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アミンに関する正誤問題

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今日は,アミンについてです。
アンモニアNH3の水素原子を炭化水素基で置換した構造をもつ化合物を一般にアミンといいます。
この炭化水素基がベンゼン環を含むものを芳香族アミン,それ以外を脂肪族アミンといいます。
アミンは,芳香族アミンの代表であるアニリンについての出題がほとんどなので,アニリンの性質・反応についておさえましょう。



★次の正誤を判定せよ。

■問題① アニリンは,水によく溶ける。


■問題② アミンの沸点は,同程度の分子量をもつアルカンと比べるとはるかに低い。


■問題③ アニリンの水溶液は,中性である。


■問題④ アニリンは酸化されにくく安定である。


■問題⑤ アニリンはスズ(または鉄)と濃塩酸を用いて,ニトロベンゼンを還元し,強塩基を加えることで得られる。


■問題⑥ アニリンに無水酢酸を作用させてアセチル化すると,アセトアニリドが生成する。


■問題⑦ アニリンの塩酸溶液に低温で亜硝酸ナトリウム水溶液を加えると,ニトロベンゼンが生成する。


■問題⑧ 冷却した塩化ベンゼンジアゾニウムの水溶液に,ナトリウムフェノキシドの水溶液を加えるとp-フェニルアゾフェノール(p-ヒドロキシアゾベンゼン)が生成する。


■問題⑨ アニリンに,さらし粉CaCl(ClO)・H2O水溶液を加えると,黄色に呈色する。






★解答

□問題①
□解答 …… 誤り。

低級の脂肪族アミンは,水によく溶けますが,芳香族アミンは水にはほとんど溶けなくなります。
理由は,アミノ基(-NH2)は親水基で,低級の脂肪族アミンは,分子全体に対する親水基の影響が大きいため溶けますが,芳香族アミンは,疎水基であるベンゼン環の影響が大きくなり溶けにくくなります。


□問題②
□解答 …… 誤り。

アミンの沸点は,同程度の分子量をもつアルカンと比べるとはるかに高くなり,アルコールよりは低くなります。
理由は,アミン分子間で,NとHとで水素結合が形成されるため,アルカンよりは高くなり,この水素結合は,アルコールの分子間で形成される水素結合よりは弱いためアルコールより低くなります。
ちなみに,アニリンの沸点は185℃です。


Point! 一般的な沸点の高さ(同程度の分子量)
アルコール>アミン>アルカン



□問題③
□解答 …… 誤り。

アニリンは,アンモニアと同様に,N原子の非共有電子対がH+を引きつけるため水溶液は弱塩基を示します。
アニリンは,特有のにおいをもつ油状の液体です。

また,アミノ基(-NH2)は,アンモニアNH3と同様に,酸と中和反応をして塩となります。
R-NH2 + HCl → R-NH3Cl


□問題④
□解答 …… 誤り。

アニリンは,酸化されやすく空気中に放置しただけで酸化され,徐々に赤くなります。
そのため,褐色の瓶に入れて保存します。


□問題⑤
□解答 …… 正しい。


アニリンはフェノール同様,ベンゼンから直接合成することが困難なため,ニトロベンゼンを還元して合成されます。

まず,ニトロベンゼンを還元すると,アニリン塩酸塩となります。
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これに強塩基である水酸化ナトリウム水溶液を加えると,弱塩基であるアニリンが遊離します。
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Point! 弱塩基の遊離反応
「弱塩基の塩」+「強塩基」→「強塩基の塩」+「弱塩基」
「強塩基の塩」+「弱塩基」→ 反応しない



□問題⑥
□解答 …… 正しい。

アニリンに無水酢酸を作用させてアセチル化すると,白色のアセトアニリドが生成します。アセトアニリドは,以前は,解熱剤として用いられていましたが,現在は,副作用が強いために使われていません。
また,アセトアニリドは,アミド結合-CONH-をもち,アミド結合をもつ物質をアミドといいます。

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□問題⑦
□解答 …… 誤り。

アニリンを希塩酸に溶かし,冷却しながら亜硝酸ナトリウムNaNO2を加えると,ジアゾ化が起こり,ニトロベンゼンではなくて塩化ベンゼンジアゾニウムが生成します。

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この反応のように,芳香族第一級アミンに亜硝酸を作用させ,ジアゾニウム塩をつくることをジアゾ化といいます。
ジアゾニウム塩は不安定で,容易に加水分解してしまうので,ジアゾ化は冷却下で行うこともおさえておいてください。



□問題⑧
□解答 …… 誤り。

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この反応のように,ジアゾニウム塩にフェノール類や芳香族アミンを作用させてアゾ化合物をつくる反応をカップリングといます。
橙赤色のp-フェニルアゾフェノールは,アゾ基-N=N-を持ち,アゾ基を持つ物質をアゾ化合物といいます。アゾ化合物は,染料として用いられます。



□問題⑨
□解答 …… 誤り。

アニリンに,さらし粉水溶液CaCI(CIO)H2Oを加えると,次亜塩素酸イオンCIO-によって酸化され,紫色に呈色します。
この反応は,アニリンの検出に用いられます。

アニリンの酸化については,下記のように3つがありますので,まとめて覚えてください。

Point!  アニリンの3つの酸化反応
① 空気中の酸素によって酸化され,褐色~赤褐色になる。
② さらし粉を加えると,紫色になる。
③ ニクロム酸カリウムを加えると,アニリンブラックになる。




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