今日は,フェノール類についてです。
ベンゼン環の炭素原子に直接ヒドロキシ基-OHが結合した化合物を総称してフェノール類と呼びます。
アルコールのOH基をアルコール性ヒドロキシ基,フェノール類のOH基をフェノール性ヒドロキシ基といい,性質は異なります。
ベンゼンからのフェノールの製法,フェノールからの誘導体に関する問題は,超頻出となっているので,しっかり整理しておさえましょう。
★次の正誤を判定せよ。
■問題① フェノール類は,水には溶けにくく,有機溶媒には溶けやすい。
■問題② フェノール類は,分子量が同程度の芳香族炭化水素と比べると融点・ 沸点は低い。
■問題③ フェノールは,常温・常圧で液体である。
■問題④ フェノールは,水酸化ナトリウム水溶液と反応して,塩となって溶ける。
■問題⑤ フェノールに,炭酸水素ナトリウム水溶液を加えても反応しない。
■問題⑥ フェノールにNaを加えると,ナトリウムフェノキシドが生成し,水素が 発生する。
■問題⑦ メンを空気酸化してクメンヒドロペルオキシドとし,希硫酸で分解するとフェノールとアセトンが生成する。
■問題⑧ クロロベンゼンを高温・高圧下で,水酸化ナトリウム水溶液と反応させてナトリウムフェノキシドとし,水溶液を塩基性にするとフェノールが得られる。
■問題⑨ ベンゼンスルホン酸ナトリウムの結晶を,水酸化ナトリウムの固体とともにアルカリ融解させると,ナトリウムフェノキシドが生成する。
■問題⑩ フェノールを無水酢酸と反応させると,アセチルサリチル酸が生成する。
■問題⑪ フェノールの水溶液に臭素水を加えると,ブロモベンゼンが生成する。
■問題⑫ フェノールに濃硝酸と濃硫酸の混合物を加えて加熱すると,ニトロ化され,ニトロベンゼンが生成する。
■問題⑬ フェノール,サリチル酸,アセチルサリチル酸,クレゾール,1-ナフトール
に塩化鉄(Ⅲ)水溶液を加えると,それぞれ呈色する。
★解答
□問題①
□解答 …… 正しい。
フェノール類は,ベンゼン環部分が疎水性なので水には溶けにくく,エーテルなどの有機溶媒には溶けます。
しかし,フェノールは,フェノール類の中で,分子全体に対する親水基(-OH)の割合が最も大きいので,水に少し溶けます。
Point! 芳香族化合物の水への溶解性
・一般に,芳香族化合物は,水に溶けにくく,有機溶媒に溶けやすい。
・フェノールは,水に少し溶ける。
・安息香酸は,冷水には溶けないが,熱水には溶ける。
□問題②
□解答 …… 誤り。
フェノール類は,分子量が同程度の芳香族炭化水素と比べると融点・沸点は,かなり高くなります。理由は,-OH部分が分子間で水素結合をするためです。
□問題③
□解答 …… 誤り。
フェノール(融点は41℃)は,常温・常圧で,無色の結晶(固体)です。
フェノール類は,分子量が同程度の芳香族炭化水素と比べると融点・沸点は,かなり高いので,ほとんどが常温で結晶です。
フェノールは,特有の刺激臭をもち,皮膚をおかすので,手などにつかないように取り扱いには十分注意が必要です。
□問題④
□解答 …… 誤り。
フェノールは水にわずかに溶け,一部が電離して水素イオンH+を放出するため,弱酸となります。よって,塩基である水酸化ナトリウム水溶液とは中和反応して,ナトリウムフェノキシドとなって溶けます。
□問題⑤
□解答 …… 正しい。
酸の強さは,炭酸>フェノール のため,弱酸であるフェノールに,強酸の塩である炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)水溶液を加えても反応しません。
□問題⑥
□解答 …… 正しい。
フェノールもアルコールと同様に,ヒドロキシ基-OHをもつため金属ナトリウムと反応して,水素を発生します。
この反応は,有機化合物中の-OH基の検出に用いられます。
□問題⑦
□解答 …… 正しい。
この方法をクメン法といいましたね。クメン法はアセトンの工業的製法の一つでもあることもおさえてください。
Point! アセトンの製法
① 2-プロパノールの酸化
② プロペンの空気酸化
③ アルケン(メチルプロペンなど)のオゾン酸化
④ プロピンへの水の付加
⑤ 酢酸カルシウムの乾留
⑥ クメン法の副産物
□問題⑧
□解答 …… 誤り。
水溶液を塩基性ではなく酸性にすると,ナトリウムフェノキシド(弱酸の塩)から弱酸であるフェノールが遊離し,得られます。
フェノールの製法の1つです。
□問題⑨
□解答 …… 正しい。
水酸化ナトリウムの固体とともに加熱し,融解状態で反応させることをアルカリ融解といい,生成したナトリウムフェノキシドに酸を加えるとフェノールが遊離します。
フェノールは,ベンゼンから直接合成することが困難なため,ベンゼンの一置換体から作られます。
□問題⑩
□解答 …… 誤り。
アセチルサリチル酸ではなく,酢酸フェニルが生成します。
フェノール性ヒドロキシ基のHとアセチル基CH3CO-が置換する反応でアセチル化といいましたね。
アセチルサリチル酸は,サリチル酸と無水酢酸を反応させると生成しますね。
□問題⑪
□解答 …… 誤り。
ブロモベンゼンではなく,2,4,6-トリブロモフェノールが白色沈殿します。
ベンゼンに臭素水を加えても触媒がなければ反応しませんが,フェノールはベンゼンより反応性が大きいので,置換反応を受けやすく,臭素水を加えるとすぐに,2,4,6-トリブロモフェノールが白色沈殿します。この反応はフェノールの検出にも用いられます。
Point!
ベンゼン……反応しない。(鉄粉などの触媒下ではブロモベンゼンが生成)
フェノール……2,4,6-トリブロモフェノールが白色沈殿
□問題⑫
□解答 …… 誤り。
ニトロベンゼンではなく,ピクリン酸(2,4,6-トリニトロフェノール)が黄色沈殿します。
ニトロベンゼンは,ベンゼンに濃硝酸と濃硫酸の混合物を加えて加熱すると,生成しますね。
似たような反応をまとめたので,つなげて覚えてください。
□問題⑬
□解答 …… 誤り。
フェノール,サリチル酸,クレゾール,1-ナフトールは,すべてフェノール性ヒドロキシ基-OHを持つフェノール類で,塩化鉄(Ⅲ)FeCl3水溶液を加えると,紫色(青紫~赤紫)に呈色します。しかし,アセチルサリチル酸は,フェノール性ヒドロキシ基を持たないので呈色はしません。
この反応は,フェノール類の検出に用いられます。
※上記,アルコールは中性,フェノール類は弱酸性の誤りです。
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フェノール類に関する正誤問題
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