現在,化学の参考書の執筆のため更新が滞っていました。
参考書は,校正段階に入っています。
それでは,今日はアルケンに関する正誤問題です。
分子内に1つの二重結合をもつ鎖式炭化水素をアルケンといい,一般式はCnH2nで表されます。アルケンは二重結合をもつため,アルカンとは異なり反応性に富むため,付加反応・酸化反応などを起こします。
アルケンの代表であるエチレンの性質・反応についておさえることがポイントです。
★次の正誤を判定せよ。
■問題① アルケンは,水にはよく溶けるが,有機溶媒には溶けにくい。
■問題② 構造異性体の関係にあるシス-2-ブテンとトランス-2-ブテンの沸点は同じである。
■問題③ エチレンの2個の炭素原子と4個の水素原子は,すべて同一平面上にある。
■問題④ 1-ブテンには,幾何異性体が存在する。
■問題⑤ アルケンは,アルカンに比べて一般に反応性に富む。
■問題⑥ メタノールと濃硫酸との混合物を160~170℃で加熱すると,脱水反応が起こり,エチレンが生成する。
■問題⑦ プロピレン(プロペン)に臭素を付加させると,1,1-ジブロモプロパンが生成する。
■問題⑧ エチレンに濃硫酸を触媒として水を付加させると,メタノールが生成する。
■問題⑨ エチレンをパラジウム触媒の存在下,酸素で酸化するとホルムアルデヒドが生成する。
■問題⑩ アルケンをオゾン分解させると,カルボン酸またはケトンが生成する。
■問題⑪ エチレンは,付加重合すると,ポリエチレンが生成する。
★解答
□問題①
□解答 …… 誤り。
アルケンは,アルカン同様に,極性が小さいため,水にはほとんど溶けませんが,
無極性溶媒であるベンゼンやジエチルエーテルなどの有機溶媒にはよく溶けます。
□問題②
□解答 …… 誤り。
シス-2-ブテンの方が少し沸点は高くなります。理由は,シス-2-ブテンは極性分子で,
分子間力に加えて極性引力)がはたらくため,その分だけ結合が強くなり,沸点が高くなります。
□問題③
□解答 …… 正しい。
アルケンでは,二重結合した炭素原子と,炭素原子に直接結合した4個の原子は,同一
平面上にあります。
最も簡単なアルケンであるエチレンは,無色でかすかな甘いにおいを持つ気体です。
また,植物ホルモンの1つで果実の成熟を促進させる働きをもちます。
□問題④
□解答 …… 誤り。
異性体のうち,二重結合に結合した置換基の配置が異なる立体異性体を幾何異性体
といいます。
1-ブテンではなく,2-ブテンに幾何異性体が存在します。炭素数が4以上のアルケン
には,構造異性体の他に,二重結合の位置の違いによる幾何異性体が存在します。
□問題⑤
□解答 …… 正しい。
アルケンは,二重結合をもつので,反応性に富み,主に付加反応をします。
二重結合部分C=Cの1本目の結合をσ結合,22本目の結合をπ結合といい,π結合は
弱い結合のため容易に切れて,そこにいろんな原子や原子団が付加します。
□問題⑥
□解答 …… 誤り。
メタノールではなく,エタノールと濃硫酸との混合物を160~170℃で加熱すると,
分子内脱水反応が起こり,エチレンが生成します。
上記の温度より低い,130~140℃で加熱した場合は,分子間脱水反応が起こり,
ジエチルエーテルが生成します。
温度によって生成物が変わるので,入試でもよく狙われます!
□問題⑦
□解答 …… 誤り。
1,1-ジブロモプロパンではなく,1,2-ジブロモプロパンが生成します。
アルケンに臭素水を加えると,臭素が付加し,臭素水の色(赤褐色)が消えます。
この反応は,C=C二重結合,C≡C三重結合の不飽和結合の検出に用いられます。
ベンゼンやフェノールに臭素が付加した場合も臭素水の色が消えることも
一緒におさえてください。
□問題⑧
□解答 …… 誤り。
メタノールではなくエタノールが生成します。
一般に,アルケンに,濃硫酸H2SO4かリン酸H3PO4を触媒として水を付加させると,
アルコールが生成します。
□問題⑨
□解答 …… 誤り。
ホルムアルデヒドではなく,アセトアルデヒドが生成します。この反応は
アルデヒドの工業的製法でヘキストワッカー法といいます。
□問題⑩
□解答 …… 誤り。
アルケンをオゾンO3によって分解させると,炭素原子間の二重結合が切れ,炭素-酸素の二重結合ができ,アルデヒドとケトンが生成します。
この反応は酸化反応の1つで,アルケンは,付加反応以外にも,酸化反応も受けやすく,
様々な酸化剤と反応します。
アルケンによる酸化には,主に「オゾンによる酸化」と「過マンガン酸カリウム」
による酸化の2つがあります。
オゾン分解と比較しておさえてほしいのですが,
過マンガン酸カリウムKMnO4による酸化の場合は,オゾンによる酸化と同様に,炭素原子間の二重結合が切れ,炭素-酸素の二重結合ができますが,生成した2つの
化合物は,さらに,酸化されケトンかカルボン酸になります。
□問題⑪
□解答 …… 正しい。
アルケンであるエチレンやプロピレンに適当な条件下で反応すると,二重結合が
切れて,次々に分子がつながり分子量の大きな高分子化合物が生成します。
このように,付加反応が連続して起こり,高分子化合物を生じる反応を付加重合
といいます。
ポリエチレンは,成形加工しやすく,耐薬性を持つため,ポリ袋,ポリバケツ,飲料用
ボトルなどに,利用されています。
↧
アルケンに関する正誤問題
↧