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沸点・融点に関する正誤問題(有機化合物)

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今日は沸点・融点に関する正誤問題です。

無機化合物の多くは,イオン結晶のため一般に,沸点・融点は高くなりますが,有機化合物は,ほとんどが分子結晶で,分子間を弱い結合である分子間力が結びつけているので,無機化合物に比べて低くなります。

沸点・融点の大きさは,主に,分子同士の結合の強さによって決まり,結合が強いということは,その結合を切るために多くのエネルギー(熱)を必要とすることから,沸点・融点は高くなる)物質の構造や含まれる官能基を特定する手がかりとなることから,ある程度把握している必要があります。

★次の正誤を判定せよ。

■問題① エタンは,プロパンより沸点が低い。


■問題② 一般に.炭素数が同じ場合のアルコールの沸点の大きさは,第一級アルコール<第二級アルコール<第三級アルコール の順となる。


■問題③ 1-プロパノールは,同分子量のエチルメチルエーテルより沸点が高い。


■問題④ アルデヒドの沸点は,同程度の分子量のカルボン酸と比べると低く,アルカンと比べると高い。


■問題⑤ エステルの沸点は,同程度の分子量のアルコールと比べると高く,アルカンと比べると低い。


■問題⑥ アミンの沸点は,同程度の分子量をもつアルカンと比べるとはるかに高い。


■問題⑦ マレイン酸は,フマル酸より融点が低い。


■問題⑧ アミノ酸は,他の有機化合物に比べて,融点は低い。


■問題⑨ リノレン酸とステアリン酸の融点は,リノレン酸の方がかなり高い。


■問題⑩ 高分子化合物の融点は,低分子化合物同様に一定の融点を示す。






★解答

□問題①
□解答 …… 正しい。

一般に分子の構造が似ている分子では,分子量が大きくなるほど,分子どうしの結合に働く分子間力が大きくなるので,沸点・融点は高くなります。
エタンC2H6とプロパンC3H8は,同じ直鎖状でプロパンの方が分子量が大きいのでプロパンの方が沸点が高くなります。

例えば,メタン(分子量16)の沸点は-161.5℃.エタン(分子量30)の沸点は-89℃.プロパン(分子量44)の沸点は-42℃になります。

ここで,3つの結合について説明します。

分子間に働く力にはいくつかあり,極性分子の間では,極性による電気的な引力がはたらき,この力をクーロン力(極性引力)といいます。
また,分子中に電気陰性度の大きいF,O,N原子と電気陰性度(異なる原子が共有結合したときに,その原子が共有電子対を引きつける強さを数値化したもの)の最も小さいH原子が結合すると非常に強い極性を生じます。そして,負に帯電しているF,O,Nと,他の分子の正に帯電したHとの間とでクーロン力で強く引きつけあいます。
この結合を特に水素結合とよんでいます。
しかし,極性をもたない無極性分子でも,瞬間的な電子の偏りにより,弱い力が働きます。
この極性,無極性に関係なくすべての分子間に働く弱い結合をファンデルワールス力といいます。

このように分子間に働くクーロン力(極性引力),水素結合,ファンデルワールス力を合わせて分子間力とよんでいます。
そして,これらの結合の強さは次のようになります。


Point ! 分子間力の強さ
水素結合>クーロン力(極性引力)>ファンデルワールス力


□問題②
□解答 …… 誤り。

逆で,第一級アルコール>第二級アルコール>第三級アルコールの順となる。

数学・化学講師 佐藤学による受験生に役立つ濃縮ポイントと…etc-沸点1


理由は,第一級アルコールの-OH基は,分子の末端にあるので,分子どうしで水素結合を形成しやすいのですが,第二級アルコール,第三級アルコールは,-OH基のまわりを炭化水素基が取り囲み,水素結合を形成しずらくするためと考えられます。


一般に,分子の形が枝分かれ状より,直鎖状の方が分子間力が強く,沸点が高くなる傾向があります。


これらより,沸点・融点の大きさを判断するときのポイントは,次のようになります。

Point !
① 分子の大きさ
一般に,分子量が大きいほど沸点・融点は高くなる。
② 分子の形
一般に,枝分かれ状より直鎖状の方が沸点・融点は高くなる。
③ 極性分子か無極性分子か
無極性分子より極性分子の方がクーロン力が働き,沸点・融点は高くなる。
④ 水素結合の有無
極性分子の中でも水素結合があれば,沸点・融点は高くなる。
⑤ 常温での状態
例えば.常温で液体のAと気体のBの物質があれば,当然Aの方が沸点は高いといえる。



□問題③
□解答 …… 正しい。

アルコールである1-プロパノール(分子量60)の沸点は97℃で,エーテルであるエチルメチルエーテル(分子量60)の沸点は7℃で,1-プロパノールの方が圧倒的に高くなります。これは,1-プロパノールはヒドロキシ基-OHをもち,分子間で水素結合を形成するため,沸点が高くなります。



□問題④
□解答 …… 正しい。

例えば,アルデヒドであるプロピオンアルデヒド(分子量58)の沸点は48℃,カルボン酸である酢酸(分子量60)の沸点は118℃,アルカンであるブタン(分子量58)の沸点は-0.5℃で,アルデヒドの沸点は,カルボン酸と比べると低く,アルカンと比べると高くなります。
これは,アルデヒドはカルボン酸のようにカルボキシ基-COOHを持たないので,同分子間で水素結合が形成されないため,カルボン酸より沸点は低くなります。
しかし,カルボニル基(-CO-)には,極性があるため,無極性分子であるアルカンより沸点は高くなります。


□問題⑤
□解答 …… 誤り。

例えば,エステルであるギ酸メチル(分子量60)の沸点は32℃,アルコールである1-プロパノール(分子量60)の沸点は97℃,アルカンであるブタン(分子量58)の沸点は-0.5℃で,エステルの沸点は,アルコールと比べると低く,アルカンと比べると高くなります。

これは,エステルは,アルコールのようにヒドロキシ基-OHを持たないので,水素結合は形成されないためで,
しかし,カルボニル基(-CO-)には,極性があるため,無極性分子であるアルカンより沸点は高くなります。


□問題⑥
□解答 …… 正しい。

例えば,アミンであるプロピルアミン(分子量59)の沸点は47℃,アルカンであるブタン(分子量58)の沸点は-0.5℃で,
アミンの沸点は,同程度の分子量をもつアルカンと比べるとはるかに高くなります。
理由は,アミン分子間で,NとHとで水素結合が形成されるため,アルカンよりは高くなります。

以上,分子量が同程度の化合物の種類による沸点の高さは,次のようになります。


Point ! 一般的な沸点の高さ(同程度の分子量)
カルボン酸>アルコール>アルデヒド,ケトン,エステル,アミン>エーテル>アルカン

数学・化学講師 佐藤学による受験生に役立つ濃縮ポイントと…etc-沸点2


きっちり正確な順番を覚える必要はなく,1番がカルボン酸で,2番がアルコール,3番目が同程度で,アルデヒド,ケトン,アミン。エステル,エーテル,アルカンの順に低くなる。と覚えるくらいで十分です。


数学・化学講師 佐藤学による受験生に役立つ濃縮ポイントと…etc-沸点3



□問題⑦
□解答 …… 正しい。

マレイン酸とフマル酸(分子式C4H4O4)は,不飽和の2価のカルボン酸でシス形のマレイン酸とトランス形のフマル酸は,幾何異性体の関係にあります。

融点は,フマル酸のほうがはるかに高くなります。
理由は,マレイン酸は分子間だけで水素結合をするのに対し,マレイン酸は,分子内でも水素結合もするので,その分,分子間の水素結合の数が減少するためです。


□問題⑧
□解答 …… 誤り。

アミノ酸の双性イオンが互いにクーロン力で強く結合して,イオン結合を形成しているので,他の有機化合物に比べて,融点は高くなります。(約220℃~340℃)イオン結合は,水素結合やクーロン力よりもはるかに強い結合です。


□問題⑨
□解答 …… 誤り。

飽和脂肪酸であるステアリン酸の融点は71℃,不飽和脂肪酸であるリノレン酸の融点は-11℃で,ステアリン酸の方がかなり高くなります。分子量がほぼ変わらなく,ステアリン酸の方が高いのは,ステアリン酸は,飽和脂肪酸で,直鎖状の形をしているので,分子同士が接近しやすく,分子間力が強く働きます。

一方,不飽和脂肪酸は二重結合をもち,すべてシス形をとり,二重結合を多く持つ分子ほど折れ曲がった形となっているため,分子同士の接近が妨げられ,分子間力が弱くなり,融点は低くなります。

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□問題⑩
□解答 …… 誤り。

低分子化合物は,一定の融点を示しますが,高分子化合物は規則的な配列をとらないため,一定の融点は示しません。
加熱すると軟らかくなり,変形し始める温度を軟化点といいます。


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