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エステルに関する正誤問題

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今日は,エステルに関する正誤問題です。

アルコールとカルボン酸から水分子がとれて縮合して生成する化合物をエステル(分子式:CnH2nO2)といい,エステルが生成する反応をエステル化といいます。

また,ヒドロキシ基(-OH)とオキソ酸(酸素原子を含む酸 例:硝酸,硫酸など)から水分子がとれて縮合して生成する化合物も広義のエステルといいます。

油脂は,グリセリン高級脂肪酸とのエステル,
ニトログリセリンは,グリセリン硝酸とのエステル
ポリエチレンテレフタラートは,エチレングリコールテレフタル酸とのエステルです。

エステルは,エステル化と加水分解をおさえることがポイントです。


★次の正誤を判定せよ。

■問題① エステルは,水にも有機溶媒にも溶けやすい。


■問題② 酢酸エチルの水溶液は,酸性を示す。


■問題③ 分子量が同程度のエステルとカルボン酸の沸点を比較すると,エステルの方がかなり高い。


■問題④ 分子量の小さいエステルは,一般に揮発性で果実のような芳香をもつ。


■問題⑤ 酢酸メチルと酢酸は構造異性体の関係にある。


■問題⑥ 硝酸とグリセリンから生じるエステルをニトログリセリンという。


■問題⑦ 酢酸エチルに水を加えて加熱すると,酢酸とメタノールになる。


■問題⑧ 酢酸エチルに水酸化ナトリウム水溶液に加えて加熱すると均一な溶液になる。


■問題⑨ 油脂を水酸化ナトリウム水溶液で加水分解するとセッケンができる。


■問題⑩ サリチル酸にメタノールと少量の濃硫酸を加えて加熱すると,アセチルサリチル酸が生成する。


■問題⑪ ポリエチレンテレフタラートは,フタル酸とエチレングリコールの縮合重合によって合成される。





★解答

□問題①
□解答 …… 誤り。

エステルは,有機溶媒には溶けやすいですが,水には溶けにくいです。
理由は,エステルは,エステル結合に極性があるため,親水性ですが,この両端を疎水基ではさまれているため,水に溶けにくくなります。しかし,分子量が最も小さいエステルであるギ酸メチルのみ,分子全体に対する親水基の割合が大きいため,水には溶けます。

Point! 脂肪族化合物の水への溶解性
アルコール,アルデヒドケトン,カルボン酸……炭素数が3~4までは水に溶ける。
エーテル,エステル……炭素数が最小のもののみ水に溶ける。




□問題②
□解答 …… 誤り。

酢酸エチルCH3COOC2H5は,エタノールC2H5OHと酢酸CH3COOHからできたエステルで,エステルは酸性を示すカルボキシ基(-COOH)がエステル化により失われたので,中性となります。

Point! 水溶液の液性
酸性 …… スルホン酸,カルボン酸,フェノール
中性 …… アルカン,アルケン,アルキン,アルコール,アルデヒド,エーテル,ケトン,エステル,ベンゼン,ニトロベンゼン,トルエン
塩基性 …… アニリン



□問題③
□解答 …… 誤り。

分子量が同程度のエステルとカルボン酸の沸点を比較すると,エステルの方がかなり低くなります。理由は,カルボン酸は分子間で水素結合を形成するのに対し,エステルは,水素結合を形成しないため,低くなります。

Point! 一般的な沸点の高さ(同程度の分子量)
カルボン酸>アルコール>アルデヒド,ケトン,エステル,アミン>エーテル>アルカン




□問題④
□解答 …… 正しい。

例えば,酢酸エチルは,揮発性の液体でパイナップルに似た芳香をもち,無毒なので香料として用いられます。分子量の小さいエステルは果実のような芳香を持ちます。


□問題⑤
□解答 …… 誤り。

酢酸メチルの分子式はC3H6O2で,酢酸(分子式はC2H4O2)ではなくプロピオン酸と互いに構造異性体の関係にあります。

構造異性体の関係にあるカルボン酸とエステルの主な判別法は,次のようになります。

Point! カルボン酸とエステルの判別法
① 塩基と反応する。→ カルボン酸(カルボン酸は酸性のため,塩基と中和反応し塩を生成する)
② 塩基と加熱すると均一な溶液となる。→ エステル
③ 炭酸水素ナトリウムを加えると,二酸化炭素が発生。→ カルボン酸



□問題⑥
□解答 …… 正しい。

硝酸とグリセリンが反応すると,ニトログリセリンが生成します。
ヒドロキシ基(-OH)とオキソ酸(酸素原子を含む酸 例:硝酸,硫酸など)から水分子がとれて縮合して生成する化合物も広義のエステルといいます。

数学・化学講師 佐藤学による受験生に役立つ濃縮ポイントと…etc-グリセリン

ニトログリセリンは,ダイナマイトの主成分で,心臓の動脈を拡張させる作用があることから狭心症の治療薬としても用いられます。


□問題⑦
□解答 …… 誤り。

メタノールではなく,酢酸とエタノールになります。
酢酸エチルはエステルで,エステルに水を加えて加熱したり,希塩酸や希硫酸などの強酸を加えて加熱すると,エステル化の逆向きの反応がおきます。
この反応をエステルの加水分解といいます。



□問題⑧
□解答 …… 正しい。

均一な溶液とは,溶けるということで,酢酸エチルは,酢酸ナトリウムの塩となって溶けます。
CH3COOC2H5 + NaOH → CH3COONa + C2H5OH

エステルに水酸化ナトリウム水溶液などの塩基を加えて温めると,加水分解され,カルボン酸の塩とアルコールになります。
このように塩基を用いたエステルの加水分解を,特にけん化といいます。


□問題⑨
□解答 …… 正しい。

エステルの一種である油脂を塩基で加水分解すると,セッケンができます。
セッケンはグリセリンと高級脂肪酸のアルカリ金属塩です。油脂とセッケンを混同しないように注意してください!

Point!
油脂 …… 高級脂肪酸とグリセリンとのエステル
セッケン …… 高級脂肪酸のアルカリ金属塩




□問題⑩
□解答 …… 誤り。

アセチルサリチル酸ではなく,サリチル酸メチルが生成します。
サリチル酸は,ヒドロキシ基-OHとカルボキシ基-COOHの両方を持ち,
相手が-OHをもつ物質の場合は,サリチル酸の-COOHが,
相手が-COOHをもつ物質の場合は,-OHが反応してエステル結合をつくります。

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□問題⑪
□解答 …… 誤り。

ポリエチレンテレフタラートは,カルボン酸であるテレフタル酸とアルコールであるエチレングリコールから水がとれて,次々とエステル結合によって結合(脱水縮合)した高分子化合物です。

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