今日は,油脂・セッケンに関する正誤問題です。
油脂は,高級脂肪酸とグリセリンとのエステルで,動植物中に広く存在します。
油脂はエステルなので,油脂の性質を考えるときは,エステルの性質を考えるといいでしょう。
セッケンは油脂を,けん化したものです。
油脂とセッケンを混同して覚えている人が多いので,注意してください。
★次の正誤を判定せよ。
■問題① 油脂は水には溶けないが,有機溶媒には溶けやすい。
■問題② セッケンを水に溶かすと,水溶液は酸性を示す。
■問題③ 分子中の炭素原子間二重結合C=Cの数は,リノール酸は1個,リノレン酸 は2個,オレインは3個である。
■問題④ 炭素原子間の二重結合C=Cを多く含む油脂は,空気中のO2で酸化されやすく固化しやすい。
■問題⑤ セッケン水に食用油を加えてよく振り混ぜると,親水基を油に向けて内側に,疎水基を外側にして食用油を取り囲む。
■問題⑥ 油脂は,1分子のグリセリンに3分子の高級脂肪酸がエステル結合した化合物である。
■問題⑦ 油脂に水酸化ナトリウム水溶液を加えて加熱すると,エチレングリコールとセッケンが生成する。
■問題⑧ カルシウムイオンやマグネシウムイオンを含む硬水中では,セッケンによる洗浄力は増す。
★解答
□問題①
□解答 …… 正しい。
油脂は,高級脂肪酸とグリセリンとのエステルなので,分子全体中に疎水性の部分が多くしめるので,極性溶媒には溶けず,無極性溶媒である有機溶媒には溶けます。
油脂は油なので,油をイメージすれば,水に溶けないことは明らかですよね。
高級脂肪酸は,炭素数が6個以上の鎖状のカルボン酸でしたね。
□問題②
□解答 …… 誤り。
セッケンは高級脂肪酸のアルカリ金属塩で,弱酸と強塩基からなる塩なので,水中では加水分解により塩基性を示します。
□問題③
□解答 …… 誤り。
二重結合C=Cの数は,オレイン酸は1個,リノール酸は2個,リノレン酸は3個です。
飽和脂肪酸の炭素数18のステアリン酸C17H35COOHを出発点に,炭素鎖からH原子が2個取れて,二重結合が1つ持ったオレイン酸C17H33COOHになります。
さらに,同様にして,二重結合を2つ持ったリノール酸C17H31COOH,二重結合を3つ持ったリノレン酸となります。
□問題④
□解答 …… 正しい。
油脂の構成脂肪酸中に二重結合C=Cが多く含まれると酸化されやすく,空気中のO2によって-O-O-結合などの結合により油脂どうしがくっつき固化します。
このような性質をもつ脂肪油(常温で液体の油脂)を乾性油といいます。
一方,空気中に放置しても固化しないものを不乾性油,これらの中間の性質をもつものを半乾性油といいます。
乾性油は,ペンキやインク,半乾性油は大豆油などの食用油,不乾性油は,バター,オリーブ油などの食用油,化粧品などに利用されています。
脂肪油の二重結合C=C部分に,Ni触媒を用いて水素を付加させると,二重結合にH2が付加して飽和脂肪酸を多く含む油脂となり常温で固体になります。
このようにしてつくられた油脂を硬化油といいます。
□問題⑤
□解答 …… 誤り。
セッケン分子は疎水基と親水基の両方をもち,親水基を外側に,疎水基を内側にして,食用油を取り囲み,粒子となって水中に分散します。
このように,セッケンが油汚れを水中に分散させる作用を乳化(作用)といいます。
また,セッケンは水の表面張力を低下させる性質があります。
このような性質をもつ物質を界面活性剤といいます。
□問題⑥
□解答 …… 正しい。
油脂を構成する高級脂肪酸は1種類ではなく,R1,R2,R3の組み合わせによって多くの種類が存在することに注意してください。
□問題⑦
□解答 …… 誤り。
エチレングリコールではなく,グリセリンが生成します。
油脂は,1分子のグリセリンに3分子の高級脂肪酸がエステル結合したエステルなので,水酸化ナトリウム水溶液を加えて加熱すると,加水分解し,グリセリンと高級脂肪酸のアルカリ金属塩(これをセッケンという)が生成します。
このようにエステルに強塩基(水酸化ナトリウム,水酸化カリウムなど)
を加えて加水分解させることをけん化といい,けん化によって,グリセリンとセッケンが得られます。
□問題⑧
□解答 …… 誤り。
セッケンの水溶液は塩基性で,絹や羊毛などタンパク質からなる繊維は塩基性に弱いため,セッケンは,絹や羊毛の洗浄には適しません。
セッケンと合成洗剤点についてまとめましたのでしっかりおさえてください。
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油脂・セッケンに関する正誤問題
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