今日は,カルボン酸に関する正誤問題です。
分子中にカルボキシ基(-COOH)をもつ化合物をカルボン酸(分子式:CnH2nO2)といい,
多くのカルボン酸の名前は,最初に発見された動植物の名前からつけられた慣用名で呼ばれます。
反応は,特に
① 酸としての反応(中和反応,弱酸の遊離反応)
② 酸水物の生成反応
③ エステル化反応
の3つをおさえましょう。
★次の正誤を判定せよ。
■問題① 酢酸もステアリン酸も水によく溶ける。
■問題② カルボン酸の沸点は,同程度の分子量のアルカンより低い。
■問題③ マレイン酸は,フマル酸より融点が低い。
■問題④ ギ酸は,炭酸水より弱い酸性を示す。
■問題⑤ 安息香酸は,水にわずかしか溶けないが,酸性の水溶液にはよく溶ける。
■問題⑥ 乳酸には,光学異性体がある。
■問題⑦ ギ酸を濃硫酸で脱水すると,二酸化炭素が発生する。
■問題⑧ ギ酸は,アセトアルデヒドの酸化により得られる。
■問題⑨ p-キシレンを酸化すると,フタル酸が生成する。
■問題⑩ エタノールと酢酸の混合物に,濃硫酸を加えて加熱すると酢酸エチルが生成する。
■問題⑪ サリチル酸に無水酢酸を加えると,サリチル酸メチルが生成する。
■問題⑫ セッケンを加水分解すると,高級脂肪酸とグリセリンが得られる。
■問題⑬ 酢酸に十酸化四リン(五酸化二リン)を加えて熱すると,脱水し,無水酢酸が生成する。
■問題⑭ テレフタル酸を加熱すると,分子内のカルボキシル基2個から水1分子がとれて酸無水物が生じる。
■問題⑮ ギ酸にアンモニア性硝酸銀水溶液を加えて加熱すると,銀が析出する。
★解答
□問題①
□解答 …… 誤り。
酢酸は,水によく溶けますが,ステアリン酸C17H35COOHは,ほとんど水に溶けません。
カルボン酸は,カルボキシ基(-COOH)が極性の大きい親水基のため,Cの少ない低級カルボン酸は水に溶けます。
しかし,ステアリン酸は高級脂肪酸で,長い炭化水素基(C17H35)が疎水基のため,分子全体に占める親水基の影響が小さくなるので水に溶けにくくなります。
酢酸は,刺激臭のある無色の液体で,純粋なものは冬に凝固するので氷酢酸と呼ばれます。
□問題②
□解答 …… 誤り。
カルボン酸の沸点は,同程度の分子量のアルカンより高くなります。これは分子中に極性の大きいカルボキシ基(-COOH)をもち,分子どうしで水素結合するためです。
Point! 一般的な沸点の高さ(同程度の分子量)
カルボン酸>アルコール>アルデヒド,ケトン,エステル,アミン>エーテル>アルカン
□問題③
□解答 …… 誤り。
分子式がともにC4H4O4であるマレイン酸とフマル酸は,不飽和の2価のカルボン酸でシス形のマレイン酸とシス形のフマル酸は,幾何異性体の関係にあります。
融点は,フマル酸の方がはるかに高くなります。
理由は,マレイン酸は分子間だけで水素結合をするのに対し,フマル酸は,分子内でも水素結合もするので,その分,分子間の水素結合の数が減少するためです。
マレイン酸とフマル酸に関する問題は頻出なので,次の点もおさえてください。
水への溶解性は,マレイン酸は極性分子(非対称形)で水にはよく溶けますが,フマル酸(対称形)は無極性分子で,水にはあまり溶けません。
脱水反応では,マレイン酸は2個の-COOH基が互いに近くにあるため,加熱するだけで分子内脱水が起こり,無水マレイン酸になりますが,フマル酸は,-COOH基が反対側で離れているため加熱しても脱水されません。
水素の付加反応では,両方とも水素が付加するとコハク酸C2H4(COOH)2が生成します。
□問題④
□解答 …… 誤り。
カルボン酸はその名の通り,酸性の化合物で,酸性は炭酸H2CO3より強く,
塩酸HClや硫酸H2SO4よりは弱くなります。酸の強さは次のようになります。
Point! 酸の強さ
塩酸>硫酸>スルホン酸>カルボン酸>炭酸>フェノール類
ギ酸は,刺激臭のある無色の液体で,脂肪酸の中で最も酸性が強く有毒です。ギは蟻(アリ)と書き,アリから発見されたことからこの名がつきました。
□問題⑤
□解答 …… 誤り。
水素ではなく,二酸化炭素が発生します。
HCOOH + NaHCO3 → HCOONa + H2O + CO2
炭酸塩や炭酸水素塩の水溶液にカルボン酸を加えると,二酸化炭素が発生し溶解します。
これは,酸の強さは,ギ酸(カルボン酸)>炭酸なので,弱酸の塩(炭酸水素ナトリウム)に弱酸(炭酸)より強い酸(ギ酸)を加えることで,強い酸が塩(ギ酸ナトリウム)になり,弱酸(炭酸)が遊離するという反応が起こるためです。
Point! 弱酸の遊離反応
「弱酸の塩」+「強酸」→「強酸の塩」+「弱酸」
※強・弱は相対的な関係
□問題⑥
□解答 …… 正しい。
4種が異なる原子または原子団と結合している炭素原子を不斉炭素原子といい,不斉炭素原子をもてば,必ず光学異性体をもちます。乳酸は,不斉炭素原子で光学異性体が存在します。
□問題⑦
□解答 …… 誤り。
二酸化炭素ではなく,一酸化炭素が生成します。
HCOOH → CO + H2O
濃硫酸は脱水作用があり,有機化合物中からHとOを2:1の割合で奪います。
□問題⑧
□解答 …… 誤り。
ギ酸は,ホルムアルデヒドの酸化により得られます。
アセトアルデヒドの酸化により得られるのは酢酸です。
□問題⑨
□解答 …… 誤り。
テレフタル酸が生成します。フタル酸は,p-キシレンを酸化することで得られます。
ベンゼン環に直接結合した炭化水素基は,過マンガン酸カリウムで酸化されるとカルボキシ基(-COOH)になります。
□問題⑩
□解答 …… 正しい。
カルボン酸とアルコールを反応させると,分子間で水1分子がとれてエステルが生成します。
この反応をエステル化といいます。
□問題⑪
□解答 …… 誤り。
サリチル酸メチルではなく,アセチルサリチル酸が生成します。
この反応は,フェノール性ヒドロキシ基(-OH)のHがアセチル基(CH3CO-)と置換する反応で,アセチル化と呼ばれます。
サリチル酸メチルは,サリチル酸にメタノールを加えると,エステル化が起こり生成します。
アセチルサリチル酸は,白色の結晶で,解熱・鎮痛剤として,サリチル酸メチルは,油状の液体で,消炎・鎮痛剤(筋肉などに貼る湿布)などとして用いられます。
□問題⑫
□解答 …… 誤り。
セッケンではなく,油脂を加水分解すると,高級脂肪酸とグリセリンが得られます。
□問題⑬
□解答 …… 正しい。
反応式は次のようになり,無水酢酸が生成します。
2CH3COOH → (CH3CO)2O + H2O
カルボン酸2分子から水1分子がとれた形の化合物を酸無水物といい,酢酸から水1分子がとれた化合物を無水酢酸といいます。
無水酢酸を水とともに加熱すると,加水分解し,酢酸の水溶液となります。
アルコールから分子間脱水でエーテルをつくる場合は,「濃硫酸+加熱」でつくれましたが,カルボン酸は比較的安定なので,「濃硫酸+加熱」だけでは脱水されず,
「十酸化四リンのような脱水剤+加熱」を用いて作ります。
これによって得られた無水酢酸は,反応性が高いので,エステルやアミドを合成(アセチル化)する際に用いられます。
□問題⑭
□解答 …… 誤り。
テレフタル酸ではなくて,フタル酸を加熱すると,酸無水物が生成します。
テレフタル酸は,ベンゼン環に結合した2つのカルボキシ基が反対側にあるので,加熱しても脱水せず,酸無水物を生じません。
□問題⑮
□解答 …… 正しい。
一般に,カルボン酸は,酸化されにくいため,還元性をもちませんが,ギ酸はアルデヒド基をもつため還元性をもち,銀鏡反応を示します。
ただし,ギ酸はフェーリング反応は示さないので注意してください。
理由は,ギ酸イオンが銅イオンと安定なキレート錯体を形成し,銅イオンが酸化銅(I)として沈澱するのを妨げるからだと考えられます。
分子中にカルボキシ基(-COOH)をもつ化合物をカルボン酸(分子式:CnH2nO2)といい,
多くのカルボン酸の名前は,最初に発見された動植物の名前からつけられた慣用名で呼ばれます。
反応は,特に
① 酸としての反応(中和反応,弱酸の遊離反応)
② 酸水物の生成反応
③ エステル化反応
の3つをおさえましょう。
★次の正誤を判定せよ。
■問題① 酢酸もステアリン酸も水によく溶ける。
■問題② カルボン酸の沸点は,同程度の分子量のアルカンより低い。
■問題③ マレイン酸は,フマル酸より融点が低い。
■問題④ ギ酸は,炭酸水より弱い酸性を示す。
■問題⑤ 安息香酸は,水にわずかしか溶けないが,酸性の水溶液にはよく溶ける。
■問題⑥ 乳酸には,光学異性体がある。
■問題⑦ ギ酸を濃硫酸で脱水すると,二酸化炭素が発生する。
■問題⑧ ギ酸は,アセトアルデヒドの酸化により得られる。
■問題⑨ p-キシレンを酸化すると,フタル酸が生成する。
■問題⑩ エタノールと酢酸の混合物に,濃硫酸を加えて加熱すると酢酸エチルが生成する。
■問題⑪ サリチル酸に無水酢酸を加えると,サリチル酸メチルが生成する。
■問題⑫ セッケンを加水分解すると,高級脂肪酸とグリセリンが得られる。
■問題⑬ 酢酸に十酸化四リン(五酸化二リン)を加えて熱すると,脱水し,無水酢酸が生成する。
■問題⑭ テレフタル酸を加熱すると,分子内のカルボキシル基2個から水1分子がとれて酸無水物が生じる。
■問題⑮ ギ酸にアンモニア性硝酸銀水溶液を加えて加熱すると,銀が析出する。
★解答
□問題①
□解答 …… 誤り。
酢酸は,水によく溶けますが,ステアリン酸C17H35COOHは,ほとんど水に溶けません。
カルボン酸は,カルボキシ基(-COOH)が極性の大きい親水基のため,Cの少ない低級カルボン酸は水に溶けます。
しかし,ステアリン酸は高級脂肪酸で,長い炭化水素基(C17H35)が疎水基のため,分子全体に占める親水基の影響が小さくなるので水に溶けにくくなります。
酢酸は,刺激臭のある無色の液体で,純粋なものは冬に凝固するので氷酢酸と呼ばれます。
□問題②
□解答 …… 誤り。
カルボン酸の沸点は,同程度の分子量のアルカンより高くなります。これは分子中に極性の大きいカルボキシ基(-COOH)をもち,分子どうしで水素結合するためです。
Point! 一般的な沸点の高さ(同程度の分子量)
カルボン酸>アルコール>アルデヒド,ケトン,エステル,アミン>エーテル>アルカン
□問題③
□解答 …… 誤り。
分子式がともにC4H4O4であるマレイン酸とフマル酸は,不飽和の2価のカルボン酸でシス形のマレイン酸とシス形のフマル酸は,幾何異性体の関係にあります。
融点は,フマル酸の方がはるかに高くなります。
理由は,マレイン酸は分子間だけで水素結合をするのに対し,フマル酸は,分子内でも水素結合もするので,その分,分子間の水素結合の数が減少するためです。
マレイン酸とフマル酸に関する問題は頻出なので,次の点もおさえてください。
水への溶解性は,マレイン酸は極性分子(非対称形)で水にはよく溶けますが,フマル酸(対称形)は無極性分子で,水にはあまり溶けません。
脱水反応では,マレイン酸は2個の-COOH基が互いに近くにあるため,加熱するだけで分子内脱水が起こり,無水マレイン酸になりますが,フマル酸は,-COOH基が反対側で離れているため加熱しても脱水されません。
水素の付加反応では,両方とも水素が付加するとコハク酸C2H4(COOH)2が生成します。
□問題④
□解答 …… 誤り。
カルボン酸はその名の通り,酸性の化合物で,酸性は炭酸H2CO3より強く,
塩酸HClや硫酸H2SO4よりは弱くなります。酸の強さは次のようになります。
Point! 酸の強さ
塩酸>硫酸>スルホン酸>カルボン酸>炭酸>フェノール類
ギ酸は,刺激臭のある無色の液体で,脂肪酸の中で最も酸性が強く有毒です。ギは蟻(アリ)と書き,アリから発見されたことからこの名がつきました。
□問題⑤
□解答 …… 誤り。
水素ではなく,二酸化炭素が発生します。
HCOOH + NaHCO3 → HCOONa + H2O + CO2
炭酸塩や炭酸水素塩の水溶液にカルボン酸を加えると,二酸化炭素が発生し溶解します。
これは,酸の強さは,ギ酸(カルボン酸)>炭酸なので,弱酸の塩(炭酸水素ナトリウム)に弱酸(炭酸)より強い酸(ギ酸)を加えることで,強い酸が塩(ギ酸ナトリウム)になり,弱酸(炭酸)が遊離するという反応が起こるためです。
Point! 弱酸の遊離反応
「弱酸の塩」+「強酸」→「強酸の塩」+「弱酸」
※強・弱は相対的な関係
□問題⑥
□解答 …… 正しい。
4種が異なる原子または原子団と結合している炭素原子を不斉炭素原子といい,不斉炭素原子をもてば,必ず光学異性体をもちます。乳酸は,不斉炭素原子で光学異性体が存在します。
□問題⑦
□解答 …… 誤り。
二酸化炭素ではなく,一酸化炭素が生成します。
HCOOH → CO + H2O
濃硫酸は脱水作用があり,有機化合物中からHとOを2:1の割合で奪います。
□問題⑧
□解答 …… 誤り。
ギ酸は,ホルムアルデヒドの酸化により得られます。
アセトアルデヒドの酸化により得られるのは酢酸です。
□問題⑨
□解答 …… 誤り。
テレフタル酸が生成します。フタル酸は,p-キシレンを酸化することで得られます。
ベンゼン環に直接結合した炭化水素基は,過マンガン酸カリウムで酸化されるとカルボキシ基(-COOH)になります。
□問題⑩
□解答 …… 正しい。
カルボン酸とアルコールを反応させると,分子間で水1分子がとれてエステルが生成します。
この反応をエステル化といいます。
□問題⑪
□解答 …… 誤り。
サリチル酸メチルではなく,アセチルサリチル酸が生成します。
この反応は,フェノール性ヒドロキシ基(-OH)のHがアセチル基(CH3CO-)と置換する反応で,アセチル化と呼ばれます。
サリチル酸メチルは,サリチル酸にメタノールを加えると,エステル化が起こり生成します。
アセチルサリチル酸は,白色の結晶で,解熱・鎮痛剤として,サリチル酸メチルは,油状の液体で,消炎・鎮痛剤(筋肉などに貼る湿布)などとして用いられます。
□問題⑫
□解答 …… 誤り。
セッケンではなく,油脂を加水分解すると,高級脂肪酸とグリセリンが得られます。
□問題⑬
□解答 …… 正しい。
反応式は次のようになり,無水酢酸が生成します。
2CH3COOH → (CH3CO)2O + H2O
カルボン酸2分子から水1分子がとれた形の化合物を酸無水物といい,酢酸から水1分子がとれた化合物を無水酢酸といいます。
無水酢酸を水とともに加熱すると,加水分解し,酢酸の水溶液となります。
アルコールから分子間脱水でエーテルをつくる場合は,「濃硫酸+加熱」でつくれましたが,カルボン酸は比較的安定なので,「濃硫酸+加熱」だけでは脱水されず,
「十酸化四リンのような脱水剤+加熱」を用いて作ります。
これによって得られた無水酢酸は,反応性が高いので,エステルやアミドを合成(アセチル化)する際に用いられます。
□問題⑭
□解答 …… 誤り。
テレフタル酸ではなくて,フタル酸を加熱すると,酸無水物が生成します。
テレフタル酸は,ベンゼン環に結合した2つのカルボキシ基が反対側にあるので,加熱しても脱水せず,酸無水物を生じません。
□問題⑮
□解答 …… 正しい。
一般に,カルボン酸は,酸化されにくいため,還元性をもちませんが,ギ酸はアルデヒド基をもつため還元性をもち,銀鏡反応を示します。
ただし,ギ酸はフェーリング反応は示さないので注意してください。
理由は,ギ酸イオンが銅イオンと安定なキレート錯体を形成し,銅イオンが酸化銅(I)として沈澱するのを妨げるからだと考えられます。