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アルカリ金属に関する正誤問題

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今日は,アルカリ金属に関する正誤問題です。

周期表の1族に属する元素には,水素H,リチウムLi,ナトリウムNa,カリウムK,ルビジウムRb,セシウムCs,フランシウムFrがあり,水素を除く元素をアルカリ金属とよびます。

アルカリ金属の単体は,いずれも銀白色の光沢をもち,密度が低く,軟らかく,融点が低いという特徴を持ちます。
また,1族の原子は1個の最外殻電子をもち,1個の電子を放出して1価の陽イオンになりやすいため反応性(還元力)が高くなります。

★★★アルカリ金属を学習する上でのポイント★★★
① アルカリ金属の代表であるナトリウムの単体,酸化物,水酸化物, 炭酸水素塩,炭酸塩の性質・反応を整理しておさえる。
② 原子番号の増加に対しての原子半径,密度,融点,イオン化エネルギーの大小傾向とその理由を理解する。
③ 炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの共通点・相違点を比較して覚える。
④ 水酸化ナトリウム,炭酸ナトリウムの工業的製法は頻出なので,きちんと反応の流れを理解する。


☆それでは,問題に挑戦してみてください。

■Q1
単体のナトリウムは,塩化ナトリウムの融解塩電解によって製造される。○or×


■Q2
一般に,アルカリ金属の原子半径,密度,イオン化エネルギーは原子番号が大きくなるほど大きくなり,融点は,原子番号が大きくなるほど低くなる。→ ○or×


■Q3
アルカリ金属の単体は,乾いた空気中でもすぐに酸化されて,酸化物が生成する。○or×


■Q4
アルカリ金属の単体は,常温の水と反応して水酸化物になり,酸素を発生する。○or×


■Q5
ナトリウムの化合物を,白金線につけてバーナーの外炎に入れると,赤色を示す。○or×


■Q6
アルカリ金属の酸化物は,水と反応して水酸化物になり,酸と反応して塩を生成する。○or×


■Q7
酸化ナトリウムは二酸化炭素を吸収し,炭酸ナトリウムが生成する。○or×


■Q8
水酸化ナトリウムは,工業的には,炭酸ナトリウム水溶液の電気分解を利用して製造される。○or×


■Q9
水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの固体は,空気中に放置すると,水蒸気を吸収し表面が次第に溶け出す。○or×


■Q10
水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの固体や水溶液は,二酸化炭素とは反応しない。○or×


■Q11
炭酸ナトリウムは,工業的には,水酸化ナトリウムの水溶液にアンモニアと二酸化炭素を吹き込み,炭酸水素ナトリウムの沈殿をつくり,これを集めて加熱することによりつくられる。


■Q12
炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムは,いずれも水によく溶け,その水溶液は酸性を示す。


■Q13
炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムをそれぞれ加熱すると,いずれも容易に熱分解し,二酸化炭素が発生する。


■Q14
Na2CO3・10H2Oを空気中に放置すると,水和水を失ってNa2CO3・H2Oになる。このような現象を風解という。







以下は解答と解説です。

□A1→ ○

☆解説
アルカリ金属・2族元素の単体は自然界には存在せず,融解塩電解によって得られます。
融解塩電解とは,イオン結合性の化合物を加熱し,融解液(液体)の状態にして電気分解することをいいます。
例えば,陽極に黒鉛C,陰極に鉄Feを用いて塩化ナトリウムNaClを融解して電気分解すると,陰極には単体のナトリウムNaが析出します。

☆融解塩電解を用いる理由
イオン化傾向(下記参照)が水素より大きい金属塩の水溶液を電気分解すると,水溶液中の水素イオンH+の方が電子を受け取ってしまい(水素H2が発生),金属の単体は析出しません。
そこで,水H2O(水素イオン)が存在しない金属化合物の融解液(液体)を電気分解することで,金属イオンの方が電子を受け取ることができ,金属の単体が析出します。

☆イオン化傾向
イオン化傾向とは,金属の単体が水溶液中で電子を放出して陽イオンになろうとする性質で,その順序をイオン化列といい,次のようになります。
アルカリ金属1



□A2→ ×

☆解説
原子半径,密度(一部で逆転),融点についての記述は合っていますが,イオン化エネルギーは原子番号が大きくなる(周期表の下に行く)ほど小さくなります。

☆原子半径
アルカリ金属に限らず,同族間の原子半径は原子番号が大きくなるほど大きくなります。これは,最外殻電子がより外側の電子殻に存在するためです。

☆密度
一般に,アルカリ金属間の密度は原子番号が大きくなるほど大きくなります。(ただし,ナトリウムとカリウムは逆)
リチウム,ナトリウム,カリウムの密度は,水の密度(1.00g/cm3)より小さいため水に浮きます。金属単体中で密度が1.00g/cm3以下となるのは,Li(0.53g/cm3),Na(0.97g/cm3),K(0.86g/cm3)のみです。


☆イオン化エネルギー
イオン化エネルギーとは,一般に原子から1個の電子を取り去って一価の陽イオンにするのに必要なエネルギーをいいます。
同族間では,原子番号が大きいほど,最外殻電子がより外側の電子殻に存在し原子核の正電荷との引力が弱くなるため,イオン化エネルギーは小さくなります。


☆融点
アルカリ金属の1原子あたりの自由電子の数はどれも1個で等しいですが,原子番号が大きいほど,原子半径が大きくなり,単位体積あたりの自由電子の数は相対的に少なくなります。つまり,原子番号が大きくなるほど,金属間の結合が弱くなるため,融点は低くなります。
ちなみに,ナトリウムからセシウムまでの融点は水の沸点(100℃)より低くなります。

アルカリ金属2



□A3→ ○

☆解説
アルカリ金属の単体は,空気中の酸素O2と速やかに反応し,酸化物が生成します。
例えば,ナトリウムは酸素と反応して,酸化ナトリウムNa2Oとなり金属光沢を失います。

4Na + O2 → 2Na2O

金属の単体の空気中での反応は,次のようになります。

アルカリ金属3



□A4→ ×

☆解説
アルカリ金属の単体は,反応性に富むため,常温の水と反応しますが酸素ではなく水素が発生します。
例えば,ナトリウムは水と激しく反応して,水酸化ナトリウムNaOHになり,水素を発生します。

2Na + 2H2O → 2NaOH + H2

Q3,4のように,アルカリ金属の単体は,常温の水や空気中の酸素と反応しやすい
ため,リチウム,ナトリウム,カリウムは石油中に保存します。

金属の単体と水との反応は,次のようになります。
アルカリ金属4


□A5→ ×

☆解説
赤色ではなく黄色を示します。
アルカリ金属やアルカリ土類金属などの単体や化合物を炎の中に入れると
金属特有の色を示します。この反応を炎色反応といい,アルカリ金属の化合物は,
すべて水に溶け沈殿を作らないため,成分元素の検出には炎色反応を利用します。
アルカリ金属では,リチウム,ナトリウム,カリウムの3つの色を覚えましょう。

アルカリ金属5


□A6→ ○

☆解説
金属元素の酸化物の多くは,水に溶けて塩基性を示したり,酸と反応して塩を生じます。このような酸化物を塩基性酸化物とよんでいます。

アルカリ金属の酸化物は塩基性酸化物で,水と反応して水酸化物となり,その水溶液は強い塩基性を示します。

例えば,酸化ナトリウムNa2Oは水と反応し,水酸化ナトリウムが生成します。
Na2O + H2O → 2NaOH

また,酸との反応では,酸化ナトリウムは塩酸と反応し,塩である塩化ナトリウムが生成します。

Na2O + 2HCl → 2NaCl + H2O



□A7→ ○

☆解説
次のように,白色の炭酸ナトリウムNa2CO3が生成します。
Na2O + CO2 → Na2CO3

アルカリ金属の酸化物の反応は,代表である酸化ナトリウムの次の3つの反応をおさえましょう。

アルカリ金属6



□A8→ ×

☆解説
水酸化ナトリウムNaOHは,工業的には,塩化ナトリウムNaCl水溶液の電気分解を利用して製造されます。
現在主流である陽イオン交換膜法について解説します。

☆陽イオン交換膜法
陽イオン交換膜法では,下図に示すように,電解槽内部が陽イオン交換膜(※1)により,陽極室と陰極室に分けられて陽極室には飽和NaCl水溶液,陰極室に薄いNaOH水溶液(水の場合もある。)を入れています。

※1 陽イオン(Na+)は通過させるが,陰イオン(Cl-,OH-)は通過させない膜
アルカリ金属7

電気分解すると,陽極室ではCl-イオンが減少(塩素Cl2が発生)し,陰極室ではOH-イオンが増加(水素H2が発生)します。すると,その電荷を打ち消すためにNa+イオンが陽極室から陰極室へ陽イオン交換膜を通って移動し,結果として,陰極室にNaOH水溶液が生成します。さらに,これを濃縮すると純度の高いNaOHが得られます。

アルカリ金属8



□A9→ ○

☆解説
固体が空気中の水蒸気を吸収して,その水分に固体が溶けていく現象を潮解と
いいます。潮解性をもつ物質は,次のようになります。

☆潮解性をもつ物質
水酸化ナトリウムNaOH,水酸化カリウムKOH,リン酸H3PO4,
塩化カルシウムCaCl2,塩化マグネシウムMgCl2,塩化鉄(Ⅲ)六水和物FeCl3・ 6H2O

水酸化カリウムKOHは苛性カリ,水酸化ナトリウムNaOHは苛性ソーダとも
よばれ,ともに無色半透明(白色と表記される)の固体です。
水酸化ナトリウムは,紙やセッケンの製造に用いられます。



□A10→ ×

☆解説
水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの固体や水溶液は,二酸化炭素を吸収し,炭酸塩や炭酸水素塩を生成します。
例えば,水酸化ナトリウムは二酸化炭素を吸収し,白色の炭酸ナトリウムNa2CO3が生成します。

2NaOH + CO2 → Na2CO3 + H2O

生成した炭酸塩に,さらに二酸化炭素を吸収させると,炭酸水素塩が生成します。

例えば,炭酸ナトリウムは二酸化炭素を吸収し,白色の炭酸水素ナトリウム
NaHCO3が生成します。

Na2CO3 + H2O + CO2 → 2NaHCO3

☆NaOHとKOHの性質
① 無色半透明
② 潮解性をもつ。
③ 加熱しても,熱分解はしない。
④ 水によく溶け,その水溶液は強塩基性を示す。
⑤ 二酸化炭素を吸収し,炭酸塩を生成する。さらに,二酸化炭素を吸収すると炭酸水素塩が生成する。



□A11→ ×

☆解説
水酸化ナトリウム水溶液ではなく,塩化ナトリウムNaClの飽和水溶液です。
この製法をアンモニアソーダ法またはソルベー法といい,天然に豊富に存在する岩塩or海水NaClと石灰岩CaCO3から,炭酸ナトリウムNa2CO3を製造する製法で,
以下の5つの工程からなります。

☆アンモニアソーダ法

●主反応①
NaClの飽和水溶液にアンモニアNH3を十分に吸収させてから,二酸化炭素CO2を吹き込むと溶解度の小さい炭酸水素ナトリウムNaHCO3が沈殿します。

主反応①:NaCl + H2O + NH3 + CO2 → NaHCO3 + NH4Cl

●主反応②
生成したNaHCO3の沈殿をろ別し,これを焼くとNa2CO3が得られます。
主反応②: 2NaHCO3 → Na2CO3 + H2O + CO2

アンモニアソーダ法が考えられた当時NH3は貴重で,原料をなるべく回収して安く作るために,リサイクル法が考えられました。つまり,これが副反応となります。

●副反応③
主反応②で生成するCO2は,主反応①の反応に再利用されますが,この量だけでは充分でないので,次の副反応③に示すようにCaCO3を熱分解し,必要量のCO2を得ています。

副反応③:CaCO3 → CaO + CO2

●副反応④
さらに,副反応③で生成するCaOに水に加えてCa(OH)2とします。

副反応④:CaO + H2O → Ca(OH)2

●副反応⑤
副反応④で生成したCa(OH)2とNH4Clとを加熱反応させることでNH3を回収し,
主反応①の反応に再利用しています。

副反応⑤:Ca(OH)2 + 2NH4Cl → CaCl2 + 2NH3 + 2H2O

●全体の反応式
全体の反応式:2NaCl + CaCO3 → CaCl2 + Na2CO3

アンモニアソーダ法は,5段階あり最も厄介な工業的製法ですが,次の系統図を頭に入れて,整理しておさえましょう。
アルカリ金属9



□A12→ ×

☆解説
炭酸ナトリウムNa2CO3は,白色粉末で水によく溶け,その水溶液は加水分解によって比較的強い塩基性を示します。

一方,炭酸水素ナトリウムNaHCO3は,白色粉末で重曹(じゅうそう)ともよばれ,水に少し溶け,その水溶液は加水分解によって弱い塩基性を示します。

炭酸ナトリウムは,アンモニアソーダ法によって大量に作られ,ガラス,セッケン,紙などの製造に,炭酸水素ナトリウムは,胃腸薬,ふくらし粉(ベーキングパウダー),入浴剤などに用いられています。



□A13→ ×

☆解説
炭酸水素ナトリウムは,加熱すると容易に熱分解し炭酸ナトリウムと二酸化炭素を発生します。

2NaHCO3 → Na2CO3 + CO2 + H2O



□A14→ ○

☆解説
炭酸ナトリウムを水溶液中から再結晶を析出させると,炭酸ナトリウム十水和物Na2CO3・10H2Oの結晶が得られます。
このNa2CO3・10H2Oを空気中に放置すると,自然に水和物の一部が失われて,Na2CO3・H2Oの白色粉末になります。

このように水和物が結晶水を失って粉末になる現象を風解といいます。
潮解と風解は混同しやすいので,注意してください。



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