今日は,2族元素に関する正誤問題です。
周期表の2族に属する元素には,ベリリウムBe,マグネシウムMg,カルシウムCa,ストロンチウムSr,バリウムBa,ラジウムRaがあります。
2族元素のうち,Be,MgとCa,Sr,Ba,Raは,多くの点で性質が異なるため,Ca,Sr,Ba,Raをアルカリ土類金属元素とよびBe,Mgと区別しています。
★★★2族元素を学習する上でのポイント★★★
2族の原子は2個の最外殻電子をもち,2個の電子を放出して2価の陽イオンになりやすいという特性があります。
アルカリ土類金属の単体は,いずれも銀白色の光沢をもち,アルカリ金属と比べると,融点は高く,密度も大きくなります。
これは,2個の価電子をもっているため,アルカリ金属よりも自由電子が多く,金属結合が強くなるためです。
また,単体はアルカリ金属同様に天然には存在せず,塩化物などの融解塩電解によって得られます。
☆それでは,問題に挑戦してみてください。
■Q1
BeとMgは常温の水と反応しないが,Ca,Sr,Baは常温の水と反応する。
■Q2
2族元素は,いずれも炎色反応を示す。
■Q3
酸化カルシウムは,炭酸カルシウムを焼くことによって得られる。
■Q4
酸化カルシウムは,水とも酸とも反応する。
■Q5
酸化カルシウムにコークスCを混ぜて電気炉で強熱すると,アセチレンが生成する。
■Q6
酸化カルシウムに濃いアンモニア水溶液をしみこませてから焼いて粒状にしたものをソーダ石灰という。
■Q7
BeとMgの水酸化物は水に溶けるが,Ca,Sr,Baの水酸化物は水に溶けない。
■Q8
水酸化カルシウムは,消石灰ともよばれ,その飽和水溶液は石灰水とよばれる。
■Q9
水酸化カルシウムを空気中に放置すると分解して,酸化カルシウムになる。
■Q10
水酸化カルシウムの水溶液に二酸化炭素を吹き込むと,白色沈殿を生じるが,さらに吹き込み続けると,沈殿が溶解する。
■Q11
水酸化カルシウムは塩素を吸収し,塩化カルシウムになる。
■Q12
炭酸カルシウムは水に溶けにくいが,酸には水素を発生して溶ける。
■Q13
炭酸水素カルシウムを加熱すると,分解して酸化カルシウムCaOが生成し,二酸化炭素が発生する。
■Q14
セッコウCaSO4・2H2Oを焼くと焼きセッコウとなり,これに水を加えて練ると,硬化して再びセッコウになる。
■Q15
硫酸カルシウムと硫酸バリウムは水に溶解するが,硫酸マグネシウムは水に溶解しない。
■Q16
ホタル石に濃硫酸を加えて加熱すると,フッ化水素が発生する。
■Q17
塩化カルシウムの固体は,酸性の乾燥剤として利用される。
以下は,解答と解説です。
□A1→ ○
☆解説
アルカリ土類金属であるカルシウムCa,ストロンチウムSr,バリウムBaは,アルカリ金属と同様に,常温の水と反応し,水素H2を発生して水酸化物になります。
ベリリウムBeとマグネシウムMgは,常温の水とは反応しませんが,マグネシウムのみ熱水とは反応します。
例1:カルシウムと水との反応
Ca + 2H2O → Ca(OH)2 + H2
例2:マグネシウムと熱水との反応
Mg + 2H2O → Mg(OH)2 + H2
☆Point !
アルカリ金属・アルカリ土類金属の単体は常温の水と反応して水素を発生して水酸化物になる。
□A2→ ×
☆解説
アルカリ土類金属のCa,Sr,Baは,炎色反応を示しますが,BeとMgは示しません。
炎色反応を示すものは,アルカリ金属とアルカリ土類金属と銅と覚えましょう。
□A3→ ○
☆解説
酸化カルシウムCaOは生石灰ともよばれ,白色の固体で,炭酸カルシウムCaCO3(白色)を900℃以上で焼くことによって得られます。
この反応は,アンモニアソーダ法の副反応でもあります。
CaCO3 → CaO + CO2
□A4→ ○
☆解説
アルカリ土類金属の酸化物は,アルカリ金属同様に塩基性酸化物で,水に溶けて強い塩基性を示したり,酸と反応して塩を生じます。
したがって,酸化カルシウムは,水と反応して水酸化物の水酸化カルシウムCa(OH)2になり,その水溶液は強い塩基性を示します。
CaO + H2O → Ca(OH)2
この反応では,多量の熱を発するため,酸化カルシウムは缶入りの酒や駅弁を温める発熱剤として,また吸湿性があり乾燥剤にも利用されています。
アンモニアソーダ法の副反応でもありますね。
一方,酸化カルシウムが塩酸と反応すると,塩化カルシウムCaCl2と水が生成します。
CaO + 2HCl → CaCl2 + H2O
□A5→ ×
☆解説
アセチレンC2H2ではなく,次のように,炭化カルシウムCaC2(カルシウムカーバイドまたはカーバイドともよばれる)が生成します。
CaO + 3C → CaC2 + CO
アセチレンは,次のように炭化カルシウムに水を加えることで得られます。
この反応では,同時に水酸化カルシウムが生成することも重要なので一緒におさえてください。
CaC2 + 2H2O → Ca(OH)2 + C2H2
□A6→ ×
☆解説
アンモニアNH3水溶液ではなく,水酸化ナトリウムNaOH水溶液です。
ソーダ石灰は,乾燥剤や二酸化炭素の吸収剤として用いられます。
また,酸化カルシウム自体でも吸湿性を示すため,乾燥剤として用いられます。
☆酸化カルシウムの反応と性質
① 白色の固体で生石灰とよばれる。
② 炭酸カルシウムCaCO3を焼くと生成。
③ 水と反応して水酸化カルシウムCa(OH)2となる際に,多量の熱を
発することから発熱剤となる。
④ 酸と反応する。
⑤ コークスCを作用させると炭化カルシウムCaC2が生成。
⑥ 乾燥剤となる。(ソーダ石灰はCO2も吸収。)
□A7→ ×
☆解説
水酸化ベリリウムBe(OH)2,水酸化マグネシウムMg(OH)2は水に溶けにくく,水酸化カルシウムCa(OH)2は少し溶け,水酸化ストロンチウムSr(OH)2,水酸化バリウムBa(OH)2はよく溶けます。
また,アルカリ金属,アルカリ土類金属の水酸化物は強塩基性となります。
(例:NaOH,KOH,Ca(OH)2など。)
☆Point !
アルカリ金属,アルカリ土類金属の水酸化物は強塩基性となる!
□A8→ ○
☆解説
水酸化カルシウムCa(OH)2は消石灰,その飽和水溶液は石灰水とよばれます。
また,漆喰(水酸化カルシウムを主成分とした建材)などの建築材料や,酸性土壌の改良剤として用いられています。
□A9→ ×
☆解説
水酸化カルシウムを放置ではなく加熱することで分解して,酸化カルシウムCaOになります。
Ca(OH)2 → CaO + H2O
これは,文字通り水酸化物から水がとれて酸化物になる反応で,アルカリ金属以外の多くの水酸化物に共通します。
□A10→ ○
☆解説
Ca(OH)2水溶液に二酸化炭素を吹き込むと,炭酸塩である炭酸カルシウムCaCO3が白色沈殿します。
Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O ……①
炭酸カルシウムに,さらに二酸化炭素を吹き込み続けると炭酸カルシウムの沈殿が溶解します。
CaCO3 + H2O + CO2 ⇔ Ca(HCO3)2 ……②
この水溶液を加熱すると,②式の逆反応が起こり,再び,炭酸カルシウムが白色沈殿します。漆喰は水酸化カルシウムが空気中の二酸化炭素を吸収して,炭酸カルシウムとなって固まる性質(①の反応)を利用しています。
また,①・②式の反応が起こってできる地形を鍾乳洞といいます。
☆鍾乳洞が作られる反応
石灰岩CaCO3からなる地層に二酸化炭素が溶け込んだ地下水がしみわたってくると,次の反応が起こり,炭酸カルシウムが溶け,鍾乳洞(洞窟)が作られます。
CaCO3 + H2O + CO2 → Ca(HCO3)2 ←鍾乳洞が作られる(穴があく)反応
また,鍾乳洞内では,Ca(HCO3)2を含んだ水が,石灰岩の割れ目から流れ落ち,ゆっくり滴り落ちる際に空気中へ水分が蒸発すると同時に二酸化炭素も放出するので,上式の逆反応が起こり,炭酸カルシウムが析出します。
析出した炭酸カルシウムのうち,鍾乳洞の天井からつららのように伸びたものを鍾乳石(しょうにゅうせき),地面から筍(たけのこ)のように伸びたものを石筍(せきじゅん)といいます。
Ca(HCO3)2 → CaCO3 + H2O + CO2
鍾乳洞が作られる反応は,よく出題されるので確実におさえましょう。
□A11→ ×
☆解説
次のように塩化カルシウムCaCl2ではなく,さらし粉CaCl(ClO)・H2Oが生成します。
Ca(OH)2 + Cl2 → CaCl(ClO)・H2O
さらし粉は水に溶かすと,次のように電離して酸化力の強い次亜塩素酸イオンClO-を生じるので,酸化剤,殺菌剤,漂白剤として広く用いられています。
Ca(OH)2の反応・性質についてまとめました。
☆Ca(OH)2の反応と性質
① 消石灰ともよばれ,その飽和水溶液は石灰水とよばれる。
② 水に少し溶け,その水溶液は強塩基性を示す。
③ 加熱すると分解して,酸化カルシウムCaOになる。
④ 二酸化炭素CO2を吸収させると,炭酸カルシウムCaCO3の沈殿が
生じ,さらにCO2を吸収させると沈殿が溶解する。
⑤ 塩素Cl2を吸収して,さらし粉CaCl(ClO)・H2Oが生成。
水酸化ナトリウムと水酸化カルシウムの性質と反応はくらべてまとめて覚えましょう。
□A12→ ×
☆解説
炭酸カルシウムCaCO3は水に溶けにくく,塩酸などの酸には水素ではなく,二酸化炭素を発生して溶けます。このため,酸との反応は二酸化炭素の実験室での製法としても用いられます。
ただし,塩酸のかわりに希硫酸を用いるのは,CaCO3のまわりを水に不溶の硫酸カルシウムCaSO4(白色)が覆ってしまい,反応が滞ってしまうため適当ではありません。
CaCO3 + 2HCl → CaCl2 + H2O + CO2
CaCO3は,石灰石,大理石,卵の殻,貝殻,真珠,珊瑚の主成分であり,セメントやガラスの原料,歯磨き粉やチョークなどに利用されています。
□A13→ ×
☆解説
加熱すると分解して,酸化カルシウムCaOが生成するのは,炭酸水素カルシウムCa(HCO3)2ではなく,炭酸カルシウムCaCO3です。
CaCO3 → CaO + CO2
これは,アンモニアソーダ法の副反応でもありますね。
一方,Ca(HCO3)2の水溶液を加熱すると,炭酸カルシウムCaCO3が生成し,二酸化炭素が発生します。
Ca(HCO3)2 → CaCO3 + H2O + CO2
☆Ca(HCO3)2は水溶液中にのみ存在し,固体として取り出すことはできません。
Na・Caの化合物の熱分解についてまとめました。
くらべてまとめて覚えましょう!
CaCO3の性質・反応は,アルカリ金属の代表であるNaの炭酸塩Na2CO3ともくらべてまとめて覚えましょう。
□A14→ ○
☆解説
硫酸カルシウム二水和物CaSO4・2H2Oはセッコウとよばれ,約120℃~140℃まで加熱すると水和水の一部がとれて,焼きセッコウCaSO4・1/2H2Oとなります。
また,焼きセッコウに水を加えて練ると発熱しながら硬化し,再びセッコウにもどります。
硫酸カルシウムCaSO4(白色)は,天然には硫酸カルシウム二水和物CaSO4・2H2Oとして産出し,上記の性質から,建築材料や塑像,医療用ギプスなどに用いられます。
□A15→ ×
☆解説
逆で,硫酸カルシウムCaSO4と硫酸バリウムBaSO4(白色)は水に溶解しませんが,硫酸マグネシウムMgSO4は溶解します。
硫酸バリウムは白色顔料やX線撮影の造影剤(安定で胃液によっても溶解せず,X線をよく遮蔽することから)として用いられています。
※「バリウムを飲む」と言われますが,バリウムBaは冷水と反応して,水素を発生するので飲むと危険です。実際に,病院で飲むのはバリウムではなくて硫酸バリウムです!
☆入試によく出るX線関連の物質
鉛Pb …… X線の遮蔽剤
硫酸バリウムBaSO4 …… X線の造影剤
ここで,アルカリ土類金属のCa,Sr,BaとBe,Mgとの相違点についてまとめました。
よく狙われるのでしっかりおさえてください。
① Ca,Sr,Baは,炎色反応を示すが,Be,Mgは,示さない。
② Ca,Sr,Baは,常温の水と反応する(水酸化物になる。)が, Be,Mgは,反応しない。(Mgは,熱水とは反応する。)
③ Ca,Sr,Baの水酸化物は,水に溶ける(その水溶液は強塩基性)が, Be,Mgの水酸化物は,水に溶けにくい。
④ Ca,Sr,Baの硫酸塩は,水に溶けにくいが,Be,Mgの硫酸塩は,水によく溶ける。
□A16→ ○
☆解説
ホタル石CaF2に濃硫酸を加えて加熱すると,硫酸塩を生じ,フッ化水素HFが発生します。
CaF2 + H2SO4 → CaSO2 + 2HF
□A17→ ×
☆解説
塩化カルシウムCaCl2の固体は,強酸と強塩基からなる塩なので中性です。
吸湿性,潮解性があり,中性の乾燥剤として利用されます。
カルシウムの反応系統図についてまとめました。
どの反応も重要なのでしっかり覚えましょう。
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2族元素に関する正誤問題
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