫ ベンゼンに紫外線の照射下で塩素を作用させると,クロロベンゼンが生成する。
■問題⑬ ベンゼンにニッケルを触媒として,水素を付加させると,ヘキサンが生成する。
■問題⑭ ベンゼンは,触媒の存在下で空気酸化されて,無水フタル酸が生成する。
■問題⑮ ナフタレンは,触媒の存在下で空気酸化され,無水フタル酸が生成する。
★解答
□問題①
□解答 …… 正しい。
ベンゼンは,無極性分子のため水に溶けにくいですが,無極性溶媒である有機溶媒にはよく溶けます。
以前は,有機溶媒として用いられてきましたが,毒性が強いため現在ではほとんど使われません。
□問題②
□解答 …… 正しい。
ベンゼンは,揮発性で特有の芳香をもつ液体で,引火しやすく有毒です。
□問題③
□解答 …… 正しい。
ベンゼンの6個の炭素原子は正六角形構造で,同一平面上にあります。水素原子も同一平面上で,結合角はすべて120°となっています。
シクロヘキサンC6H12は,いす形,舟形の立体構造でしたね。
□問題④
□解答 …… 誤り。
ベンゼン環の炭素原子間の6個の結合は,単結合と二重結合が交互に繰り返された構造を持ち,炭素間の結合は単結合と二重結合が瞬間的に行き来しています。
このような状態を共鳴といい,炭素間の結合は単結合と二重結合の中間的な性質を示します。
炭素間の結合の強さは,
三重結合>二重結合>ベンゼン環>単結合となり,
炭素間の結合距離は,
単結合>ベンゼン環>二重結合>三重結合となります。
本問は,ベンゼン環とメチル基の炭素-炭素間の結合は
単結合なので,ベンゼン環部分の炭素-炭素間の結合距離より長くなります。
Ponit! 炭素間の結合距離
C-C(1.54nm)>ベンゼン環(1.4nm)>C=C(1.34nm)>C≡C(1.20nm)
□問題⑤
□解答 …… 誤り。
ベンゼンのH原子2個をメチル基(-CH3)に置換した芳香族炭化水素をキシレンといい,キシレンには,3種類(o-キシレン,m-キシレン,p-キシレン)の異性体が存在します。
1つのメチル基から最も近い位置をオルト位(o- ),1つ離れた位置をメタ位(m-),最も離れた位置をパラ位(p-)といいます。
□問題⑥
□解答 …… 正しい。
ベンゼンC6H6は,アセチレンC2H2と同じ組成式で炭素含有率が大きいため,空気中で燃やすと多量のすすを出します。
Ponit!
多量のすすとあったら,ベンゼンとアセチレン!
□問題⑦
□解答 …… 誤り。
エチレンではなく,アセチレンに触媒を用いて3分子を重合させると,ベンゼンが生成します。
□問題⑧
□解答 …… 誤り。
濃塩酸ではなく,濃硫酸を加えて加熱すると,ベンゼンスルホン酸が生成します。
ベンゼンの水素原子がとスルホ基(-SO3H)で置き換わる反応をスルホン化といい,ベンゼンスルホン酸は,白色(無色)の結晶でスルホ基は,硫酸同様に強酸性を示します。
Ponit! 酸の強さ
塩酸>硫酸>スルホン酸>カルボン酸>炭酸>フェノール類
□問題⑨
□解答 …… 正しい。
濃硝酸と濃硫酸の混合物を混酸といい,約60℃で反応させると,ニトロベンゼンが生成します。ベンゼンの水素原子がニトロ基(-NO2)で置き換わる反応をニトロ化といい,ニトロベンゼンは,淡黄色の液体で,中性の化合物です。
□問題⑩
□解答 …… 誤り。
プロピンC3H4ではなく,プロピレンC3H6を付加させると,クメンが生成します。
さらに,クメンを空気酸化させ,クメンヒドロペルオキシドとし,希硫酸で分解するとアセトンとフェノールが生成します。
この方法をクメン法といい,現在日本では,この方法でフェノールが製造されています。
プロピレンの二重結合にベンゼンが付加するということに注意してくださいね!
□問題⑪
□解答 …… 正しい。
ベンゼンに鉄粉Feの存在下で,塩素Cl2を作用させると,置換反応(塩素化)が起こり,クロロベンゼンが生成します。
ベンゼンの水素原子が-Clで置き換わる反応を塩素化(-Brで置き換わる反応を臭素化)といい,一般に,ハロゲンで置き換わる反応をハロゲン化といいます。
□問題⑫
□解答 …… 誤り。
ベンゼンに紫外線(or光)の照射下で塩素Cl2を作用させると,付加反応が起こりヘキサクロロシクロヘキサンが生成します。
ベンゼンと塩素の反応は,「鉄粉の存在下」と「光・紫外線の存在下」では生成する物質は異なります。
超頻出なので,くらべてつなげて覚えてください。
Ponit! ベンゼンとCl2との反応
鉄粉の存在下→ 置換反応 → クロロベンゼン
光・紫外線の照射下 → 付加反応 → ヘキサクロロシクロヘキサン
□問題⑬
□解答 …… 誤り。
問題⑫と同様に,付加反応が起こり,ヘキサンではなくシクロヘキサンが生成します。
ベンゼンは,安定な構造のため,付加反応は起こりにくいのですが,ニッケルNiなどの触媒の下では,付加反応を起こします。
□問題⑭
□解答 …… 誤り。
ベンゼンを酸化バナジウム(Ⅴ)V2O5などの触媒の存在下で酸化すると,無水フタル酸ではなくて,無水マレイン酸が生成します。
ベンゼンは安定な構造をもつため,酸化されにくいのですが,触媒の存在下では,空気酸化されて,ベンゼン環が開裂します。
□問題⑮
□解答 …… 正しい。
問題⑭と同様に,触媒の存在下では,空気酸化されて,ベンゼン環の1つが開裂します。
ナフタレンは,特有のにおいをもつ無色の結晶で,昇華性があり防虫剤として用いられることも覚えてください。
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ベンゼンに関する正誤問題
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